退魔の少女達

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聖母の淫魔 7

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「ねぇサクラこっちを見て」

カナは後ろから抱きついていた態勢を変え、サクラと正面から抱きあう形になる。

「……は、はい」

互いが正面を向き合い、視線が重なる。
顔を真っ赤にして快感に耐える後輩の姿を見ていると、さっきの言葉のせいもあってか心が疼いてしまう。
そしてそんな思いを抱いてしまう自分自身に、もっと真面目になれと首を振って心の乱れを拭い捨てる。

「サクラを助けるためのもう一つの方法を思いついたんだ」
「!? それは……どんな……?」
「サクラの回復力を高めるために、今からサクラに私の精気を与えようと思う。すぐには回復できなくても、普通に待つよりいくらか早く回復できると思う」
「……なるほど……それでその方法は……?」
「方法は……その……」

カナは視線をそらし、だんだんと声が小さくなる。

「淫魔が精気を吸うときの方法と同じなんだ……」
「淫魔とおなじ……? ……ッ!?」

意味を理解したのか、サクラの目が大きく見開く。
すなわち、口づけによる精気の譲渡。
淫魔が精気を吸い取るのとは逆に、カナがサクラへ口づけを通して精気を送り込むという方法だ。

「ごめん、これが一番効率の良い方法なんだ。もしもそれが嫌ならーー」
「大丈夫、です……お願いします」

カナの言葉を遮り、サクラは覚悟を決める。
息遣いを荒くしながらも、真っ直ぐなサクラの視線にカナは射止められる。

「あ、ああ……うん」

そっけない返事を返してしまう。
頬を赤くしながらも、真っ直ぐに見つめる後輩の顔はカナにとって反則的だった。
むしろ心の整理が付いていないのはカナの方だった。
ブワッと全身から汗が出るのを感じ、カナ自身も自分の体が熱くなっているのを感じた。
いつもはサクラの前で先輩面をしているが、自分からキスをした経験など一度もない。
口と口とを重ねて精気の通り道を作ることが、精気を分け与える上で最も効率のいい方法だと知識として知っているだけだ。

(何をしている……! 私は、サクラを助けたいだけなんだッ!)

よこしまな気持ちを拭い捨て、もう一度サクラと向き直る。
今はただ、顔の火照りがサクラに気づかれていないか、ということばかりを気にしてしまう。

「……じゃあ、いくよ」
「……はい」

そう言ってから二人は数秒ほど見つめあい、少しずつ顔を近づける。
そして、唇を重ねる。

「んっ……」
「んん……ッ!」

全身が敏感になっているサクラは少し唇が触れただけで、体がビクンと震わす。
それでも唇を離さないように、必死に耐える。
体の中に暖かい何かが集まっていくのを感じる。
優しく羽毛で包まれていくような心が満たされる感覚。
精気を奪われるときの、暴力的な快楽と同時に力が失われていくあの感覚とは真逆だ。

「ふぁむ……んんっ…………せんぷぁ、もっと……んむっ」
「んんッ!?」

もっともっととせがむように、サクラの舌がカナの口内に侵入する。
急な出来事にカナが体を震わせる。
サクラは本能に任せて、カナの口内を届く範囲で様々なところを舐め回す。
サクラの方からこうも責めてくるなどカナは完全に予想外で、背筋が反るらせ、今にも押し倒されそうな体をなんとか支える。
サクラもサクラで、舌を動かすたびに感じる快感は全て体にフィードバックされ、腰や背筋はビクビクと震え止まらない。
そしてその震えは、唇で触れあっている状態のカナにも伝わる。

(この子、自分でキスして、自分で気持ちよくなってる……)
「ふむっ!? んんあぁんッ!!」

気持ちよくなっているサクラに気を取られているうちに、サクラの舌がカナの舌の下側を舐めとり、カナの口からも甘い声が漏れてしまう。
さらにより強くキスをせがむサクラは、両手をカナに伸ばす。
そして無意識に伸ばされた手のうち、片方がカナの胸を掴む。

「んんーーッ!」

不意の快楽に大きな声を上げてしまう。
きっとサクラは何の意識もしていないのだろうが、カナは後輩に胸を揉まれ感じてしまうという自分の姿が耐えらない。
そしてその瞬間、カナの中でスイッチが入った。

「んんっ、この……なま、いき……んむッ!」
「ん……ッ!? ンンッーーーー!」

カナは押されていた体を押し返し、さらにサクラの両頬を両手で抑え、サクラの口内へと舌を伸ばす。
敏感になっているサクラの体のことなど知ったことではない。
サクラは口内に響く甘い痺れに酔いしれ、もはや舌を動かすこともできず、カナにされるがままに責められる。

「んっ、ぁむッ…………んッ……んんっ」
「ーーッ! んぁンンッ! んぅうンッ!!」

吐息のような声を漏らすカナに比べて、サクラの声は悲鳴に近い。
だがサクラにもう嫌がる素振りはない。
快楽に身を震わせながらも、それを享受している。
二人は当初の目的などとうに忘れ、ただただ互いに互いを求めあう。
サクラも負けじと舌を絡めるが、その度に自分の嬌声が大きくなるだけだ。

「ンッ!? んぐぅッ!! んぁあッ! んやぁッ、あッ!」

サクラの声に焦りの声が混じり始める。
それまで唇を重ねることを受け入れていたサクラが急に、体を離そうとしてくる。
だがカナはそれを許さなかった。
サクラの後頭部と腰に手をまわし、逃れられないように押さえつける。

「やめッ、んッ! ンァッ……はなしッ、んむぅッ!」
「ぁんッ…………んむっ、だめ、はなさない…………んっ」

サクラが体を離そうとするたびに、カナはサクラを強く押さえつける。
何度も体が強く密着し、互いの胸が柔らかく触れあう。
互いに揉め合いをしているうちに、二人の足が交差するように絡み合う。
そしてサクラの秘所がカナの太ももと擦るように触れたその瞬間、サクラの目が大きく見開く。

「ーーッ!!? ンーーッ! ンンーーーーーーーーッ!!」

それが決定打となった。
それまでとは全く違う強烈な震えがサクラを襲う。
そしてカナは、それを体越しに感じ取っていた。
同時に太もものあたりから、温かくも湿り気のある感覚が伝わってくる。

サクラは自分の中にあるものを全て出し切ると、急にガクンと崩れた。
もはや自分を支える力すらなくなり、全体重をカナに預ける。
サクラは目をトロンとさせて、ぼんやりとした視界でカナを見つめる。
そしてその視界はどんどんモザイクがかかるように霞みがかってゆき、いつしか完全に意識を失ってしまった。

スースーと息を立てるサクラをカナは優しく抱きしめる。
途中から目的を見失いかけていたが、サクラに与えた精気の効果が出たのか、サクラの体に触れても過剰な反応は見られない。
「お疲れ様、そういえばまだ褒めてなかったね。上級淫魔、一人で退治できたんだね、おめでとう」
サクラの前髪を撫でながら、カナは微笑む。
カナは疲れ果てて眠る後輩の顔をじっと見つめ、それをいつまでも見つめ続けていたいと思った。

「ーーむにゃむにゃ。んー、あれ? ここどこ? 誰かいますかー?」
「ーーぃいッ!?」

カーテンの向こうから聞こえる女性の声に、カナの体がビクンと跳ねる。
カナは奥のベッドで他人が寝ているなど、今の今まで気づかず狼狽える。
内側からカーテンを開けようとする手が見えたその瞬間、カナは退魔師の超反応と研ぎ澄まされた身体能力で、1秒と経たずにサクラとサクラの衣服を回収し、その場を後にした。
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