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第一章 ふれてくる手は、やさしい
ためらわず、ふれてしまう
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彼女の指が、わたしの胸のあたりに落ち着いている。
眠っているのか、起きているのかは分からない。
けれど、その手だけが、呼吸といっしょにゆっくりと動いている。
ふと、視線がそこに吸い寄せられて、わたしは手を伸ばしてしまう。
触れるというよりも、指の先を、そっと沿わせていくように。
重ならないように。壊さないように。
それでも、ふれている。
それはもう、変えられない。
彼女は、うごかない。
だけど、ほんのわずかにまばたきの速さが変わったように見える。
気づいたのか、それとも、気づいていないふりをしているのか。
彼女がなにを感じているのかは分からない。
けれど、わたしは、いまこの沈黙にすこしだけ救われている。
まだ言葉がないから、まだ拒まれていないから、
いまなら、すこしだけ近づいてもいい気がする。
わたしは、彼女の指先を包むようにして、もう一度そっとなぞる。
今度は、触れていることを、たしかに感じながら。
眠っているのか、起きているのかは分からない。
けれど、その手だけが、呼吸といっしょにゆっくりと動いている。
ふと、視線がそこに吸い寄せられて、わたしは手を伸ばしてしまう。
触れるというよりも、指の先を、そっと沿わせていくように。
重ならないように。壊さないように。
それでも、ふれている。
それはもう、変えられない。
彼女は、うごかない。
だけど、ほんのわずかにまばたきの速さが変わったように見える。
気づいたのか、それとも、気づいていないふりをしているのか。
彼女がなにを感じているのかは分からない。
けれど、わたしは、いまこの沈黙にすこしだけ救われている。
まだ言葉がないから、まだ拒まれていないから、
いまなら、すこしだけ近づいてもいい気がする。
わたしは、彼女の指先を包むようにして、もう一度そっとなぞる。
今度は、触れていることを、たしかに感じながら。
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