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第4章
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朝靄が晴れゆく街路を、シェラはどこか落ち着かない様子で歩き――そして立ち止まる。
目的地だ。
冒険者たちの拠点たるギルド本部は、この国の中心に堂々と構えている。でん、と立つその通称「魔城」の前に立ち、シェラは胸を押さえていた。
このギルド大国・エリーザの名前の元になっている伝説の冒険者・エリザベス。
彼女の部屋・ギルドマスターの執務室に直々に呼ばれることなど、滅多にないこと。
――何か、しでかしちゃったかな……?
まず思い当たるのは、そこだった。
(精霊の誰かが、どこかで何かやらかした、とか? うーんこの気分、完全に”お母さん”だよ……)
胃がキリキリと痛む。
地のテラリア、火のイグニス、水のアクアリアス、風のウィントス。
シェラと契約しているのは、この四大精霊だ。
彼らの素行がそんなに悪いとは、思わない……いや、思いたい、けど。
(ウィンちゃんが、ナンパしすぎたり? うーん確かにこの間、酒場でサラに色々言われてたよね……。ウィンちゃん、自分の顔がいいこと、しっかりわかってるもんなぁ……。
アクアさんも、ああ見えて怒ると怖いし、誰かにからまれたりとかしたら「正当防衛」っていってやらかしそうではある……。
イグ兄は……うーん、一応品行方正だし大丈夫だと思うけど……戦闘で熱くなりすぎてなんか壊したとか……???
テラ様は……「出てきてない」し、さすがに大丈夫だと思う、けど……けど……何やらかすかわかんないとこあるし。
あああーーー! 考え出すとどれもありそうで怖いよ!!)
胸の奥で不安がくすぶる。
シェラは、はぁ、とため息をついた。
依頼の内容も告げられず、ただ「至急」とだけ伝えられた手紙。
戦闘依頼ではないし、急に呼び出すのも気が引けて精霊たちは誰も同行もしていない。
でもやっぱり誰かよべばよかったかも、とシェラは思う。
一人きりのギルド訪問は、やはり少し心細かった。
■
「シェラ。あなた恋人を作りなさい」
開口一番。
思わぬ言葉をゆったりとギルドマスターの椅子に腰かけたエリザベスに告げられ、シェラは固まった。
真っ赤な髪に、同じ色の真っ赤な口紅。妖艶な身体のラインとくっきりとした谷間が覗くピッタリした、深紅のドレス。
ギルドマスター・エリザベス。人間の寿命を優に超えてなお若々しく、美しい容姿を保つ彼女はここ、ギルド王国エリーザの〈建国の魔女〉と呼ばれる存在だ。
気品と色気、そして何より強大な魔力を兼ね備えた女傑で、シェラをはじめ、この国のギルドに属する冒険者にとっては尊敬と畏れの対象でもある。
つい背筋を伸ばしてしまうのは、彼女の纏う空気がそうさせるのだろう。
「こ、恋人、ですか?」
「発情紋章、受けたんでしょう?」
「!!!」
思わぬ言葉に、重ねて身体がぷるぷるしてしまう。
エリザベスのあっけらかんとした物言いで気恥ずかしくはないけれど、でもそれでも、恋人???とその言葉に混乱してしまう。
そもそも、わたし、お友達すらほとんどいないのに??? 恋人??? 色々とすっとばしすぎじゃあないでしょうか!
目的地だ。
冒険者たちの拠点たるギルド本部は、この国の中心に堂々と構えている。でん、と立つその通称「魔城」の前に立ち、シェラは胸を押さえていた。
このギルド大国・エリーザの名前の元になっている伝説の冒険者・エリザベス。
彼女の部屋・ギルドマスターの執務室に直々に呼ばれることなど、滅多にないこと。
――何か、しでかしちゃったかな……?
まず思い当たるのは、そこだった。
(精霊の誰かが、どこかで何かやらかした、とか? うーんこの気分、完全に”お母さん”だよ……)
胃がキリキリと痛む。
地のテラリア、火のイグニス、水のアクアリアス、風のウィントス。
シェラと契約しているのは、この四大精霊だ。
彼らの素行がそんなに悪いとは、思わない……いや、思いたい、けど。
(ウィンちゃんが、ナンパしすぎたり? うーん確かにこの間、酒場でサラに色々言われてたよね……。ウィンちゃん、自分の顔がいいこと、しっかりわかってるもんなぁ……。
アクアさんも、ああ見えて怒ると怖いし、誰かにからまれたりとかしたら「正当防衛」っていってやらかしそうではある……。
イグ兄は……うーん、一応品行方正だし大丈夫だと思うけど……戦闘で熱くなりすぎてなんか壊したとか……???
テラ様は……「出てきてない」し、さすがに大丈夫だと思う、けど……けど……何やらかすかわかんないとこあるし。
あああーーー! 考え出すとどれもありそうで怖いよ!!)
胸の奥で不安がくすぶる。
シェラは、はぁ、とため息をついた。
依頼の内容も告げられず、ただ「至急」とだけ伝えられた手紙。
戦闘依頼ではないし、急に呼び出すのも気が引けて精霊たちは誰も同行もしていない。
でもやっぱり誰かよべばよかったかも、とシェラは思う。
一人きりのギルド訪問は、やはり少し心細かった。
■
「シェラ。あなた恋人を作りなさい」
開口一番。
思わぬ言葉をゆったりとギルドマスターの椅子に腰かけたエリザベスに告げられ、シェラは固まった。
真っ赤な髪に、同じ色の真っ赤な口紅。妖艶な身体のラインとくっきりとした谷間が覗くピッタリした、深紅のドレス。
ギルドマスター・エリザベス。人間の寿命を優に超えてなお若々しく、美しい容姿を保つ彼女はここ、ギルド王国エリーザの〈建国の魔女〉と呼ばれる存在だ。
気品と色気、そして何より強大な魔力を兼ね備えた女傑で、シェラをはじめ、この国のギルドに属する冒険者にとっては尊敬と畏れの対象でもある。
つい背筋を伸ばしてしまうのは、彼女の纏う空気がそうさせるのだろう。
「こ、恋人、ですか?」
「発情紋章、受けたんでしょう?」
「!!!」
思わぬ言葉に、重ねて身体がぷるぷるしてしまう。
エリザベスのあっけらかんとした物言いで気恥ずかしくはないけれど、でもそれでも、恋人???とその言葉に混乱してしまう。
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