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朝起きて

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朝起きて、また寝る。二度寝してしまった。
布団にもう一度入るとまず足から温かくなり、体全体に心地よい暖かさが広がってゆく。

最近、睡眠というものが僕の生活を支配しようとするように感じる。これは非常にまずい事態だ。彼は僕を布団に繋ぎ止めることで僕を愉悦の温床に縛ろうとしてくるからだ。昔は抗えた。文字通り、元気だったからだ。今はなんだか老いを感じる。精神の老化ともいうべきか。だが負けるわけにはいかない、という心持ちが、僕の中に芽生えてきた。だってまだ僕は若者だ。そうさ、エネルギーに溢れた若者だ。というふうに奮い立たせてみたところで、布団に寝っ転がり、あわよくばスマホをいじり出す始末だ。スマホ。こいつが全ての元凶な気がする。そうだ、スマホを手放せばいいんだ!

 ・・・おっと、スマホを手放したら小説が書けないことを忘れていた。だが、スマホで人生が書けるとは思えないので皮肉である。とはいえ、スマホはものすごい中毒性を秘めているものだ。こいつは人の生活の内部に侵入し、人々を虚無の空洞に放り込んでしまう。最近、思うことがある。スマホにそんなに価値があるのだろうかと。僕はスマホゲームというものをやらない。好きなYouTuberがいるわけでもなければ、大したアニメ好きでも無い。LINEで人と会話することはほぼなく、Twitterで呟くことも減って来た。まさしく暇潰しのために何となくスマホを触り、まずい、と思ってスマホから離れると、奴らは僕を追ってくる。僕がスマホを追いかけてしまうこともある。これは非常によろしくない。目的のない人間はスマホをいじってはいけない。これは僕の中の定説である。しかし抗えないほどに、今日のスマホは魔力を込めすぎている。ずばり、便利なのだ。スマホ。正式にはスマートフォンと呼ぶべきだろうか。フォン、と言うくらいだからさぞかし電話に多く使われるのだろうと思われるネーミングだ。今新たな疑問が湧いて来た。スマートフォンなのに、なぜ略称はスマホなのかと。これはどうでもいいのだが、日本語はここでも僕を楽しませてくれるのかとしみじみ思うところである。さておき、実際にスマホを使っていると、気づくことがある。全くもって電話という本来の用途では用いないのである。ここにスマホの本質があるような気がする。というのは、スマホはその機能を拡張し、二次元の情報世界に三次元の亜空間を展開する道具なのではないかということである。スマートフォンには実に様々な機能がついている。電話に加え、カメラ、ゲームアプリ、SNS、検索機能と挙げればキリがない。これこそまさに、二次元空間に架空の三次元空間が想像される過程なのである。ともすればこれは恐ろしい事態だ。人間を三次元の存在から0と1ばかりの二次元の虚構へと彼らは誘おうとしているのである。では、どうすればこのような事態を逃れられるか。答えは簡単である。いますぐスマホを手放せばよい
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