精霊魔術師様は、ずっと見ていたらしいです。

さわらにたの

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「あー! オキャクサンだ!」
「おっきーい! テンジョーにあたまつきそう!」
「ねえーノノアねーちゃん、ゴハンまだぁ?」
「皆、ちょっと待っててね」

 孤児院に男の人がいるのが珍しいからでしょうか。
 子どもたちはぐいぐい、わたしたちにまとわりついてきました。
 金の文様の入った黒ローブ姿、どうみても高位の魔術師さん然したケビンネ様は、眉間にしわを寄せています。

「わぁ、カッコいい! マジュツシさま?」
「ねっ、カッコイー!」

 背が高くて整った顔立ちのケビンネ様は、女の子たちから見ても格好いいみたいですね。確かに後ろで一つにまとめている黒にも見える深緑の髪はサラサラだし、切れ長な翡翠色の瞳もどこか神秘的。まぁ黙って何もしないでいれば、本当に格好いいですからね……。

「おにーさんのローブ、キラキラ!」
「ねえマホウ見せてマホウ!」
「裾を引っ張るな。俺は見せ物じゃない、クソガキども」
「ケビンネ様! お口が悪いですよ!」

 ジロジロみられるのが不快なのか、子供たちを睨む大人げないケビンネ様に、わたしは注意してため息を吐きました。
 まったく。世間のイメージの優しくて穏やかな”精霊様”とは大違いです。

「これから一緒に暮らすんですから、そんな物言いはやめてくださいよ!」
「は? 知らん、お前以外のニンゲンは正直どうでもいい。それにこいつらも色んな大人に慣れておいたほうがいいだろ。外はお前みたいに品行方正なやつらばかりじゃないんだ」
「自分の汚い言葉をいい感じに肯定しないでください! ……絵本の中の精霊様は、こんなんじゃありませんでしたよ?」
「勝手にニンゲンが美化してるだけだろうが。他の精霊も似たようなもんだ、第四の軍師カペルなんかもっとひどいぞ。俺はまだだ」

 精霊様って、この国と人間をいつくしんで愛してくださる、慈悲深くて優しい存在じゃないんですか……? あっけに取られているわたしに、ケビンネ様は肩をすくめました。

「本当におめでたいな、ニンゲンは。――おい、クソガキども。いい加減にしろ、黙れ!」

 でも、威嚇してるケビンネ様には悪いですけど、残念ながら、初対面の大きな男の人に怒鳴られてえんえんと泣くようなしおらしい子供は、この孤児院にはいないんですよね……。

「だまりませーん! そっちがだまれよ!」
「やーだよ! クソっていうほうがクソなんじゃん! クソヤロウ!」
「こ、この、クソガキ共……!」
「ケビンネ様!」

 あの黒いすべすべの触手を出しそうなほどぷるぷるしてるケビンネ様をたしなめます。なんで子どもに張り合って怒ってるんですか!
 何だかお手伝いの大人がひとり増えたというよりも、子どもがひとり増えたような気持ちです。ぎゃんぎゃん言い合っているその姿に、わたしは頭を抑えたのでした。


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