最強魔力量の最弱魔術士はマトモに戦わない

༺みずな(シャキシャキ)࿐

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第一章 グレート・センセーション

4話:集配魔術士はこっちの戦闘には長けている

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ガタンッ!

「うわぁルヴェン、また崩れ落ちたよ」

「ここまでくるともはや芸術だな」

「そんな冗談言ってる場合?・・・いたッ」

 ララが上から落ちてきた木片を頭に受ける。やはりこの宿は素晴らしいほどのボロ宿だった。天井の木材が腐っていて時折落ちてくるのだ。これでは安心して眠れない。
 俺たちは夕方の市場マーケットで薬草をいくつか仕入れ、夕食を食べて帰ってきていた。時刻は21時を回っている。

「ルヴェン、これからどうするつもりなの?」

「魔物を倒してレベルを上げながら、仕事をする、王都の時のようにな。情報収集をして奴らザラードへの復讐プランを練るつもりだ。」

「私、早く憎い王族共をバラバラにして亜人たちを解放させてあげたい。それが私の目的だから」

「俺も奴らへの報復をしてやりたいのは山々さ。だがな物事には適切なタイミングというものがある。今の俺たちは敵の実態を把握していない。今は動けば自殺行為だ。今はあくまでも慎重に進める。それでいいな?」

「分かったよ・・・」

ララが不満そうな顔をするが、これはしょうがない。彼女も内心では理解してくれているだろう。今の俺たちは無力だということを・・・
もう辺りはすっかり暗くなった。今日はもう寝よう。
俺が石のように硬いベットに横たわると、ララは俺の影の中に入った。今ではそれがララの定位置のようなものになっている。
海風が宿に吹き付けるたびにヒューヒューと音を立てて唸る。俺は薄々何かが起こる気がしていた。


 朝になると、昨夜の強風はすっかり収まり空気が澄んでいた。肌を撫でる風が心地よい。今日もすっかり晴れていた。ここアイシスは南のまちなだけあって、年間を通して晴れる日が多いらしい。

「ルヴェン、買ってきちゃった~」

元気な娘の声が朝から晩まで俺の頭を駆け回る。朝からなんだ、鬱陶しい。

「サウミスとボヤンだよー」

「朝食のための野菜を買ってきてたのか~ちゃんとしたもの買ってこれるじゃないか!」

「ルヴェン、私のことなんだと・・買ってこれるにきまってるよ。ほら、早く起きなよ」

わんぱく少女の朝は早い。ここは俺が朝食を作ってやるか。

俺は火打石を叩く。(ここにイフリーナがいたらどんなに楽か・・)不意にもそんなことが頭に浮かぶ。あいつらにまた会いたいと思った。無論、そんなことを考えていても仕方がない。
 やっとの思いで火をつけると鍋を置き0.3モータル(1.2リットル)の水の中に米を入れる。そこに、ごろっとしたボヤン芋をぶつ切りにして放り込む。続いてはサウサスだ。この野菜は香り高い根菜でみじん切りにしてやることで風味がより強くなる。これも同様にして鍋に流し入れる。米と芋がとろっとろになるまで煮込んだら完成だ。

《ほっこりボヤンの粥サウサスの爽涼を添えて~》

「おいしい!やっぱりルヴェン、料理人になれるよ」

「当たり前だろ。俺が作る料理がマズいわけない」

「自己評価高すぎ・・・そういうとこがなければなぁ・・」

「どういう意味だ?」

「何でもないよ。お代わりしていい?」

「ああ、そういうと思って二倍の量作っておいた。どんどん食べてくれ」

 こうして、俺たちの朝食が終わった。

「よしララ、仕事を探しに行くぞ!」

「楽だから集配でちゃちゃちゃっと終わらせよ~」

「それはダメだ。奴らに俺が集配魔術士であることが知れ渡ってる以上人前では使えない」

 「じゃあ肉体労働??力ならあるから任せて!」

「お前が良くても俺がゴメンだ。まあ見とけ、ララが魔物と戦ってる間に試してみたんだ」

そう、ララは魔物を倒すことで100パーセントの経験値を得られるが、他のパーティメンバーにも40パーセントが蓄積される。ララが二時間も戦ってくれたおかげで、俺のレベルも2ほど上がっていた。



そしてこれにより、【灼眼】と【集配】のレベルが上がり、新たなスキルを得た。
一つは【集配】を極めた事により追加された、成分の抽出と合成
もう一つは【灼眼】に追加された、成分と価値の鑑定だ。俺はこの二つを組み合わせれば新たな商売ビジネスのカギになると考えた。
エステラと別れて以降、パーティの回復役がいない。そのため回復効果のある薬草を度々仕入れ、切らさないようにしていた。それを使って試してみる。
 俺が魔術を唱えると、薬草から煙が出て薬草の回復効果成分だけを取り出され薬瓶に詰まる。

