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ROKI

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悪い男

五、悪魔

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  「譽、お前は…」
  「だってさ、俺を捨てたんだよ?」
  庸介の言葉を遮って譽が言う。
  「勝手に産んで捨てたくせに、俺より美味しい思いしてるとか許せないじゃん」
  悪びれる事の無い譽はいつかのタブレットの動画を再生する。妻を暴行する兄の映像の前に、譽からの不貞の密告を受けている兄がいた。言葉巧みな譽にすっかり抱き込まれて兄は妻に激昂した。その他の動画は全て譽からの指示で、譽がやった事を兄が肩代わりしているものばかりだった。小さな綻びがどんどん大きな弱みに変わっていく様子をまざまざと見せ付けられる。
  「アイツが俺を捨てさえしなければ、俺は何でも手に入れられたのに…俺が受けられるはずだった幸せを全部、奪ったんだ。当然の報いだろ」
  譽は腹の底から嗤い始める。狂気じみた笑いは止まることはない。
  「アンタ、自分の兄貴とそっくりだね。やられるがままでグズグズして、何にも出来ないまま腐って本当クズ。つまんねぇよ、アハハハハハ!」
  嗤い転げる譽は腹を抱えて床をバンバン叩く。なんの後悔も、良心の呵責も譽にはない。自分もまた、容易く踊らされていた事に庸介は忘れていた絶望感を蘇らせた。取り戻したと思ったものは全て単なる空虚であった。譽は操る駒を変えて遊んでいたに過ぎないのだろう。そうで無いなら、庸介自身が今ここには居ないはずだ。出会ったあの日の夜、とっくに不要のものになっていたはずだ。庸介さえ居なければ、譽は大金を独り占めできたのだから。
  「次はどうしようか?俺の伯父さん。まだ俺と遊ぶ?」
  クマのグミと口付けと、譽はまた庸介に与える。婚約者に渡すはずだったダイヤを譽は指で摘んで満足そうにしている。
  「大丈夫、アンタに出来ない事は俺がやってあげる。アイツはもういない。だから今度は俺を恨んでいいよ。アイツよりもっと…ね」
  庸介はカッとした勢いのまま、譽に覆い被さり細い首を絞めた。グイグイと力を込めてもまだ、じゃれ合っているように譽の嗤いは止まらない。酷い形相の庸介の頬を撫で回しながら、譽は無抵抗に瞼を閉じた。
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