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ちょうどいいのがいいところ
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わが国の王には、18人の息子がいます。
娘も含めると、子どもは30人以上。
一夫多妻の国ではないのですが、死別やら離婚で王妃様が何回も変わったので、子どもたちの母親は同じではありません。
権力争いで殺されたり、冤罪で追放されたり――
この王室は、そういったいざこざがとにかく多いのです。
結婚してからでもそうなのですから、婚約破棄なんてことは日常茶飯事と言っても過言ではありません。
なので、有力貴族の令嬢であるわたしは、できるだけ無難な彼を、婚約者として選ぶことにしました。
「ねえあなた、もう一度聞かせて。あなたの王位継承権は何番めなの?」
わたしは夜伽のあとに、念のため確認します。
「ぼくは11番めさ。兄貴たちが10人いなくならなきゃ順番なんて回ってこない。きみが王妃になりたいなら、ぼくとこうやって抱きあってる場合じゃないよ」
第11王子の彼――わたしの婚約者が笑って答えてくれました。
わたしも笑い返します。
「ふふ、大丈夫。わたしは王妃になんてなりたくないわ。出る杭は打たれるんだもの。ただ、王家にお嫁にいかないとお父様が悲しむから、どうしても誰かとは婚約しなきゃいけなくて……」
「それでぼくってわけか。正直だね、きみ。まあ、可愛いくて賢い子は好きだからいいけど。……でも、なんで11王子? それこそ18王子のほうが安全じゃない?」
「ううん、それが全然なの――」
わたしは説明しました。
王位継承の順番が遅すぎる王子たちには、ろくな性格がいないということを。
第18王子を筆頭に、下位の王子たちはみな、王家に属する理由はお金しかないとでも言わんばかりに、放蕩のかぎりを尽くしています。
女なんてとっかえひっかえ。
毎晩のように違う相手に結婚をささやき、翌朝にはポイと捨てて他へ行ってしまうのが常でした。
王になる可能性が薄すぎると、そうなってしまうのです。
上位には身の危険がつきまとい、下位には捨てられる不安がつきまとう。
「それで、『ちょうどいい』のがぼくってことだね。普通に生きてるだけのつもりだったけど、それできみのような子と結婚できるなら、悪くないな」
正直に話してよかった。
わたしは心から安堵して、彼に抱きつきました。
でも、そのとき、
「あ、そういえば……。母上が、別れた王と最近また仲がいいらしくって。もしかしたら再婚するかもしれないって教えてくれたんだ」
「えっ、その場合なにか変わる?」
「母上が追放された理由って、法律を変えて現王妃の息子に王位継承権を与えようとしたからだったんだよね。だからもし、それが許されて再婚するなら、母上にとっての長男であるぼくが――」
わたしは、ぱっと身を離しました。
そんな政争に巻き込まれれば、間違いなく彼と婚約しているわたしの身が危うくなります。
母親のほうの調査も必要だったとは……。
「ごめんなさい、あなたとは婚約破棄させて。歴代の王妃様もリサーチして、総合的に判断することにする」
「いいけど」
これから忙しくなります。
謀殺された過去の王妃様が本当に亡くなったのか、追放された王妃様が本当にすべて冤罪だったのか、人を雇って調査しなければなりません。
必死に方針を考えながら部屋を出て行くわたしの耳に、彼のつぶやきは聞こえもしませんでした。
「あんまりこそこそ動いてると、それこそ消されると思うけどな……」
娘も含めると、子どもは30人以上。
一夫多妻の国ではないのですが、死別やら離婚で王妃様が何回も変わったので、子どもたちの母親は同じではありません。
権力争いで殺されたり、冤罪で追放されたり――
この王室は、そういったいざこざがとにかく多いのです。
結婚してからでもそうなのですから、婚約破棄なんてことは日常茶飯事と言っても過言ではありません。
なので、有力貴族の令嬢であるわたしは、できるだけ無難な彼を、婚約者として選ぶことにしました。
「ねえあなた、もう一度聞かせて。あなたの王位継承権は何番めなの?」
わたしは夜伽のあとに、念のため確認します。
「ぼくは11番めさ。兄貴たちが10人いなくならなきゃ順番なんて回ってこない。きみが王妃になりたいなら、ぼくとこうやって抱きあってる場合じゃないよ」
第11王子の彼――わたしの婚約者が笑って答えてくれました。
わたしも笑い返します。
「ふふ、大丈夫。わたしは王妃になんてなりたくないわ。出る杭は打たれるんだもの。ただ、王家にお嫁にいかないとお父様が悲しむから、どうしても誰かとは婚約しなきゃいけなくて……」
「それでぼくってわけか。正直だね、きみ。まあ、可愛いくて賢い子は好きだからいいけど。……でも、なんで11王子? それこそ18王子のほうが安全じゃない?」
「ううん、それが全然なの――」
わたしは説明しました。
王位継承の順番が遅すぎる王子たちには、ろくな性格がいないということを。
第18王子を筆頭に、下位の王子たちはみな、王家に属する理由はお金しかないとでも言わんばかりに、放蕩のかぎりを尽くしています。
女なんてとっかえひっかえ。
毎晩のように違う相手に結婚をささやき、翌朝にはポイと捨てて他へ行ってしまうのが常でした。
王になる可能性が薄すぎると、そうなってしまうのです。
上位には身の危険がつきまとい、下位には捨てられる不安がつきまとう。
「それで、『ちょうどいい』のがぼくってことだね。普通に生きてるだけのつもりだったけど、それできみのような子と結婚できるなら、悪くないな」
正直に話してよかった。
わたしは心から安堵して、彼に抱きつきました。
でも、そのとき、
「あ、そういえば……。母上が、別れた王と最近また仲がいいらしくって。もしかしたら再婚するかもしれないって教えてくれたんだ」
「えっ、その場合なにか変わる?」
「母上が追放された理由って、法律を変えて現王妃の息子に王位継承権を与えようとしたからだったんだよね。だからもし、それが許されて再婚するなら、母上にとっての長男であるぼくが――」
わたしは、ぱっと身を離しました。
そんな政争に巻き込まれれば、間違いなく彼と婚約しているわたしの身が危うくなります。
母親のほうの調査も必要だったとは……。
「ごめんなさい、あなたとは婚約破棄させて。歴代の王妃様もリサーチして、総合的に判断することにする」
「いいけど」
これから忙しくなります。
謀殺された過去の王妃様が本当に亡くなったのか、追放された王妃様が本当にすべて冤罪だったのか、人を雇って調査しなければなりません。
必死に方針を考えながら部屋を出て行くわたしの耳に、彼のつぶやきは聞こえもしませんでした。
「あんまりこそこそ動いてると、それこそ消されると思うけどな……」
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