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#8 Nothing compares 2 U 〜あなたと比べられるものなど何もないなんて一度は言ってみたかった(4)
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ドアに出会ってから、貴明は少しずつ変わり始めている。人嫌いがすぐに治るわけではなさそうだが、今までは心の奥底に潜んでいた優しさが、澄香以外の人間にも向けられるようになっている。紗英やすみかの心痛を、自分の痛みとして感じられるようになりつつあった。
「成長してるな貴明」
「何だよ、親みたいに。いや、親というよりひいばあちゃ…」
「あ”あ“ん!?褒めて損した!」
梨杏はひらりと宙を舞い、座っている貴明に首四の字固めをかける。
「俺…折れ、る…わかったごめん」
「ふん、言葉には気をつけるこったな。お前の悪い癖だ」
「悪かったよ。代わりに明日からこの部屋使っていいよ。俺と澄香は来週まで実家に行くからさ。どうせ鍵なくても入れるんだろ?」
「そうか助かる。エクスペリエンストの家を渡り歩くのも疲れてなあ」
「そりゃまあ年齢からして体力的には…」
「全然反省してないな…」
と言って、梨杏はボキボキと指を鳴らす。
「だーっ、わかったごめんて」
「肉体は借り物だから大して疲れないが、メンタルはやられるんだよ私だって。お前みたいにすんなり受け入れる鈍感ばかりでもないんでな」
「その図々しさでか?ナイわー」
言い終わらないうちに、猪木仕込みとも思われるパーフェクトな卍型めが決まる。だが梨杏の低身長で無理矢理かけるものだから、貴明は不自然な形に体が折れ曲がり、リアルに死線を意識する羽目になった。
「阿呆かー!死!死のドア!長く曲がりくねった道の先に見える…」
「よし、貴明は卍型めで死ぬ、と。澄香に報告ね」
「ひょっとしてお前のプロレス技って」
「澄香師匠直伝だよ。あいつの身体能力はエクセレントだな。体育会を3つ掛け持ちしてるらしいが納得だわ」
「ふふふ、澄香…明日の電車、窓側禁止だ。覚悟しとけ、ふふふふ…」
「お前たちは本当に仲がいいねえ、ははははー」
「許さんって話をしてるんだよ!」
元日からベッドを梨杏に取られ、貴明はソファに横になる。でも今さらだが梨杏がいてよかった。バカ話でもしてなきゃ、すみかが気がかりでおかしくなっていたかもしれない。
「すみ…おれがまも、る…」
貴明の寝言に、切ない表情をみせる梨杏であった。
翌1月2日夕方。必要以上に元気な様子で澄香がやってきた。巨大なボストンバッグとスーツケースが計3個も見える。
「やあやあお兄ちゃん!澄香はとってもよいお正月を過ごしています」
「おま、夜逃げか?これ電車に乗せていいものか?」
「大丈夫。2人で4つ、つまり1人2個ならいけるって」
「俺が1個って決めつけてんな」「違うの?」「うっ」「しかもどうせ紙袋でしょ、そんなん0.3個分だよ」「ううっ」
梨杏が茶々を入れにやってくる。
「相変わらずテンポいいねお前ら」
「梨杏さーん!」
澄香は、嬉しくてたまらないという体で梨杏に抱きつく。
「澄香、何かあったの?すごい勢いね」
「うん、初詣でお兄ちゃんの男気を見せてもらいましたから。ぐへへ」
「なるほど。ぐへ、」
「ぐへへへへ」
こういう余計なところ、2人はピタッと息が合う。
「何をっ…いいから少し休んで、晩飯はおせちを全部片すぞ。スーパーのだけど」
「はーい」
「ところで俺もうっかり馴染みかけてるんだけどさ、この部屋に梨杏が普通にいるのは、澄香的には問題ないの?」
「なんで?」
「だってこいつも一応紗英や理恵と同じ同級生…で、一応女だし、普通はさあ」
嘘をつき通すのは面倒くさいと貴明は毎度参っている。梨杏め。
「あーそゆことなら大丈夫。梨杏さんは別格だから。男・女・梨杏みたいな?なんかさー、他人という気がしないというかさ、もはや姉?」
「妹の間違いだろ」
「いやいや、人は見かけによりません。梨杏さんは私やお兄ちゃんなんかよりも、不思議に大人の魅力を感じるんだよねー」
ここで梨杏が大喜び。
「わかるか澄香!のーんとボケ倒してる兄貴と違って賢いなお前は。可愛い奴ー」
澄香を膝枕してぐりぐりと頭を撫でる。澄香はまるで上機嫌な猫のようだ。
「えへへー、梨杏さーん」
などと騒いだ後、食卓を囲んだ3人はささやかな正月気分を味わう。おせちは出来合いだが雑煮は澄香の手作りだ。同級生のついでに梨杏はハーフで外国育ちという嘘の上塗りをしているので、こうした和食は格好のネタになる。
「これは何だ?パリパリして美味いけど意味がわからん」
「数の子だよ」
「これは?小さいのに堅くて意味わからん。味わい深いが」
「田作だよ」
「これは?めそめそしてるやつ。こいつが一番意味わからん」
「だーっ!いいから静かに食え!てか料理でめそめそってどんな表現だよ。意味わからんどころか、おせちは全部意味があんだよ」
「もう、お兄ちゃんは新年も相変わらず驚異的に心が狭いなあ。ほら梨杏さんこれ美味しいよ。栗きんとんだよ」
「これまた意味わからんペースト状…う、うまっ!甘さは美味さだね、澄香!」
「ほらお雑煮も。私が作ったんだけどさ。お餅溶けないうちに食べてね」
「ああ、これはいいわー。結局澄香の料理が一番美味しいのよね」
「もう梨杏さん、正直なんだからー」
「ま、それは俺も否定しない…」
「お兄ちゃん!そこ大事だからもっと大きな声で聞き取りやすく!」
最後まで大騒ぎで食事を終え、明日は早いので寝ようということになった。パジャマ姿でじゃれ合う2人は微笑ましいが、梨杏の素性を考えると、どうしたもんかな?
