生徒会長なら生徒の言うこと何でも聞いてくれるよね?

コロンド

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第二部

ep11. スペシャルゲスト

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「それで……校則を破る不良生徒ってのはどこにいるんですか? エリー先輩の事ですか?」
「む……ひどいなぁ。確かにあたしは優良生徒じゃないけれど、あたしのことではないよ~」

 トントンとエリー先輩は空き教室の扉をつつく。

「声、聞こえたんでしょ? いるんだよ~ここに、不良生徒がさ~」
「不良、生徒……」

 それが本当だとして、こんな空き教室で何をしているんだろう。
 もしかしてタバコとか、そういう……?
 そんなガラの悪い子に絡まれたら、私ボコボコにされる未来しか見えないんだけど……

「あ~そういう不良とはちょっと違うかも。とにかく、早く中に入りなよ」

 何も言ってないのに、エリー先輩は勝手に私の心を読んで返事をする。
 むしろちょっと違う不良って何!?
 逆に怖くなってきたんだけど。

「そ、そんないきなり言われても……っ! あ、だったらエリー先輩も一緒に行きましょ、ね? エリー先輩も生徒会の一員じゃないですかっ!」
「え、やだよ」

 当然でしょ? と言わんばかりに即答するエリー先輩。
 なんでこの人生徒会メンバーに選ばれたんだろう。

「それに生徒会の引き継ぎ期間ってのはさ~、ただ業務を引き継ぐだけじゃなくて、生徒会長としての自主性、心の持ちようを引き継ぐ期間ってことでもあるんじゃない? いつまでも私たちに頼ってちゃダメでしょ?」

 急にそれらしいこと言ってきた!
 エリー先輩に頼ったことなんて一度もないけど、言ってることは確かなので反論もできない。

「うぐぐ……」
「ほ~ら、いつまでも言い訳探してないのっ! いってらっしゃい」
「ああ、ちょっと!」

 エリー先輩は空き教室の扉を開くなり、私の腕を引っ張って無理やり部屋の中へと押し込んだ。
 暗い教室、まだトラウマなのに……

 確かに室内から人の気配は感じるけど、私の見える範囲には誰もいない。
 どこかに隠れているんだろうか?

「ね、いいんちょ」

 囁くようなエリー先輩の声。
 教室の入り口の方を振り向くと、半開きの扉からエリー先輩がこちらを見つめていた。

「『人の身の上に立つもの、常に献身であれ』」
「……ッ!?」

 その言葉を聞いた瞬間、私の体がゾクリと震える。
 いきなり冷蔵庫の中にでも入れられたかのような、そんな感覚。

「生徒会長は生徒のお願い、何でも聞いてあげなきゃダメだよ? じゃあねっ」

 そう言うと、エリー先輩はゆっくりと部屋の扉を閉めた。




 いや……いやいやいや。
 別にそんな時代遅れのルールに従う必要なんてないから。
 前はなんか色々無理やりされちゃったけど、私はそんなルールに従ったりしないからねっ!




 …………。





 さて、結構な音を立てたと思うんだけど。
 この部屋にいる人、流石に私が部屋に入ってきたこと気づいているんじゃないかな?
 そう思って私は室内を見渡す。

 暗い部屋の中で、明らかに怪しい場所が一箇所あった。
 部屋の隅にあるテントのような空間。
 机を並べてバリケードにして、上からカーテンの布をかけたような感じだ。
 そしてそのテントのような空間から、明かりが漏れている。

「……どう……かな……? んしょ……っと……」

 明かりだけでなく、女性の声も漏れて聞こえた。
 私が部屋の中に入ってきたこと、まだ気づいていないんだろうか?

 本当は無視してこの部屋から今すぐ出たいけれど、生徒会長という肩書に私の心は左右されてしまう。

「あ、あのー……誰かいますよね……?」


 …………。


 返事はない。
 ただテントのような空間から布の擦れるような音が聞こえるだけ。


 …………。


 ………………。



「いますよねえッ!」

 勢いよくカーテンを掴んでめくり上げた。
 そして私は、自分の瞳に映ったその光景を見て戸惑う。

「……え……あ……っ?」

 女の子がいた。
 いや、誰かがいることは自体は最初から予測できていた。
 予測できなかったのは彼女の姿。
 彼女はぺたんと座り込んだ姿勢のまま、制服のボタンを外しているところだった。
 やけにフリルのついた黒いブラが制服の合間から見えていた。

「あ……っ、ごめっ!」

 咄嗟にそこから目を背け、彼女の顔の方へ視線を移すと今度は困惑した彼女の瞳に視線が捕まる。
 見覚えのある顔だ。
 確か学年は一つ下で、体系はかなり小柄。
 背の順で一番前の子だから、よく覚えている。
 小動物的なこじんまりとした顔と、見てるだけで何となく触りたくなるショートボブ。
 似たような顔のアイドルをテレビで見た気がする。

 彼女の耳にはイヤホンがついていて――――ああ、だから私が部屋の中に入ってきた音に気づかなかったんだろう。
 そしてもう一つ、彼女の頭に気になるアタッチメントがついていた。
 頭の上からぴょんと飛び出た二つの耳。
 猫耳……何で猫耳……?

