ためらわない彼と、拒めないわたし

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第一章 ふれてくる手は、やさしい

わたしに向けられるやさしさが、重たい

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わたしの指に、べつの熱がふれる。
ゆっくりと、輪郭をなぞるような動き。
押しつけてくるわけじゃない。
引っぱろうともしない。
ただ、そこに“ある”だけの手。

それなのに、わたしの呼吸が、すこしだけ浅くなる。
息が詰まったわけじゃない。
怖いわけでもない。
でも、からだのどこかで、「これは、やさしさだ」って理解してしまった。

やさしさは、うれしい。
だけど、こうしてふれてくる手がやさしいのは、
わたしに“答える権利”があるってことなのかもしれないと思うと、
それだけで、胸の奥がきゅっと固くなる。

たぶん、彼はためらっていない。
わたしをこわがらせないように、言葉も出さずに、静かにしてくれている。
でもその静けさが、わたしの中では“選ばせる空気”になっていく。

わたしは、動かない。
けれど、拒んだわけでも、うなずいたわけでもない。
ただ、彼の手がそこにあったということだけが、わたしのなかに残っていく。
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