発情紋章を刻まれた真面目な召喚士ですが、契約精霊たちに甘やかされて困ってます。

さわらにたの

文字の大きさ
31 / 159
第4章

しおりを挟む
 朝靄が晴れゆく街路を、シェラはどこか落ち着かない様子で歩き――そして立ち止まる。
 目的地だ。
 
 冒険者たちの拠点たるギルド本部は、この国の中心に堂々と構えている。でん、と立つその通称「魔城」の前に立ち、シェラは胸を押さえていた。
 このギルド大国・エリーザの名前の元になっている伝説の冒険者・エリザベス。
 彼女の部屋・ギルドマスターの執務室に直々に呼ばれることなど、滅多にないこと。

 ――何か、しでかしちゃったかな……?

 まず思い当たるのは、そこだった。

(精霊の誰かが、どこかで何かやらかした、とか? うーんこの気分、完全に”お母さん”だよ……)

 胃がキリキリと痛む。

 地のテラリア、火のイグニス、水のアクアリアス、風のウィントス。
 シェラと契約しているのは、この四大精霊だ。
 彼らの素行がそんなに悪いとは、思わない……いや、思いたい、けど。

(ウィンちゃんが、ナンパしすぎたり? うーん確かにこの間、酒場でサラに色々言われてたよね……。ウィンちゃん、自分の顔がいいこと、しっかりわかってるもんなぁ……。
 アクアさんも、ああ見えて怒ると怖いし、誰かにからまれたりとかしたら「正当防衛」っていってやらかしそうではある……。
 イグ兄は……うーん、一応品行方正だし大丈夫だと思うけど……戦闘で熱くなりすぎてなんか壊したとか……??? 
 テラ様は……「出てきてない」し、さすがに大丈夫だと思う、けど……けど……何やらかすかわかんないとこあるし。
 あああーーー! 考え出すとどれもありそうで怖いよ!!)

 胸の奥で不安がくすぶる。
 シェラは、はぁ、とため息をついた。

 依頼の内容も告げられず、ただ「至急」とだけ伝えられた手紙。
 戦闘依頼ではないし、急に呼び出すのも気が引けて精霊たちは誰も同行もしていない。
 
 でもやっぱり誰かよべばよかったかも、とシェラは思う。
 一人きりのギルド訪問は、やはり少し心細かった。





「シェラ。あなた恋人を作りなさい」

 開口一番。
 思わぬ言葉をゆったりとギルドマスターの椅子に腰かけたエリザベスに告げられ、シェラは固まった。

 真っ赤な髪に、同じ色の真っ赤な口紅。妖艶な身体のラインとくっきりとした谷間が覗くピッタリした、深紅のドレス。
 ギルドマスター・エリザベス。人間の寿命を優に超えてなお若々しく、美しい容姿を保つ彼女はここ、ギルド王国エリーザの〈建国の魔女〉と呼ばれる存在だ。
 気品と色気、そして何より強大な魔力を兼ね備えた女傑で、シェラをはじめ、この国のギルドに属する冒険者にとっては尊敬と畏れの対象でもある。
 つい背筋を伸ばしてしまうのは、彼女の纏う空気がそうさせるのだろう。

「こ、恋人、ですか?」
「発情紋章、受けたんでしょう?」
「!!!」

 思わぬ言葉に、重ねて身体がぷるぷるしてしまう。
 エリザベスのあっけらかんとした物言いで気恥ずかしくはないけれど、でもそれでも、恋人???とその言葉に混乱してしまう。
 そもそも、わたし、お友達すらほとんどいないのに??? 恋人??? 色々とすっとばしすぎじゃあないでしょうか!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

ストーカーから逃げ切ったつもりが、今度はヤンデレ騎士団に追われています。

由汰のらん
恋愛
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。 さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった! しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って? いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

残念女子高生、実は伝説の白猫族でした。

具なっしー
恋愛
高校2年生!葉山空が一妻多夫制の男女比が20:1の世界に召喚される話。そしてなんやかんやあって自分が伝説の存在だったことが判明して…て!そんなことしるかぁ!残念女子高生がイケメンに甘やかされながらマイペースにだらだら生きてついでに世界を救っちゃう話。シリアス嫌いです。 ※表紙はAI画像です

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

処理中です...