〜月下 睡蓮の誓い〜

ぽいぽい

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第1章

目覚め

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.......待って、待って.........お願い.....うぁ......お願いですから.........あぁ.........わっ...わたし...を....をっ.......ぐぉ...これ以上........う、う、裏切らない、で.........。




はっ.........はぁはぁはぁ.........

(次はこの夢.........変わらない、私の夢....)


霜が全てを覆い尽くす冬の朝、朝日がカーテンの隙間から差し込んだ。

日の先にあるのは素晴らしい彫刻と最高級の絹でつくられる大きな寝台。

そこに横たわるのは涙を流す1人の少女ー美しく、あまりに美しい女神の如く彫刻の如く美しい少女だった.........




コンコン.......

おはようございます、お嬢様。

ひとりの侍女が部屋に入ってきた。

見慣れた光景に侍女も一瞬息を呑む

 ー美しすぎる少女に見とれて.........



涙を流す少女はしばらくの沈黙ののち侍女に気づいて挨拶をした。

おはよう、

たったそれだけ、目も合わせず。
感情のこもらない声は物心着いた時からずっとそう。


その少女の現世はティアリナ・ルナ・トゥーラ。14歳。アエネーイス帝国公爵家の一人娘である。

少し青がかった透き通るような銀髪に大きな湖を思わせる目。すっと通った鼻筋に真っ白な陶器のような肌。素晴らしい美人であった。

ただ1ついうならばこの少女の目は子供らしい光が失われていた......。





ティアリナはやがて起き上がって侍女に髪の毛を梳いてもらう。

この侍女の名前はザラ・クルー

ティアリナが12歳の時から仕えている専属侍女である。

クルー男爵家の4女である。
トゥーラ公爵家の派閥である家への信頼を高めるためにやってきた。

焦げ茶の髪をきつく結い上げ髪と同じ目はすこしつり上がっているがティアリナに絶対の忠誠をちかう心優しい侍女である。



しかしティアリナ本人がザラに心をひらくことはない。ザラはそれがとても悲しく思っている。辛くあたる、というわけではないのだがティアリナは誰もに対しても同じ態度ー優しいがどこか突き放した、四六時中仮面を被ったような笑顔で接する...まぁ笑顔も稀だが。

しかし貴族では珍しい、ましてや公爵家の令嬢としてはとてもめずらしい誰にも分け隔てない態度は性根が優しいゆえだとザラは信じている。


髪を梳かしながらザラは思いを巡らす。
(お嬢様はいつか心をひらいてくださる...こんなにお美しく気高いんだもの。高位貴族として色々思う所もおわりなんだわ.....幼い頃から苦労してこられたのだから心を閉ざされてしまうのも仕方ないわ...)




しかしザラは知らない。ティアリナが心を閉ざし続ける訳を.......。そしてザラが想像しえない壮絶な過去を持つことを...。

そして、
ティアリナが胸に秘める睡蓮の誓いを....

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