9 / 17
9
しおりを挟む「あー! オキャクサンだ!」
「おっきーい! テンジョーにあたまつきそう!」
「ねえーノノアねーちゃん、ゴハンまだぁ?」
「皆、ちょっと待っててね」
孤児院に男の人がいるのが珍しいからでしょうか。
子どもたちはぐいぐい、わたしたちにまとわりついてきました。
金の文様の入った黒ローブ姿、どうみても高位の魔術師さん然したケビンネ様は、眉間にしわを寄せています。
「わぁ、カッコいい! マジュツシさま?」
「ねっ、カッコイー!」
背が高くて整った顔立ちのケビンネ様は、女の子たちから見ても格好いいみたいですね。確かに後ろで一つにまとめている黒にも見える深緑の髪はサラサラだし、切れ長な翡翠色の瞳もどこか神秘的。まぁ黙って何もしないでいれば、本当に格好いいですからね……。
「おにーさんのローブ、キラキラ!」
「ねえマホウ見せてマホウ!」
「裾を引っ張るな。俺は見せ物じゃない、クソガキども」
「ケビンネ様! お口が悪いですよ!」
ジロジロみられるのが不快なのか、子供たちを睨む大人げないケビンネ様に、わたしは注意してため息を吐きました。
まったく。世間のイメージの優しくて穏やかな”精霊様”とは大違いです。
「これから一緒に暮らすんですから、そんな物言いはやめてくださいよ!」
「は? 知らん、お前以外のニンゲンは正直どうでもいい。それにこいつらも色んな大人に慣れておいたほうがいいだろ。外はお前みたいに品行方正なやつらばかりじゃないんだ」
「自分の汚い言葉をいい感じに肯定しないでください! ……絵本の中の精霊様は、こんなんじゃありませんでしたよ?」
「勝手にニンゲンが美化してるだけだろうが。他の精霊も似たようなもんだ、第四の軍師なんかもっとひどいぞ。俺はまだお上品だ」
精霊様って、この国と人間をいつくしんで愛してくださる、慈悲深くて優しい存在じゃないんですか……? あっけに取られているわたしに、ケビンネ様は肩をすくめました。
「本当におめでたいな、ニンゲンは。――おい、クソガキども。いい加減にしろ、黙れ!」
でも、威嚇してるケビンネ様には悪いですけど、残念ながら、初対面の大きな男の人に怒鳴られてえんえんと泣くようなしおらしい子供は、この孤児院にはいないんですよね……。
「だまりませーん! そっちがだまれよ!」
「やーだよ! クソっていうほうがクソなんじゃん! クソヤロウ!」
「こ、この、クソガキ共……!」
「ケビンネ様!」
あの黒いすべすべの触手を出しそうなほどぷるぷるしてるケビンネ様をたしなめます。なんで子どもに張り合って怒ってるんですか!
何だかお手伝いの大人がひとり増えたというよりも、子どもがひとり増えたような気持ちです。ぎゃんぎゃん言い合っているその姿に、わたしは頭を抑えたのでした。
14
あなたにおすすめの小説
聖痕を奪われた無自覚最強聖女、浄化力が強すぎて魔界の王子を瀕死(HP1)にしてしまう。物理的に触れられないのに、重すぎる愛で逃げられない
唯崎りいち
恋愛
「役立たず」の聖女アイドル・私。教皇に「悪魔の聖痕だ」と追放され、魔界の森に捨てられたけれど……実は私の聖痕、世界を浄化しすぎる最強の力でした。
そこで出会ったのは、呪いでHP1の瀕死な魔界王子。
「君に触れると浄化で死にそうだが……一生離さない」
いや、死んじゃいますよ!?
王子が写真をばら撒いて帝都を大混乱に陥れる中、私は「専属契約(ガチ恋)」から逃げられないようで――!?
勘違い聖女と執着王子の、ドタバタ魔界ラブコメ!
ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない
斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。
襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……!
この人本当に旦那さま?
って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!
妹の身代わりだった私に「本命は君だ」――王宮前で王子に抱き潰され、溺愛がバレました。~私が虐げられるきっかけになった少年が、私と王子を結び付
唯崎りいち
恋愛
妹の身代わりとして王子とデートすることになった私。でも王子の本命は最初から私で――。長年虐げられ、地味でみすぼらしい私が、王子の愛と溺愛に包まれ、ついに幸せを掴む甘々ラブファンタジー。妹や家族との誤解、影武者の存在も絡み、ハラハラと胸キュンが止まらない物語。
冷酷な王の過剰な純愛
魚谷
恋愛
ハイメイン王国の若き王、ジクムントを想いつつも、
離れた場所で生活をしている貴族の令嬢・マリア。
マリアはかつてジクムントの王子時代に仕えていたのだった。
そこへ王都から使者がやってくる。
使者はマリアに、再びジクムントの傍に仕えて欲しいと告げる。
王であるジクムントの心を癒やすことができるのはマリアしかいないのだと。
マリアは周囲からの薦めもあって、王都へ旅立つ。
・エブリスタでも掲載中です
・18禁シーンについては「※」をつけます
・作家になろう、エブリスタで連載しております
結婚式に代理出席したら花嫁になっちゃいました
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
美希は平日派遣の事務仕事をしているが、暇な土日に便利屋のバイトをしている。ある日、結婚式の友人の代理出席をする予定で式場にいたのに!?
本編は完結してますが、色々描き足りなかったので、第2章も書いています。
家政婦の代理派遣をしたら花嫁になっちゃいました
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
このご時世、いつ仕事がクビになるか分からない。社内の派遣社員が一斉にクビを告げられた。天音もそんな1人だった。同じ派遣社員として働くマリナが土日だけの派遣を掛け持ちしていたが、次の派遣先が土日出勤の為、代わりに働いてくれる子を探していると言う。次の仕事が決まっていなかったから天音はその派遣を引き受ける事にした。あの、家政婦って聞いたんですけど?それって、家政婦のお仕事ですか!?
強面の雇い主(京極 樹)に溺愛されていくお話しです。
獅子の最愛〜獣人団長の執着〜
水無月瑠璃
恋愛
獅子の獣人ライアンは領地の森で魔物に襲われそうになっている女を助ける。助けた女は気を失ってしまい、邸へと連れて帰ることに。
目を覚ました彼女…リリは人化した獣人の男を前にすると様子がおかしくなるも顔が獅子のライアンは平気なようで抱きついて来る。
女嫌いなライアンだが何故かリリには抱きつかれても平気。
素性を明かさないリリを保護することにしたライアン。
謎の多いリリと初めての感情に戸惑うライアン、2人の行く末は…
ヒーローはずっとライオンの姿で人化はしません。
【完結】悪役令嬢の身代わりで処刑されかけた侍女、悪人面強面騎士にさらわれる。
雨宮羽那
恋愛
侍女リーリエは、処刑される予定の主・エリーゼと容姿がそっくりだったせいで、身代わりとして処刑台へ立たされていた。
(私はエリーゼ様じゃないわ!)と心の中で叫んだ瞬間、前世の記憶がよみがえり、ここが読みかけだった悪役令嬢ものの小説の世界だと気づく。
しかも小説ではエリーゼが処刑されるはずなのに、リーリエが処刑されかけているという最悪の展開。
絶体絶命の瞬間、リーリエの前に現れたのは強面で悪人面の騎士ガウェイン。
彼はなぜかリーリエを抱えあげ連れ去ってしまい――?
◇◇◇◇
※全5話
※AI不使用です。
※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる