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お断りします
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「ぼくと婚約してほしい」
「絶対にダメです」
わたくしは、愛する王太子からのプロポーズを断りました。
絶対に婚約することはできません。
なぜなら、思い知ったから。
運命の力というものを。
わたくしは、恋のライバルの伯爵令嬢から呪いをかけられています。
婚約すると婚約破棄され、死んでリセットされてしまう呪いです。
どんなに愛しあっていても理不尽な罪で婚約破棄されてしまいます。
ひとりになったわたくしは、事故や事件で命を落としーー
そして、婚約するまえまで、時間を逆行するのです。
これまで、何度も、何十度も繰り返してきました。
馬車の事故だったり落雷だったり、人間トラブルだったり。
うんざりするほど命を落としました。
復活してまず考えることは、「次は何を試そう」でした。
わたくしはあきらめないと決めていたから。
でも、呪いは強力でした。
もはや試すことがなくなるほど、逆行を繰り返しています。
なぜ逆行までを含めた呪いなのか最初はふしぎでした。
わたくしがいなくなったほうが呪いをかけた彼女にとっては都合がいいだろうに、どうして生き返るのだろうと。
おそらく彼女は、王太子が自分以外と婚約したという事実さえ許さない考えなのです。
あきらめたわたくしに、婚約を拒否させるのが目的。
そうすれば、王太子の初めての婚約相手は彼女になると思ったのでしょう。
ただ、彼女には誤算がありました。
人を呪わば穴ふたつと言いますが、強力すぎる呪いの代償があまりに大きかったことです。
すでに彼女の家は没落し、彼女自身がこの世にいません。
それほどの代償を必要とする呪いだったということです。
とんでもない置き土産……。
もう誰の得にもなりはしないというのに、わたくしが婚約したら死ぬという運命だけが残されてしまいました。
「どうして婚約を拒否するんだ? ぼくときみは愛しあっているはず」
王太子が、わたくしの拒絶に首を傾げます。
呪いのことを説明したいのですが、説明しようとすると喉に何かが詰まったようになり声が出なくなることを、すでにわたくしは知っています。
説明できないのも呪いに含まれているということです。
なのでわたくしは、強固に言い張るしかありません。
「愛しているから婚約はできません。お願いです。わかってください」
涙ながらに懇願します。
愛しているから、わかってほしい。
この気持ちを感じ取ってほしい……。
すると彼は、
「……わかった。事情はわからないが、きみの真剣さは伝わった。そのとおりにしよう。婚約は、なしだ」
「ありがとう」
数日後ーー
わたくしは彼と結婚式を挙げました。
婚約せず、唐突に。
彼はすべてを秘密裏に進めてくれました。
式の準備をする使用人たちも、結婚することを想定した訓練だと伝えられていました。
「ぼくたちふたりはここに結婚を誓った」
そう宣言した彼の横で微笑むわたくしを見たときに、国民も、王族も、このサプライズが本物の結婚式だということを理解したことでしょう。
結婚を約束している状態、つまり婚約期間は、誰の認識の中にも存在しませんでした。
婚約していないので婚約破棄はどうあがいても不可能です。
そして、わたくしの胸の鼓動は、止まることなく高鳴りつづけています。
婚約を回避することで、呪いを回避できたのです。
「わたくしの考えをわかってくださって本当に嬉しい。いくら感謝してもしきれません」
「秘密にするのはすこし楽しかったよ。それに、きみの瞳を見ていたら、ぼくに対する愛情を疑うことができなかった。なんだろうね、こうなることがずっと決められていたような、そんな感じがしたんだ」
「わたくしもです」
わたくしは思い知っていました。
どんな強力な呪いでも変えることができない、運命の力というものを。
「絶対にダメです」
わたくしは、愛する王太子からのプロポーズを断りました。
絶対に婚約することはできません。
なぜなら、思い知ったから。
運命の力というものを。
わたくしは、恋のライバルの伯爵令嬢から呪いをかけられています。
婚約すると婚約破棄され、死んでリセットされてしまう呪いです。
どんなに愛しあっていても理不尽な罪で婚約破棄されてしまいます。
ひとりになったわたくしは、事故や事件で命を落としーー
そして、婚約するまえまで、時間を逆行するのです。
これまで、何度も、何十度も繰り返してきました。
馬車の事故だったり落雷だったり、人間トラブルだったり。
うんざりするほど命を落としました。
復活してまず考えることは、「次は何を試そう」でした。
わたくしはあきらめないと決めていたから。
でも、呪いは強力でした。
もはや試すことがなくなるほど、逆行を繰り返しています。
なぜ逆行までを含めた呪いなのか最初はふしぎでした。
わたくしがいなくなったほうが呪いをかけた彼女にとっては都合がいいだろうに、どうして生き返るのだろうと。
おそらく彼女は、王太子が自分以外と婚約したという事実さえ許さない考えなのです。
あきらめたわたくしに、婚約を拒否させるのが目的。
そうすれば、王太子の初めての婚約相手は彼女になると思ったのでしょう。
ただ、彼女には誤算がありました。
人を呪わば穴ふたつと言いますが、強力すぎる呪いの代償があまりに大きかったことです。
すでに彼女の家は没落し、彼女自身がこの世にいません。
それほどの代償を必要とする呪いだったということです。
とんでもない置き土産……。
もう誰の得にもなりはしないというのに、わたくしが婚約したら死ぬという運命だけが残されてしまいました。
「どうして婚約を拒否するんだ? ぼくときみは愛しあっているはず」
王太子が、わたくしの拒絶に首を傾げます。
呪いのことを説明したいのですが、説明しようとすると喉に何かが詰まったようになり声が出なくなることを、すでにわたくしは知っています。
説明できないのも呪いに含まれているということです。
なのでわたくしは、強固に言い張るしかありません。
「愛しているから婚約はできません。お願いです。わかってください」
涙ながらに懇願します。
愛しているから、わかってほしい。
この気持ちを感じ取ってほしい……。
すると彼は、
「……わかった。事情はわからないが、きみの真剣さは伝わった。そのとおりにしよう。婚約は、なしだ」
「ありがとう」
数日後ーー
わたくしは彼と結婚式を挙げました。
婚約せず、唐突に。
彼はすべてを秘密裏に進めてくれました。
式の準備をする使用人たちも、結婚することを想定した訓練だと伝えられていました。
「ぼくたちふたりはここに結婚を誓った」
そう宣言した彼の横で微笑むわたくしを見たときに、国民も、王族も、このサプライズが本物の結婚式だということを理解したことでしょう。
結婚を約束している状態、つまり婚約期間は、誰の認識の中にも存在しませんでした。
婚約していないので婚約破棄はどうあがいても不可能です。
そして、わたくしの胸の鼓動は、止まることなく高鳴りつづけています。
婚約を回避することで、呪いを回避できたのです。
「わたくしの考えをわかってくださって本当に嬉しい。いくら感謝してもしきれません」
「秘密にするのはすこし楽しかったよ。それに、きみの瞳を見ていたら、ぼくに対する愛情を疑うことができなかった。なんだろうね、こうなることがずっと決められていたような、そんな感じがしたんだ」
「わたくしもです」
わたくしは思い知っていました。
どんな強力な呪いでも変えることができない、運命の力というものを。
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