【後日談有り】わたしを孕ませてください! ー白の令嬢は、黒の当主の掌で愛に堕ちるー

さわらにたの

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「うーん、わかりやすく言うとね、キミたちを試したんだ」

 ヴィンスフェルトの、どこか朗らかですらあるその声音にシアの肩の力が抜ける。
 膝がわずかに揺らぎそうになるけれど、こらえた。
 うろたえを隠せないシアとエルナドの様子に、後方に控えていた黒騎士と白いフード魔術師がため息混じりに首を振る。

「……またお試しですか、陛下」
「人心が離れますよ。もう離れてるかもしれませんが」
「お試しというほど軽いものでもないさ。心の確認、というやつだよ」

 そう言って部下に笑ったあと表情を切り替えると、ヴィンスフェルトは真面目な顔でシアとエルナドを見つめた。

「でも実際、愛を確かめるには、これしか方法がなかったからね。人の心なんて、実に曖昧で適当だ。それに、追い詰められないと本当の心だってわからない……。まぁ実際、なかなか子供の報告があがってこなかったからね。エルナドくんまじめだし、シアちゃん大事にしてるんだろうなぁ、でも煮詰まってるのかなぁ、さっさと抱いちまえ、って思ってさぁ」
「微細なご配慮に感謝します」
「陛下、下世話がすぎますよ」

 全く感謝していなさそうなエルナドの冷ややかな声と、黒騎士の呆れた声が重なる。
 ふたりの言葉に、国王はおどけたように眉根を寄せて肩をすくめた。

「良いじゃないか、結果は上々。僕は、国民に幸せになって欲しいだけなんだよ」

 ヴィンスフェルトはそう言って静かに立ち上がった。
 気さくな言動と軽薄な態度が失せ、その動作だけで王としての威厳が空気に滲み渡る。
 静まり返った謁見の間に、ただ王の足音だけが響いた。
 玉座から降りたヴィンスフェルトは、シアとエルナドの前で立ち止まる。

「試すようなことして、ごめんね二人とも」

 虹彩の瞳が柔らかくシアとエルナドを射抜いた。
 冷たいわけではない。だが、すべてを見透かすようなその光。

「白と黒の現状を越えるには、強い証明が必要だったんだ。分かりやすく、誰もが納得できるような“奇跡”のような証明が。その最たるものが、“愛”だ」

 愛、と復唱するシアに、王は一度だけ悠然と頷く。

「身分や過去、流れた血を越えて、相手を選ぶという意思。それは、最も強くて、最も人の心に訴えるものだと僕は思っている。だから君たちの存在を、”王命で結婚した白と黒のふたり”から”自らの意志で、結婚することを決めた愛し合う白と黒のふたり”にしたかったんだよね」
「全て、陛下の手のひらの上、というわけですか」


 シアの隣で低いエルナドの声が落ちた。苦々しげなその口調、漆黒の瞳が鋭く王を見据えている。だがヴィンスフェルトは肩をすくめて、悪びれもせず笑っていった。


「怒らないでよエルナドくん。君たちの関係は、この国の先と君たち自身をいい方向に変えていく」

 エルナドは小さく息をつき、そしてシアを見下ろした。
 その表情がふと緩む。柔らかな笑み、その笑顔に、シアの胸はきゅうと熱くなった。
 握り合ったままの彼の手は温かく、大きく、強い。けれど、かすかな震えが指先に伝わっていた。
 
 シアは、そっと彼の手を握り返す。
 もう、迷いはない。
 この手を絶対に離さないと、心が強く叫んでいた。

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