精霊騎士様は、ずっと見ていたらしいです。

さわらにたの

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「!」

 左手首の痣――ううん「腕輪」が、熱い。ひとりエッチで手首を酷使しすぎたかしら?
 なんて最低なことが浮かんできたけど、違うみたい――

「エネリア、泣かないでくれ」
「??」

 一瞬、男の声が聞こえて、わたしは顔を上げた。
 ダメだ、さみしすぎて幻聴が聞こえてきたみたい。
 男の声だった、しかもかなりいい声。
 妄想彼氏? と思いつつ、とりあえず目を開いて、きょろきょろと目を動かす。

「だ、誰……?」
「ここだ、エネリア」
「??」

 枕元から、さっきと同じ男の声がして、わたしは首をめぐらせて――固まった。
 気づかなかった。
 ものっすごい美形が枕元に立っている。
 そしてその美形は、頬を赤くして、ものっすごく興奮した顔で、わたしを見下ろしていた。
 人間って本当にびっくりすると、声が出なくなるのね?
 わたしはただ、口と目をぽかんと開けて目の前の美形をじっと見つめた。

「エネリア」

 美形さんは、髪はつやつやの銀髪で後ろで一つにしばってる。肩過ぎくらいなのかな? 
 瞳は青。何回も言うけど、ものっすごい美形で頬が白い。
 でも病弱っていうよりも、石膏像みたいなすべらかな肌。格好は鎧を外した騎士様の制服みたいなかっちりした軍服みたいなものを着てる。青ベースで白いラインが入っていて、ものすごく格好いい。でも腰に剣はないし、なによりその――ええと。

 何と申し上げたらいいんでしょうか? 
 彼の立派な”股間の剣”が、スラックス越しでもはっきりわかるくらい、ものっすごくしっかりと聳えていて、わたしは震えた。


 ものっすごい美形でも、ダメ!!!
 おったててる、変態ですわ――――!!!

「きゃぁあっ、んぐっ」
「静かに」


 おもわず叫んでしまったその口をむぐっと手で抑えられて、もごもごする。
 大きな手だった。あとなぜかレモンみたいな、ハーブみたいな、清々しいにおいがする。
 美形って匂いまでいいんだわ、なんて達したあとのぼんやりとした頭で思う。
 ええっとこれは夢?? 白昼夢?? 
 
 股間をおったてて、めちゃくちゃ興奮した美形が、わたしを見下ろしてらっしゃる……興奮してても格好いいんだからずるいわ――までを考えて、自分の今の状況を見返して、わたしはぎゃんっと心の中で叫んだ。


 そうでした。
 わたしは達した直後の、乱れた姿のままだった。
 茶色のチェックの女学園の制服のスカートはまくり上げたままで、ショーツは愛液でびしょびしょ、ブラウスもずれておっぱいが飛び出てる。そして男の手で口元を押さえられてる――

 今の状況に、冷静になった。
 わたし、ふ、不法侵入者にエッチなことされかけてるの!?
 せ、精霊様が怒っちゃう!
 この美形さんに天罰が下っちゃうんじゃ……!!??

「や、やめてください!!!! わ、わたしに手を出すと危ないですよ!」

 とっさに身体を跳ね上げる。わたしの勢いに気おされたのか、美形さんは一瞬手を緩めた。
 枕元にある警備のベルを手に取る。

「危ないって?」
「わ、わたしは精霊様の花嫁なんです! 他の男の人に触れられちゃダメなんです!」
「へぇ……?」
「精霊様、怒っちゃいますよ!! 放してください!!」

 だめだ、この美形さん。なんか面白い、みたいな顔してるし、なんなら嬉しそうですらある。
 わかってない! 
 も、もしかして、怒られるのがご褒美です、みたいなちょっと変わった性癖なのかしら??

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