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「本当に申し訳ありません、メル嬢。正直、記憶は飛び飛びであいまいですが、部屋の状況で自分が何をしでかしたのかはしっかりとわかっているつもりです」
「い、いいんです。……あの、その」
「すっごく気持ちよかったですし」と口が勝手に言いかけて、さすがにこれはどうかと思い口をつぐむ。でもこんなことがあって「全然大丈夫です!」っていうのも、なんだか軽い女みたいだし、実際、結構大丈夫ではないし……と思って何とも言えず黙ってしまうと、アレクディール様はわたしが言葉が紡げないほど傷ついている、とでも思ったのか、再び地面にめり込みそうな勢いで土下座した。
「本当に申し訳ありませんでした! 用量を間違えた俺にすべて責任があります!」
「……」
たしかに、それはそう。そうなんだけど。
わたしは副団長様として凛々しいアレクディール様に憧れているので、今のかわいそうな状況を見ていられなかった。しかもそれがわたしのせいだから、なおさら。
しゅん、としてて子犬みたいだ。かわいいけど、とってもかわいそう……。
「い、いいえ! わたしもその、強く拒みませんでしたし」
「男の力でのしかかられ、か弱い貴女に抵抗は無理でしょう」
「用量の表記文字が小さかったのかもしれませんし」
「ちゃんとラベルを見なかった。俺の不注意です」
「回復薬と同じ瓶なせいで紛らわしかったかもしれません」
「……。さすがに、そこまで責任転嫁する無様な男ではありません」
「あ、あの! よければ、お互い忘れましょう、ということで」
もうさすがに言い訳じみた言葉が思い当たらなくなってきたわたしに、アレクディール様は静かに言った。
「そんなことはできません。星王国の騎士の誇りにかけて、責任はきちんと取らせていただきます」
ぺらり。
そう言ってやっと立ち上がったアレクディール様はわたしの前に立派な羊毛紙を取り出した。
「誓約書を作りました。責任を取りますので確認して署名をお願いします、メル嬢」
「は、はい」
再び土下座スタイルに戻るべく床にすわるアレクディール様を心配しながら、わたしはその羊皮紙に目を通す。
誓約書。なにやら厳めしい金縁で縁取られ、羊毛紙に掛かれたそれは間違いなく公式文書だ。
ええっと……と文字を読み始めた、わたしは固まった。
アレクディール様のフルネーム、アレクディール=シュテルン=ヴィッセルバルドって書いてあるんですけど……? ミドルネーム・シュテルンって、このシュトラール王国の王家の血筋じゃないとつかないミドルネームじゃありませんでした??
「あ、アレクディール様って、その、王族、だったんです、ね?」
かすかに震えながらそう言えば、アレクディール様は何でもないことのように頷いた。
「ああ、はい。現王は母の弟で、俺の叔父に当たります。ですが騎士になるにあたって王位継承権は放棄しているのであまり関係なくて……と、そんなことはどうでもいいので、ちゃんと読んでくださいね」
「ええっと、あ、はい」
多分関係なくないし、どうでもよくないんですけど! と思いつつ、わたしは再び羊皮紙に視線を戻した。最初の署名でびっくりしちゃったよ、とりあえず内容に目を通して――と、その内容を見てわたしはもう一度固まってしまった。
・アレクディール様が破いたり汚した、わたしの衣服や衣類の返金、返品すること。
・今日あったことを、互いに誰にも言わないこと。
ここまではいい。確かに貴重な一張羅は弁償してもらいたいし、わたしだって誰かにこんな話を言いたいわけじゃない。
その次だ。
・アレクディール=シュテルン=ヴィッセルバルドは、メルメラルダ=ハルパを、妻とする。
「つ、妻、ですか???」
「はい、子が出来るような行為をしてしまったわけですから、その責任はきちんと取らせてください。責任、と考えた時に籍を入れるしかないか、と思いまして。ああ、でも結婚は確かに早かったかもしれません。まずは婚約にしておきましょうか?」
