最強魔力量の最弱魔術士はマトモに戦わない

༺みずな(シャキシャキ)࿐

文字の大きさ
6 / 45
第一部

5話:集配魔術士は王都を巡る

しおりを挟む
 授与式から一週間、俺は王都へ行く準備をしていた。用意したのは、かねてから貯めてきた20ジェラ(1ジェラ=1万円)と1モータル(約4リットル)の水、そして保存食として父が持たせてくれた兎肉のジャーキーである。王都までの道のりは村唯一の運び屋のトニーに任せてある。運賃は5ジェラだったが、なんとか頼み込んで3ジェラまで減らしてもらった。道中は険しいため、三日間、馬車での移動となる。出発の時を迎えた俺を父が見送りに来てくれた。

「ルヴェン、王都へ行っても元気でな」

「うん父さん。俺にはやるべきことができたんだ」

馬車へと向かう俺を父が引き止めた。
「ル、ルヴェン!俺はお前に一つ言ってないことがある。どうか聞いても驚かないでくれ。俺はお前の…」

俺は父に近づいてそっと肩を叩く。
「ああ、全部知ってたよ。でも俺にとっては父さんが実の父さんだよ。だから心配しないでくれよ」
「ルヴェン。今まで騙していて悪かった。こんな父を許してくれ!」
あの頑固な父が珍しく泣いている。
「さよなら父さん。」
俺はそう言い残して馬車に乗った。馬がヒヒィーンと甲高い声をあげ、ひづめの音と共に勢いよく出発する。父はその間もずっと俺の姿を見ていた。

(これから楽しくなりそうだ)

 
王都への道は困難を極めた。一つの馬で移動できる距離はせいぜい一日20ファー(1ファー=1キロ)が限界だったので60ファー離れた王都までは丸三日かかった。用意した食料は二日で底をつき、少ない水でだけで残り一日は何も食べずに王都へ着いた。俺はあまりの王都の大きさに言葉を失う。
「ありがとうトニー。それにしても王都は広いな。またいつか村で会おう!」
俺たちは握手して別れた。

さて、俺は1ヶ月前アメジス家に訪問させて欲しいとの手紙を送った。エステラを助けてあげたこともあって、返事は『よろしい』との事だった。アメジス邸に向かおうと思ったが、身体は思うように動かなかった。お腹が鳴る(そういえば俺、昨日から何も食べていないんだったな。移動がてら、どこかで食べよう。)俺は王都の散策がてら、店を探すことにした。町は活気に溢れ、あちこちから店を宣伝する声が聞こえる。俺は改めて集配魔術が役に立ちそうだなと思った。しかし、王都をよく見ていると、王城に向かうにつれて人や亜人奴隷の数が多くなっていった。ここは貴族の邸宅が多いため、彼らに雇われたものたちなのだろう。(王都内でもここまで身分の差があるのか。)と俺は思った。でもそっちの方が都合がいい。俺を捨てたのは貴族であることに変わりはないのだから。

ここから先は値段がドンと跳ね上がる。この辺で食べていこう。人が盛んに行き来する場所だけあって、料理店は多かった。その中の一つに入る。
『アルバ料理店』
中に入ると、デミグラスソースの香ばしい匂いがしてくる。俺は店の一番人気、『コルコットのシチュー』を頼んだ。値段は13コルク(1コルク=100円)で少々高かったが、王都の標準的な味を知るためにはちょうど良かった。
料理が運ばれてくる。ああいい匂いだ。とろとろになるまで煮込まれたコク深いシチューからは香草や数種類の野菜の旨味が溢れ、何よりイノシシに似た姿が特徴のコルコットの肉は口の中でほろほろと崩れる。ウマい。ウマすぎる!初めての王都の味に感動しながら俺はゆっくりと食べ終える。

王都の生活はこれからだ。俺はエステラ家へと向かう。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

遺産は一円も渡さない 〜強欲な夫と義実家に捨てられた私、真の相続人と手を組み全てを奪い返す~ (全10話)

スカッと文庫
恋愛
「お前の価値なんて、その遺産くらいしかないんだよ」 唯一の肉親だった祖父を亡くした夜、夫の健一と義母から放たれたのは、あまりにも無慈悲な言葉だった。 四十九日も待たず、祖父が遺した1億2000万円の遺産をアテに贅沢三昧を目論む夫。だが、彼には隠し通している「裏切り」があった――。 絶望の淵に立たされた由美の前に現れたのは、亡き祖父が差し向けた若き凄腕弁護士・蓮。 「おじい様は、すべてお見通しでしたよ」 明かされる衝撃の遺言内容。そして、強欲な夫たちを地獄へ叩き落とすための「相続条件」とは? 虐げられてきた妻による、一発逆転の遺産争奪&復讐劇がいま幕を開ける!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

悪役令嬢は手加減無しに復讐する

田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。 理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。 婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。

公爵令嬢は結婚式当日に死んだ

白雲八鈴
恋愛
 今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。 「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」  突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。 婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。  そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。  その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……  生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。  婚約者とその番という女性に 『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』 そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。 *タグ注意 *不快であれば閉じてください。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...