〜月下 睡蓮の誓い〜

ぽいぽい

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過去の記憶 2

前世の記憶 Ⅱ

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(3日後)

「皇女様!今日はいよいよ大舞踏会でわね!」


「きっとイシェアル卿ことアルト様の結婚は陛下もお認めになりますわ!」


白色が胸元から裾にむかってどんどん青、紺色になっていく衣装。銀糸で細い刺繍がなされたドレス。ドレスのスカートはふんわりと広がり肌触りはとても滑らかそうだ。大人っぽいデザインで胸元も背中もガッツリ空いていたが美しい彫刻のような皇女にはとてもよく似合っていた。 
髪の毛は編み込まれ結い上げられていた。金と真珠の髪飾りをつけてられている。
耳にも金と真珠の大きめの耳飾りをつける。


皇女の大切な日だといつもより気合いをいれて準備した侍女たちは口々に褒め称える。

「ほんとに美しいですわ!」

「まるで女神のようですわ!」


「ほんと?あなたたちにそう言われると安心するわ!私.....幸せだわ!」

そういって喜ぶ皇女


コンコン


皇女と侍女達が喋っている部屋の扉が叩かれた。


「イシュアル卿がお見えです。」

部屋の前の衛兵が告げる。


「入っていいわよ。」

皇女が答える。


「失礼します、皇女様。」

アルトが入ってきた。


「フフ.....どうアルト?私、綺麗かしら?」

皇女が笑いながら尋ねる。


騎士は一瞬目を開き、すぐにその目を細めて微笑んだ。まるで古代彫刻のような美しい笑みだった。

「はい.....とても。.........女神のごとく美しいですよ...皇女様.........。」


「皇女様はずっとイシュアル卿との結婚を心待ちにしておられますもの。」

「やはり恋は人を美しくさせますものね~まぁ皇女様はもとから美しいですけれども!」

侍女達が口々にいった。


「もうっ!.........やめてあなたたちったら!」

真っ赤になる皇女。

しかしその光景は微笑ましく幸せそうだった。




しかしここにいる誰も知らない。
侍女も衛兵も皇女でさえも.....。


この後、おこる悲劇を.........





アルトを除いて.........。




「さぁ、参りましょうか.....皇女様。」

アルトが侍女との話に盛り上がっている皇女に声をかける。


そして目を輝かせて皇女は応える。

「えぇ!」


そうして何よりも愛する騎士の手をとって大舞踏会の会場である大広間に出向いた。







パッパラパーーー

大きなラッパの音が鳴り響いた


「それでは!陛下の即位10年を祝して大舞踏会を始める!」

侍従の声が大広間に鳴り響いた。


いよいよ大舞踏会が始まった。


もちろん皇女もいる。


(よし、お父様がこられたらアルトとの結婚を願い出よう。)


皇女の顔は幸せな結婚を夢見て微笑んでいた。

その顔を見て周りのものがほぅ、とため息をついていることは皇女は分かっていない。ただ、傍にいる騎士を見つめて微笑んでいた。



パッパラパーーー

またラッパがなった。いよいよ皇女の父である皇帝が入場するのだ。

そしてまた侍従が告げる。

「皇帝陛下のおなーーーりーーー」


いよいよ皇帝がやってきた。

皇女と同じ長い銀髪を金の輪飾りでくくり、赤いビロードのマントと金や銀で刺繍された真っ黒の服を着てとても威厳がある姿だった。



そして大広間にいる者達が一斉に頭を垂れる。

「ご機嫌麗しゅう、皇帝陛下。神の御加護があらんことを!!」


「楽にせよ!」

皇帝がそういうといっきに全員が顔をあげた。



「それでは音楽を!」

皇帝の侍従が声高く告げる。



一斉に音楽が鳴った。


皇女は騎士の方を向いて
「アルト、私達も踊りましょう!」

「はい皇女様」
騎士は手を差し出す。



2人も皆が集まる広間の中央に出向いてワルツを踊り始めた。


軽快なステップを踏む2人。

まわりの者達もその美しい姿にうっとりと見とれている。



(私、こんなに幸せでいいのかしら?)

皇女は嬉しそうにステップを踏んでいた。

その喜びのあまり皇女は騎士の目が少し悲しそうなのに気づかなかった.........。
























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