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#11 Piece of my heart 〜心のかけらを粉々に飛び散らせるのは避けねばならなかった(2)
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「大丈夫か、具合悪くないか」
「もーお兄ちゃん、病人扱いしないでよ、澄香は大丈夫だよ」
「だってお前…」
「大丈夫だって!ほらこの通り」
と言って、澄香は貴明の首に巻きつくように抱きついてくる。体温。匂い。吐息。柔らかさ。残酷な真実を知る前と変わらない、ずっと感じていたい温もりがある。ここで梨杏が珍しくも申し訳なさそうに、澄香に真顔で話しかける。
「澄香、私の側からはどう言っていいのか…」
「いいの。梨杏さんは、ちゅうかんかんかんりよく的な立場で板挟みなんでしょ」
「慣れない言葉を無理矢理使うな妹よ。それよりお前、梨杏が何者か知ってたのか」
「神の使いだよね。異常な存在の私を見守ってくれてた。それがわかったのはつい最近だけど、こんな人がそばにいてくれて、澄香は嬉しいです」
「澄香…ほんとに何でこんないい娘が…」
「2人とも心配しすぎー。でも、たまに優しいのもいいですねー」
と言ってペロッと舌を出す。ああそうか、確かにふとした時、おどけた時の表情はすみかと同じだ。瞳の色も肌の色もスタイルも声も少しずつ違うが、2人は同一人物だ。
「学校始まるまでゆっくり休もう。俺も疲れたしな」
だが懸念した通り、この日から澄香の調子は少しずつ悪くなっていった。高熱などわかりやすい症状はなかったが、体調というよりは心の問題であるのは明白だ。生命の光が弱くなるような、嫌な感覚に覆われ始めていた。
翌日。貴明はすみかに会うためアザーサイドに来た。この頃になると貴明は、会いたい対象がいる場所には簡単にドアを出現させられるようになっていた。パチモンなりに本家のどこ○もドアの機能性に近付いてきたともいえる。
「貴明さん。来てくれると思ってました」
落ち合ったのはクリスマスの思い出深い0階通り。澄香は自らの存在の儚さを自覚したことで急激に脆くなってきたが、すみかもあまり顔色が良くないように見える。
「澄香が調子悪いから、すみかちゃんも心配になってさ。大丈夫かい」
「私は平気。でも澄香の生命力が弱くなってきたのは私も感じています。顔も知らないのに、意識はつながっているんです」
「今後どうすればいいのかな。ごめん、無理なこと聞いてるね」
「ううん、全部私のせいだもの。澄香と貴明さんを悲しませることは絶対にしない。どうすればいいかはまだわからないけど…」
「ありがとう。もう一つ、これだけは言っておきたいんだ」
「はい?」
「俺はね、何があってもすみかちゃんが大好きだ。それだけは忘れないでほしい。だから、変な考えを起こさないで」
「貴明さん…」
すみかは涙を堪えて答える。
「今私が弱気になったり投げ出したりしたら、きっと澄香に悪影響がある。だから私もあなたと澄香を強く想い続けます。例え…」
次の言葉をためらい、ぎゅっと唇を噛む。
「例え、私や澄香にとって辛い結果になっても…」
ここまで言うとさすがに堪えきれず、涙が一粒流れる。貴明はその透明な涙をそっと拭い、手を重ねる。
「そう言ってくれると思った。2人が強い気持ちを持ってくれれば絶対に解決できる。そのためなら俺は何でもするから」
「わかりました。私も貴明さんみたいに、わがままを貫き通しますね!」
「うわわ、だんだん口悪くなってきた?俺の悪影響か…やっちまったかなあ」
「うふふ、人は似た者に惹かれると言いますからね」
