風の届かない夜に

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からだがうごかない

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うごこうと思っても、
からだが すこしも うごかない。

目だけは あいているのに、
手も、足も、
わたしのものじゃないみたいだった。

心は なにかを感じている。
あたたかいのか、冷たいのか、
よくわからないけど、
たしかに なにかが ふれていた。

でも、それが だれだったのかは 見えていない。

わたしのまわりには、
夜の気配と、
うすい光と、
自分の呼吸だけがある。

声は 出ない。
さっきから なにも言えていない。
言おうとすると、
胸の奥が ざわついて、
すぐに 引き返してしまう。

ふれられた気がする。
けれど、ふれられていない気もする。

わたしの肌が まちがえて 感じただけなのか、
ほんとうに その手が あったのか。
どちらか わからないまま、
わたしのからだは ただ そこにある。

うごかない。
うごけない。
うごきたくない。

そのどれでもあるようで、
どれでもない。

だからいまも、
わたしは この夜のなかに とじこめられている。
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