「まってまって、まって! 結婚も、婚約も、待ってください!!」
「い、いいんです。……あの、その」
「すっごく気持ちよかったですし」と口が勝手に言いかけて、さすがにこれはどうかと思い口をつぐむ。でもこんなことがあって「全然大丈夫です!」っていうのも、なんだか軽い女みたいだし、実際、結構大丈夫ではないし……と思って何とも言えず黙ってしまうと、アレクディール様はわたしが言葉が紡げないほど傷ついている、とでも思ったのか、再び地面にめり込みそうな勢いで土下座した。
「本当に申し訳ありませんでした! 用量を間違えた俺にすべて責任があります!」
「……」
たしかに、それはそう。そうなんだけど。
わたしは副団長様として凛々しいアレクディール様に憧れているので、今のかわいそうな状況を見ていられなかった。しかもそれがわたしのせいだから、なおさら。
しゅん、としてて子犬みたいだ。かわいいけど、とってもかわいそう……。
「い、いいえ! わたしもその、強く拒みませんでしたし」
「男の力でのしかかられ、か弱い貴女に抵抗は無理でしょう」
「用量の表記文字が小さかったのかもしれませんし」
「ちゃんとラベルを見なかった。俺の不注意です」
「回復薬と同じ瓶なせいで紛らわしかったかもしれません」
「……。さすがに、そこまで責任転嫁する無様な男ではありません」
「あ、あの! よければ、お互い忘れましょう、ということで」
もうさすがに言い訳じみた言葉が思い当たらなくなってきたわたしに、アレクディール様は静かに言った。
「そんなことはできません。星王国の騎士の誇りにかけて、責任はきちんと取らせていただきます」
ぺらり。
そう言ってやっと立ち上がったアレクディール様はわたしの前に立派な羊毛紙を取り出した。
「誓約書を作りました。責任を取りますので確認して署名をお願いします、メル嬢」
「は、はい」
再び土下座スタイルに戻るべく床にすわるアレクディール様を心配しながら、わたしはその羊皮紙に目を通す。
誓約書。なにやら厳めしい金縁で縁取られ、羊毛紙に掛かれたそれは間違いなく公式文書だ。
ええっと……と文字を読み始めた、わたしは固まった。
アレクディール様のフルネーム、アレクディール=シュテルン=ヴィッセルバルドって書いてあるんですけど……? ミドルネーム・シュテルンって、このシュトラール王国の王家の血筋じゃないとつかないミドルネームじゃありませんでした??
「あ、アレクディール様って、その、王族、だったんです、ね?」
かすかに震えながらそう言えば、アレクディール様は何でもないことのように頷いた。
「ああ、はい。現王は母の弟で、俺の叔父に当たります。ですが騎士になるにあたって王位継承権は放棄しているのであまり関係なくて……と、そんなことはどうでもいいので、ちゃんと読んでくださいね」
「ええっと、あ、はい」
多分関係なくないし、どうでもよくないんですけど! と思いつつ、わたしは再び羊皮紙に視線を戻した。最初の署名でびっくりしちゃったよ、とりあえず内容に目を通して――と、その内容を見てわたしはもう一度固まってしまった。
・アレクディール様が破いたり汚した、わたしの衣服や衣類の返金、返品すること。
・今日あったことを、互いに誰にも言わないこと。
ここまではいい。確かに貴重な一張羅は弁償してもらいたいし、わたしだって誰かにこんな話を言いたいわけじゃない。
その次だ。
・アレクディール=シュテルン=ヴィッセルバルドは、メルメラルダ=ハルパを、妻とする。
「つ、妻、ですか???」
「はい、子が出来るような行為をしてしまったわけですから、その責任はきちんと取らせてください。責任、と考えた時に籍を入れるしかないか、と思いまして。ああ、でも結婚は確かに早かったかもしれません。まずは婚約にしておきましょうか?」
「まってまって、まって! 結婚も、婚約も、待ってください!!」
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