「か、かいちょ……っ!? あ……あわ…………あわわッ!?」

 目の前の彼女は顔を真っ赤にして、めちゃくちゃに狼狽しだした。
 とはいえ不意を襲ったのはこちらな訳だし、当然と言えば当然の反応かもしれない。
 こういう時は会長である私の方が、落ち着いて対処しなくては。

「お、落ち着いて。大丈夫だから……ね、まゆりさん……だよね?」
「え……会長……私の名前……知ってる……っスか?」
「うん、あなたがお友達と話しているときに、そう呼ばれているの見たことあるから」

 不意に彼女の名前が記憶の奥底から浮かび上がってきたので口にしてみたけれど、どうやら当たりだったらしい。
 この子は体系的にも目立つから、廊下ですれ違っただけでも妙に記憶に残るんだよね。

「確か苗字は――――」
「ああーーーーッ!! だめッ!! アーーアーーアァーーーーッ!!」

 まゆりちゃんはキンキンとした声で急に叫び出し、咄嗟に耳をふさぐ。
 私が何か地雷を踏んだんだろうか?

「か、かいちょッ! 本名はノー! 本名はだめぇ!」
「ほん……みょう……?」

 なぜ?
 状況が掴めない私は困惑する。
 そしてまゆりちゃんの説明を聞くより先に、このテント的空間の中にあったあるものに視線が行く。
 それは固定台に固定されたスマホ。
 スマホの液晶にはカメラの映像が写っていた。

 まさか学校でこっそり自撮りでもしてた?
 可愛い奴め…………なんて思ったけど、何かおかしい。
 画面の中に、何か文字が…………これって、コメント……?

『こいつ本当に学校で配信してたんかwww』
『会長バレしてて草』
『どうせヤラセだろ???』
『まゆりんの本名まゆりってまんまじゃんwwww』 

「……え……これって……ッ!?」

 頬を冷汗が伝う。
 私は一瞬にして状況を理解した。

「まゆりさん、これッ――」
「ごめんねかいちょッ!」
「え? ……あうッ!?」

 気づくと私の両手は、まゆりちゃんに掴まれていた。
 そのまま体を引っ張られ、何をされているのか理解が追いつかない。
 気づけば私は、まゆりちゃんに後ろから抱きつかれるような形で拘束されていた。
 ふと前を見ると、スマホに私の体が映っている。

「……気をつけてくださいね、かいちょ。ちょっとでも姿勢崩すと顔バレッスよ」

 私にだけ聞こえるような声で、まゆりちゃんは囁く。

「ひっ……やめ、こんな……っ!? 早く、止めて……っ!」
「……確かにこれ完全に放送事故ッスけど、でもこれもしかしたらバズるチャンスなんじゃないかなって思うんスよ」
「な、何をッ!?」

 心臓が痛いほどに鼓動する。
 顔バレなんて知ったことじゃない。
 私は必死に抵抗する。



「……だから……お願いします、会長。一生のお願いです。抵抗しないで」
「……あっ」



『人の身の上に立つもの、常に献身であれ』

『生徒会長は生徒のお願い何でも聞いてあげなきゃダメだよ?』



 思い出したくもない言葉が、頭の中で反芻する。
 そんな言葉に従う必要なんてない。
 従いたくもないのに。
 
 何で……何で体が動かなくなるのっ!?

「クスッ」

 嘲笑混じりの吐息が耳に吹きかかる。

 ガチャン!

「え?」

 両手首から感じる冷たくて、固い感触。
 一度腕を上げてみようとするが、ガシャガシャと音が鳴るだけで上手くいかない。
 後ろ手に回した両手の自由が奪われる。
 視界に映らなくても何をされたのかすぐさま理解できた。

「こ、これ……てじょ――」
「さ、さーてお待たせしやしたー! がっこーのまゆりんチャンネル! 今日は満を辞してのスペシャルゲストのお呼びだぜぃ!」

 私の声を打ち消すように、まゆりちゃんは作った声でスマホに話しかける。
 そして私の体をぎゅっと抱き寄せる。

「んっ」
「じゃ、ジャーン! うちの学校の生徒会長呼んじゃいましたー! ぱちぱちぱち~。この間就任したばかりの、なりたてピチピチ美人生徒会長スよ! 顔バレはまずいから体しか見せてあげないけどね、あーもったいない。 さ~て、この生徒会長、これからどうなっちゃうんスかね~」

 まゆりちゃんは私を抱きしめがなら、私のお腹のあたりを指先でそっと撫でていく。
 その指先に私の体が反応してビクンと動くと、スマホの画面の私も少し遅れて動く。

『脱がせ! 脱がせ!』
『あれ、まゆりんの動画なのにちゃんとおっぱいあるじゃんw』
『会長の体つきエロすぎ、興奮してきた』
『このあとめちゃくちゃにされちゃうんだろうな』

 画面には心無いコメントが流れていく。

「ほんと、どうなっちゃうんスかね~?」

 まゆりちゃんの指が私の首筋や頬を撫でる。

「い、いやぁ……」

 私は何もできずに、体を震わせることしかできなかった。
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