「ルヴェン、これって・・・ポーション!?」

「ああ、その通りだ。 純度も一級品、これで商売ができるさ」

市場マーケットに出店するの?」

「いや、いきなりポーションの店が開いたとなれば俺たちが王都から存在を消した事と時期が重なって怪しまれる可能性が高い。商人に買い取ってもらうのが無難だろう」

 俺たちはこの街の一商人の元を訪ねていた。

「して、金になる話とは何でしょう?」

「これを見て欲しい。純度80ポーテルの一級回復ポーションだ」

「一級ポーションですと!!この街にこれだけの腕を持った回復術士がいらっしゃるとは。ぜひ私に専売特許をいただきたい」

話が分かる商人でよかった。あとは薬草の仕入れ先と値段交渉だ。

「このポーションいくらで買い取れる?」

「うーむそうですな・・・一瓶6コルク、500瓶からの買取で30ジェラといったところでしょうか」

安いな。一級ポーションなら10コルクの値段はついてもおかしくない。この商人はボーダーラインギリギリのところを持ち掛けている。俺は満足していない。

「その値段では売ることはできない。どうしてもというなら薬草の仕入れ先を確保して俺に100本2コルクの安値で売れ。それならこの条件でも構わない。」

「100本2コルク!?そいつは敵わん。」

「どうやら俺の見る目が間違っていたようだ。他の商人を訪ねるとするか」

「お待ちくだされ旦那様。貴方には負けました。この条件で手を打ちましょう」

「頼もしいぜ全く。よろしくな」

こうして俺は薬草を安く仕入れることができるようになった。100本から10個のポーションを作ることができる。500個なら5000本の薬草が必要になるが、それをたったの1ジェラで仕入れることが可能になった。利益は毎月29ジェラ手に入る計算だ。

「ララ、話は済んだ。どこか行きたいとこでもあるか?」

「私、武器屋に行ってみたい」

「そうだな、行ってみるか」

「ホント!?やったー」

いつにも増してララのテンションが高い。連れて行ってあげたい反面、俺にも少しの興味があった。王都では結局行けなかったし、防具と言ったらアメジス家で貰ったこの鎧ぐらいだ。それに・・・

「ララ、鎧があるのに剣がないのは不自然じゃないか?」

「何言ってんのルヴェン。攻撃力がないのに持ってても意味ないじゃん」

「威嚇するためさ。丸腰だったら舐められるだろ」

「ルヴェン、もう遅いよ」 

ララが笑いかけてくる。そうかもなと思って俺も笑った。
 しばらくすると、武器屋が見えてきた。かなり年季の入った建物で焦げた跡があるため、武器の製造も行なっている様子だ。

「あんちゃん、なんか用か?」

現れたのは、如何にも海の男らしい色黒の大男だった。

「武器を買いに来た。出来れば鉤爪型の殺傷性の高い武器と軽く振りやすい細身の剣がいい」

「あんちゃん、忌敵でもできたのかい??うちの武器の品質なら保証するぜ!」

「それは期待できそうだ。早速武器を見せてもらおう。」

男は裏の倉庫らしきところからいくつかの武器を大胆にも掴むと、俺たちの前に落とした。

「気に入ったのがあったら言え」

俺は出してきた武器をまじまじと見つめる。確かに、どれも鉄製のしっかりとした武器でありながら負担にならない軽さがある。その中の一つの剣を手に取る。

「おやっさん、この剣は特殊な魔術がかかっているようだが」

「そいつはベルジェ・レイピアだ。軽量化の魔術がかかっている。なかなかデザインも良いだろう」

「嬢ちゃん、武器はどうする?」

「私、これ気に入った」

「なんかすごいキラキラしてるなー」

「お連れさん、目が肥えてるねぇ。そいつは77ポータルの高純度で合成した輝鉄スパークルメタルの鉤爪さ。コイツは切れ味がよすぎて扱える人がいなかったのさ」

「ララ、なんかやめといたほうがいいんじゃないか?」

「おじさん、これ下さい!」

「はい毎度~!」

「おいおい、勝手に決めるな!」

「なんでよ~私が強くなったらルヴェンも嬉しいでしょ?」

ララは夢見る少女のように目を輝かせてこちらを見る。お金にそんなに余裕がないのだが・・・まあここは俺が折れてやるか・・・・

「おやっさん、値段は??」

「二つ合わせて16ジェラだ!!そっちの兄さんが持ってるのが4ジェラ、お嬢さんのは12ジェラだ」

「えッ!幾ら何でも高すぎないか?もう少し安くしてくれ」

「これでも安くしてやってんだぞ!なら九割五分で15.2ジェラでどうだ」

「もう少しだ!八割五分五厘で13.6ジェラで頼む!金が無いんだ」

「ああもう分かった。6.8ジェラの二回払いで勘弁してやる。分かったらさっさと持ってけ。二度と来るなよ」

「おやっさんサンキュー!!また来るぜ!」

俺たちは武器屋を出て行く。それにしても多大な出費だ。昼は獣狩りにでも出かけようか。

俺とララは腹が空いたが、心は十分満たされていた。









 



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