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からだがわたしをおぼえている
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そのよる、
わたしは じぶんのからだが すこしだけちがうことに気づいた。
ふと、
指のあいだに ぬるい空気がのこっていた。
ふれたのか、ふれられたのか、
それとも なにかが すべりこんできたのか――
その感覚だけが からだに沈んでいた。
こころは、なにもおぼえていない。
でも、
皮膚のどこかが、
だれかを知っているような気がした。
名前はない。
声もない。
目を閉じると、
熱だけが かすかに呼吸の奥でふるえていた。
それは、こわいことではなかった。
でも、
やさしさでもなかった。
ただ、
わたしのなかに、
だれかがいた――
そう思った。
思いたかったのかもしれない。
ほんとうは、
わたし自身が わたしのことを 信じられなくなっていた。
そのよる、
わたしのからだが
はじめて「わたしではない何か」として
わたしにふれた。
それが 記憶だったのか、
出来事だったのか、
夢だったのか。
まだ、わからない。
けれどいまでも、
あのとき 感じたあたたかさだけが、
ゆっくりと皮膚のうらに ひろがっている。
わたしは じぶんのからだが すこしだけちがうことに気づいた。
ふと、
指のあいだに ぬるい空気がのこっていた。
ふれたのか、ふれられたのか、
それとも なにかが すべりこんできたのか――
その感覚だけが からだに沈んでいた。
こころは、なにもおぼえていない。
でも、
皮膚のどこかが、
だれかを知っているような気がした。
名前はない。
声もない。
目を閉じると、
熱だけが かすかに呼吸の奥でふるえていた。
それは、こわいことではなかった。
でも、
やさしさでもなかった。
ただ、
わたしのなかに、
だれかがいた――
そう思った。
思いたかったのかもしれない。
ほんとうは、
わたし自身が わたしのことを 信じられなくなっていた。
そのよる、
わたしのからだが
はじめて「わたしではない何か」として
わたしにふれた。
それが 記憶だったのか、
出来事だったのか、
夢だったのか。
まだ、わからない。
けれどいまでも、
あのとき 感じたあたたかさだけが、
ゆっくりと皮膚のうらに ひろがっている。
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