あわいの隣

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見えないほうへ

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椅子が、かすかに動く。
その音に、ふりかえるひとはいない。

窓のほうへ、手をのばすひとがいる。
なにかをつかもうとしたのではなく、
ただ、ひかりの向こうをたしかめたかったよう。

すぐそばに、ひとが立っている。
けれど、まなざしはどこにもゆかない。
そこに在ることを、知らないふりのまま過ぎてゆく。

日の光が、床におちる。
影がふたつ、くっきりと重なっている。
もうひとつの影だけが、ひかりの中でとけている。

机のはしに、水の入ったコップがある。
半分より、すこしだけ下まで減っている。
ゆらいだ水面が、かすかにふるえて、
そのふるえは、なにかを思い出させるよう。

そこにいるのに、名前はよばれない。
姿が見えていても、気づかれないままでいる。

誰かが、見ようとしない。
けれど、そのことすら話されない。
まるで、最初からそのひとが、
そこにいなかったかのように。

窓にうつる影は、ひとつ足りない。
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