高校なんて滅んじまえ

༺みずな(シャキシャキ)࿐

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青くさびれた階段

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僕が学校へ通う時、毎日のように通る階段がある。僕が生まれた時からずっとそこにある青い階段。といってももうかつてのような綺麗な青とは言いがたい。手すりは錆びれており、無造作に塗られたなけなしの青い塗料がチラチラと覗くだけである。コンクリート製の一段一段は所々ひび割れ、中には一部が陥落しているものもある。こうしてまじまじと見ていると、不思議なことに階段の気持ちに思いを馳せていた。僕はこの階段を自分の青春(実在するのかは知らない)に照らし合わせていたようだ。重い灰色の踏み面に寂れた青い手すり、下るたびに息苦しさを感じるそんな階段。なんだか地獄に続いているかのような急勾配の階段。辺りは閑散として僕1人取り残されたみたいな重い階段。こいつはどうしてこんな姿になってしまったのか。人に無意識に踏まれるだけの存在。まるで社会に忘れ去られたようなどこか寂しい無の存在。僕は耐えられなかった。自分もこの階段と同じ運命にある気がしたからだ。運命、なんで大袈裟なと思うかもしれない。だが人の心の断片にすら残らないそんな存在は救いようのない哀愁を感じさせるものだ。それも未来すら望めないほどに。
未来ってなんなのだろう。不意にこの言葉に安っぽさを感じた。「いつか夢が見つかる」「大学に行けば自分の未来が見えてくるさ」そんな周囲のありがたい言葉さえもどこか嘘っぽさを帯びて脳に絡みつく。今の僕と1秒後の僕で何が変わっただろうか。結論、何も変わらない。強いて言えばこの大して意味もない文章を3文字程書き進めたという事実のみである。僕みたいな偏屈な人間は1秒間で変化のないものが1年続いたとしても、無意味な1秒間を31536000秒間繰り返すだけのそんな人生に思えてきてしまう。
 では、なぜ今の自分は変われないと決めつけてしまうのだろうか。そんな疑問がふと浮かんだ。この疑念こそ根本的な原因になり得る気がしたのだ。その瞬間僕は無意識に対する意識を取り払ってしまっていたと気付かされた。僕が普段歩く時に「右足、左足」といちいち意識を向けないように、それが1日、いや1年単位で意識を向けることを放棄してしまっていたのだ。「考えないこと」は僕を楽にしてくれるが、何も解決しない。ただ闇雲に時間が過ぎていくだけである。語弊があるかもしれない。「考えない」のではなくて「考えていない」のだ。今の自分をどう変えていくのか、考えるというプロセスを省略した何気ない日常が僕を一層つまらない人間にしていた。僕は今日もこの青い階段を下って通学する。だが青い階段は段鼻を高く突き上げて存在感を感じさせるような気がした。
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