翌1月3日7時。
「じゃ梨杏、留守番頼むよ。楽器に触って壊さない限り、部屋は好きに使っていいから」
「楽器しかない部屋で楽器に触らなかったら、何に触ればいいのよ」
「梨杏さんにお土産買ってくるね。笹団子がいいかなあ」
「本当!でも笹って美味しいの?パンダ的な?」
「いや笹の団子じゃないからな。そんなもん俺も食いたくないし、名物なわけがねえ」
部屋を出る2人。4つの大荷物はもちろん全部貴明が持つハメになる。それが元で息の合った口喧嘩を繰り広げながらも上野駅に着き、新幹線に乗り込んだ。
「そうだお前、梨杏にプロレス技教えてるらしいな。おかげで俺は体中の関節がルーズになってるんだぞ。どうしてくれる」
「梨杏さんスジがいいんだよー。すぐ覚えちゃう」
「んなこたいいの!今日は罰として、窓側には俺が座ります。お前は通路側に…」
澄香は反論するより先に、捨てられた仔犬のような涙目を貴明に向け、無言で圧をかける。
「おわっ!わかったわかった、ほら窓側行けよ、ったくしょうがねえな」
「わーい定位置定位置ー。おやつおやつー。ここで早くもポッキー登場ぅ!」
この妹には一生勝てねえなと、楽しげで愛らしい横顔を見ながら貴明は改めて思った。
「成長してるな貴明」
「何だよ、親みたいに。いや、親というよりひいばあちゃ…」
「あ”あ“ん!?褒めて損した!」
梨杏はひらりと宙を舞い、座っている貴明に首四の字固めをかける。
「俺…折れ、る…わかったごめん」
「ふん、言葉には気をつけるこったな。お前の悪い癖だ」
「悪かったよ。代わりに明日からこの部屋使っていいよ。俺と澄香は来週まで実家に行くからさ。どうせ鍵なくても入れるんだろ?」
「そうか助かる。エクスペリエンストの家を渡り歩くのも疲れてなあ」
「そりゃまあ年齢からして体力的には…」
「全然反省してないな…」
と言って、梨杏はボキボキと指を鳴らす。
「だーっ、わかったごめんて」
「肉体は借り物だから大して疲れないが、メンタルはやられるんだよ私だって。お前みたいにすんなり受け入れる鈍感ばかりでもないんでな」
「その図々しさでか?ナイわー」
言い終わらないうちに、猪木仕込みとも思われるパーフェクトな卍型めが決まる。だが梨杏の低身長で無理矢理かけるものだから、貴明は不自然な形に体が折れ曲がり、リアルに死線を意識する羽目になった。
「阿呆かー!死!死のドア!長く曲がりくねった道の先に見える…」
「よし、貴明は卍型めで死ぬ、と。澄香に報告ね」
「ひょっとしてお前のプロレス技って」
「澄香師匠直伝だよ。あいつの身体能力はエクセレントだな。体育会を3つ掛け持ちしてるらしいが納得だわ」
「ふふふ、澄香…明日の電車、窓側禁止だ。覚悟しとけ、ふふふふ…」
「お前たちは本当に仲がいいねえ、ははははー」
「許さんって話をしてるんだよ!」
元日からベッドを梨杏に取られ、貴明はソファに横になる。でも今さらだが梨杏がいてよかった。バカ話でもしてなきゃ、すみかが気がかりでおかしくなっていたかもしれない。
「すみ…おれがまも、る…」
貴明の寝言に、切ない表情をみせる梨杏であった。
翌1月2日夕方。必要以上に元気な様子で澄香がやってきた。巨大なボストンバッグとスーツケースが計3個も見える。
「やあやあお兄ちゃん!澄香はとってもよいお正月を過ごしています」
「おま、夜逃げか?これ電車に乗せていいものか?」
「大丈夫。2人で4つ、つまり1人2個ならいけるって」
「俺が1個って決めつけてんな」「違うの?」「うっ」「しかもどうせ紙袋でしょ、そんなん0.3個分だよ」「ううっ」
梨杏が茶々を入れにやってくる。
「相変わらずテンポいいねお前ら」
「梨杏さーん!」
澄香は、嬉しくてたまらないという体で梨杏に抱きつく。
