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しおりを挟むニコラスによると、最近この男のせいか街の治安が悪化していて、有志たちと街を見回っていたのだという。酒場に来なかったのはそのせいなのね、と納得する。
その有志の男たちによって道向こうで崩れ落ちている男が囲まれて引っ立てられていき――路地裏で、ヴィオレッタとニコラスだけが残った。
「……ありがとうございます、ニコ様」
久しぶりで、ちょっとだけ顔を合わせずらい。最後の別れが、あの少し強引に身体を重ねた日だったから。まだ少し震える身体は、変わらずニコラスに支えられていた。
「ううん、いいんだよ、……遅れてごめん、あぁ怖かったね、冷えちゃってるよ。……もう、大丈夫だから」
そっとヴィオレッタの頬に、ニコラスの手が触れる。あたたかい。思わずそうつぶやけば、震える身体ごと包み込むように引き寄せられた。
強い力だった。
「怪我はない? よく見せて」
「ニコ様、大丈夫ですから……、……っ、」
男に掴まれた場所か、手首にかすかに痛みが走った。顔をしかめるとニコラスの表情が心配に歪む。
「! 見せて、ヴィオちゃん」
「いえ、大丈夫です……ちょっと違和感があるくらいで」
「だめだよ、怪我してるかもしれな……い……、……。……ヴィオちゃん、これ、は?」
手首の袖が捲り上げられた、その瞬間、ニコラスの顔色が変わった。
怒っている……ううん、違うわ、とヴィオレッタはその美しい顔を見つめる。
見たことのない、どこか凄みのある顔だ。
ニコラスの紅い瞳は、ジャンシャールから送られた腕輪を食い入るように見つめていた。
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