最強魔力量の最弱魔術士はマトモに戦わない

༺みずな(シャキシャキ)࿐

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第一章 グレート・センセーション

3話:集配魔術士は気持ちよさそうに寝る

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 ぽかぽかとした陽気がアイシスの町に広がる。市場は盛況し、漁船が港を出入りする。海は穏やかに流れてコバルトブルーに輝いている。いよいよ俺達の夏が始まるのだ。

「ルヴェン、冒険者ギルドはあっちだよ」

「ギルドには行かないよララ。俺たちがここにいることを教えるようなものだからな」

「そっか。報酬はもらえないけどそっちの方が楽しいかも」

正直、ギルドはゴメンだ。ギルドというのは本来、国民の安全を国民が守るという思想から生まれた機関だった。そのため、運営も報酬も全てそこに住む住民の税の一部が使われている。しかし最近のギルドといえば、国民の税金をと言ったようにクエストを減らし、報酬を出さないようにしている。当然、冒険者志望の若者は数を減らし、ただ単にお金をるための機関になりつつある。

「ララ、ウェグの大草原で魔物狩りに行くぞ」

「うん。私、強くなりたい・・・」

「ララには素質がある。足りないのは経験だけだ!」

 俺達はウェグの大草原に戻ってきた。踏むとシャリシャリと音がして、寝転がるとそれはまた気持ちいい。

「ルヴェン…魔物狩り、行かないの?」

「もう少し寝かせてくれよ。こっちは昨日からほとんど寝てないんだぞ」

「私、全然疲れてない。早く魔物、狩りたい」

「そりゃそうだ。ララは疲れてないだろうな。なんせ俺が一晩中魔物を見張ってたんだ」

またあくびが出てしまった。ララはそれをみて呆れて物も言えないと言った様子だ。

「ララ、そんな顔するな。俺がただ寝てただけだと思うか?・・・向こうの木の陰だ」

そこにはまんまと小型の魔物がかかっていた。肉らしき塊をすごい勢いでかじっている。

「あれは昨日の燻製肉!いつのまに!?」

「俺を誰だと思ってる。最強の集配魔術士だぞ!肉を置いとくぐらい朝飯前だ」

「最弱魔術は極めても所詮は下の上。自慢になってない・・・」

ひどいことを言うものだ。コイツも最初に比べたら生意気になったな。笑っちまうぜ。

「ララ、食事を終えた魔物達が帰っちゃうぞー。ほら、行ってこい!」

「言われなくても行ってくるけど」

そう言ってララは魔物に一直線に向かっていく。昼間といえど、草むらは影ができやすく、ララにとって好条件だ。瞬く間に魔物達の側へと到着した。

【迅雷練撃】!!

ズガーン!!

【影移動】の効果で3倍になった移動速度のまま地上に現れ、雷を纏った瞬速技が次々に魔物を倒していく。圧倒的な戦闘センスと素早さを生かした無駄のない戦い方だ。
 そして間も無く魔物は残滅された。本当に強いな、苦笑しちまうぜ。

「ルヴェン、どうだった?バシバシ倒してくよー!」


 あれから二時間が経過し、時刻は午後一時を回っていた。帰ってきたララから凄まじいオーラを感じる。【灼眼】で調べてみた。



やはりなかなかのステータスだ。攻撃、特に素早さがこのレベルでこれだけあれば申し分ない。
防御能力もバランスがいい。問題は魔力だけだ。あの量じゃ一回しかスキルを使えない。俺が配ってやるのもいいが、できればアクセサリーなど無いものか・・・・

「ルヴェン・・ボーッとしてる」

「いや、ララのステータスを見ていたんだ」

「そんなことができるの?ルヴェン、スゴイ!」

 

 二人でステータスを確認して、俺たちは町へ向かった。昼時の込み合う時間帯、何とか一軒の店に入った。

〈チェルシー料理店〉

中に入ると、漁の終わった若者達がワーワー騒いでいる。狭い店内だが全席オーシャンビューであり、音楽も陽気で雰囲気がなかなかいい。

「おや、君たち冒険者かい?」

「冒険者っちゃー冒険者かもな。ただの放浪人よ」

「そうかそうかー、この町はイイぜ~海のもんは皆新鮮だし若い姉ちゃんもいっぱいいるぜー!」

ワハハハハ!

「何だか盛り上がっているとこすまないが.腹が減っているんだ。注文させていただこうか」

「悪りーな!この店のオススメはフェルシータのスープだ!これを飲んでパーッとやるのが最高なんだよなぁ」

フェルシータはここのは付近でよく取れる貝のことで、身が締まっていて焼くと美味いらしい。また、この貝をダシにしたスープは旨味が強く、疲れた体に良いらしい。

「じゃあそれ二つ」

「はいよ」

しばらくしてスープ、と言うよりはメインに近いような、魚介類をとことん煮詰めたブイヤベースのようなものが出てきた。一すくいして食べてみる。

「何これ、おいしい!」

「確かに美味いなララ。疲れが取れていくようだ」

「ルヴェンは寝てただけでしょ!私の方が疲れてるんだから」

「寝るのも疲れるんだよ」

「何それ、いみわかんない」

ララが楽しそうに笑っている。こんな日常の一コマもなかなか良いものだな。良い人にもたくさん出会えた。

 一通り食べ終わった俺達は店を出る。値段は二人で18コルク。王都で食べたビーフシチュー、13コルクに比べると安いし、これが商業の町の標準的な物価なのだろう。

「おっと、君たちもう帰るのかい?もう少しゆっくりしていけよな!」

「親切にしてもらって悪いが、俺たちにはやることが山ほどあるんでね。帰らしていただこう」

「ここであったのも何かの縁、またな君達」


 それなりに良いお店だった。俺たちは石畳の街道を進んでいく。初日は中々楽しかった。この町の店なら差し障りなく仕事もできそうだ。斜めから差し込む陽光が歩いて行く二人を照らしていた
 
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