「澄香、何かあったの?すごい勢いね」
「うん、初詣でお兄ちゃんの男気を見せてもらいましたから。ぐへへ」
「なるほど。ぐへ、」
「ぐへへへへ」
こういう余計なところ、2人はピタッと息が合う。
「何をっ…いいから少し休んで、晩飯はおせちを全部片すぞ。スーパーのだけど」
「はーい」
「ところで俺もうっかり馴染みかけてるんだけどさ、この部屋に梨杏が普通にいるのは、澄香的には問題ないの?」
「なんで?」
「だってこいつも一応紗英や理恵と同じ同級生…で、一応女だし、普通はさあ」
嘘をつき通すのは面倒くさいと貴明は毎度参っている。梨杏め。
「あーそゆことなら大丈夫。梨杏さんは別格だから。男・女・梨杏みたいな?なんかさー、他人という気がしないというかさ、もはや姉?」
「妹の間違いだろ」
「いやいや、人は見かけによりません。梨杏さんは私やお兄ちゃんなんかよりも、不思議に大人の魅力を感じるんだよねー」
ここで梨杏が大喜び。
「わかるか澄香!のーんとボケ倒してる兄貴と違って賢いなお前は。可愛い奴ー」
澄香を膝枕してぐりぐりと頭を撫でる。澄香はまるで上機嫌な猫のようだ。
「えへへー、梨杏さーん」
などと騒いだ後、食卓を囲んだ3人はささやかな正月気分を味わう。おせちは出来合いだが雑煮は澄香の手作りだ。同級生のついでに梨杏はハーフで外国育ちという嘘の上塗りをしているので、こうした和食は格好のネタになる。
「これは何だ?パリパリして美味いけど意味がわからん」
「数の子だよ」
「これは?小さいのに堅くて意味わからん。味わい深いが」
「田作だよ」
「これは?めそめそしてるやつ。こいつが一番意味わからん」
「だーっ!いいから静かに食え!てか料理でめそめそってどんな表現だよ。意味わからんどころか、おせちは全部意味があんだよ」
「もう、お兄ちゃんは新年も相変わらず驚異的に心が狭いなあ。ほら梨杏さんこれ美味しいよ。栗きんとんだよ」
「これまた意味わからんペースト状…う、うまっ!甘さは美味さだね、澄香!」
「ほらお雑煮も。私が作ったんだけどさ。お餅溶けないうちに食べてね」
「ああ、これはいいわー。結局澄香の料理が一番美味しいのよね」
「もう梨杏さん、正直なんだからー」
「ま、それは俺も否定しない…」
「お兄ちゃん!そこ大事だからもっと大きな声で聞き取りやすく!」
最後まで大騒ぎで食事を終え、明日は早いので寝ようということになった。パジャマ姿でじゃれ合う2人は微笑ましいが、梨杏の素性を考えると、どうしたもんかな?
翌1月3日7時。
「じゃ梨杏、留守番頼むよ。楽器に触って壊さない限り、部屋は好きに使っていいから」
「楽器しかない部屋で楽器に触らなかったら、何に触ればいいのよ」
「梨杏さんにお土産買ってくるね。笹団子がいいかなあ」
「本当!でも笹って美味しいの?パンダ的な?」
「いや笹の団子じゃないからな。そんなもん俺も食いたくないし、名物なわけがねえ」
部屋を出る2人。4つの大荷物はもちろん全部貴明が持つハメになる。それが元で息の合った口喧嘩を繰り広げながらも上野駅に着き、新幹線に乗り込んだ。
「そうだお前、梨杏にプロレス技教えてるらしいな。おかげで俺は体中の関節がルーズになってるんだぞ。どうしてくれる」
「梨杏さんスジがいいんだよー。すぐ覚えちゃう」
「んなこたいいの!今日は罰として、窓側には俺が座ります。お前は通路側に…」
澄香は反論するより先に、捨てられた仔犬のような涙目を貴明に向け、無言で圧をかける。
「おわっ!わかったわかった、ほら窓側行けよ、ったくしょうがねえな」
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