あなたの声で、今日が始まる

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その声が、わたしを呼んだ

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……こんにちは」

画面の向こう、
最初のメッセージは、
それだけだった。

ふつうすぎて、
すぐに流してしまいそうになる。
でも、
他のどの言葉よりもまっすぐで、
変な裏もなくて、
それが逆に目を引いた。

 名前は──ミナト。

アイコンは風景写真だった。
顔も見えないし、
自己紹介も簡素。
でも、
なぜだかその一言が、
やさしく耳に残った。

わたしは数日間、
返信せずにいた。
スマホを持つ手が、
何度も迷った。
けれど、
ある夜──眠れずにベッドで転がっていたとき、
思わずこう打っていた。

「こんばんは。なんで声をかけてくれたんですか?」

すぐに返信がきた。

「なんとなく。でも、なんとなくじゃないかも」

意味があるようで、
ないようで。
けれどその言葉は、
わたしの“中”にすっと入り込んできた。

その日から、
少しずつ──毎日やりとりが始まった。

朝、
おはようの一言。
夜、
おやすみの一言。
たったそれだけなのに、
部屋の空気がやわらかくなった気がした。

不思議だった。

顔も知らない。
声も聞いたことがない。
でも、
画面越しの“ことば”が、
ちゃんと生きてる気がした。

「いつか、会ってみたいです」

そんなメッセージが届いたのは、
一週間後の夜だった。

心臓が、ふわっと跳ねた。

こわくて、
うれしくて、
どうしたらいいか分からなかった。
でも──

「うん、わたしも」

気がつけば、
指が返していた。

わたしは今、
ちゃんと“誰か”とつながってる。

それだけで、
息をするのが、
ちょっと楽になった。
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