無理に笑顔を作りつつ、声は震えている。贖罪の意識に揺れているのか。この娘を責めるなんてできるはずがない。第一そんなことをしたら、澄香に烈火の如く怒られるのは明白だ。
店を出る時、どちらからともなく手を繋いで歩く。互いの掌を強く握ったまま自動ドアを踏むと、白い光の中に貴明だけが消えていった。残されたすみかは唇を噛んだままうつむいていたが、その瞳には涙とともに、強い決意の光が宿っていた。
翌日、1月13日。澄香は得意の料理をする元気さえ失われていた。顔色も悪いのに「大丈夫だよ」と強がる笑顔が痛々しく、貴明はあえて体調には触れないようにしていた。
「そういえばさ、こないだ阿寒湖で一緒に遊んだって話をしたじゃん」
「そうだね、私が泣いてたとかさ。なんで私が湖で泣くのよ、もう」
「あれはさ、ひょっとしたら『未来の記憶』なのかなと思ってるんだ。鮮明なヴィジョではないけど、澄香が雪の上で泣いてるんだよ。最近では夢に出てくる」
「わー/危ない人が/いるー」
「なあ梨杏、どう思う?」
梨杏も澄香が気がかりで、毎日部屋に来ていた。
「また面倒くさそうなことを言い出したね」
「いや、エクスペリエンストの能力に、未来の記憶とか予知能力はないの?」
「うーん…すみかや恵美子が、お前が来る時はわかると言うのは、予知的な感覚に近いかもしれないね」
「だろ。俺さ、実は梨杏と初めて会うより前に、声や言葉をハッキリと聞いていたんだよね」
「ななんと!お前もなかなか底知れない能力の持ち主だな」
「俺の中の澄香の記憶は、確かに不鮮明で断片的だ。それはずっと思っていたから、記憶の操作があったのを認めるしかない。けど、阿寒の思い出は逆に強くなってるんだ。それが未来の記憶だとしたら、一緒に阿寒に行けばわかるんじゃないかと思う」
「妹を旅行に誘うだけでそこまで前置きする?まーあ面倒くさい男だわ」
「お兄ちゃん…ふふふっ」
澄香が、フッと力が抜けた丸い表情になる。
「嬉しい。けど長旅する体力はないかも」
「大丈夫だって!これは病気じゃないんだろ。な、梨杏」
「そ…そうだね。まだ気持ちでカバーできる段階。体は大丈夫なんでしょ」
そう言いつつ梨杏は、貴明に聞かれないよう言葉に出さず、意識下で澄香に語りかける。
(辛いだろうけど最後かもしれない。一緒に行っておいで)
それを感じ取った澄香は、嗚咽を漏らさぬよう口を押さえる。しばらく間を置き、
「わ、わかったよお兄ちゃん。そこまで言うなら仕方ないな。澄香はついて行ってあげましょう」
「そうか!宿は響子に言えば大丈夫だろ。遠いっても釧路までは飛行機だし、空港からバスで1時間半だ。長旅ってほどじゃないよ。ずっと一緒にいるんだしな」
「うん、楽しみ。でも寒いんでしょ?」
「MAXで-20℃くらいだから、道北や十勝に比べればマシだよ。あそこらへんは平常運転で-30℃だからな」
「まあ-20℃も十分致死量だけどねえ。大丈夫かい、澄香?」
「は、はは、まあ裸で行くわけじゃないしね、はは」
宿は響子に頼み、明後日に部屋が取れた。景護にも会いたかったが正月の振替休みで阿寒にはいないらしい。でも今回は澄香をこの世界に繋ぎ止めるための挑戦だ。他はいい。
「もーお兄ちゃん、病人扱いしないでよ、澄香は大丈夫だよ」
「だってお前…」
「大丈夫だって!ほらこの通り」
と言って、澄香は貴明の首に巻きつくように抱きついてくる。体温。匂い。吐息。柔らかさ。残酷な真実を知る前と変わらない、ずっと感じていたい温もりがある。ここで梨杏が珍しくも申し訳なさそうに、澄香に真顔で話しかける。
「澄香、私の側からはどう言っていいのか…」
「いいの。梨杏さんは、ちゅうかんかんかんりよく的な立場で板挟みなんでしょ」
「慣れない言葉を無理矢理使うな妹よ。それよりお前、梨杏が何者か知ってたのか」
「神の使いだよね。異常な存在の私を見守ってくれてた。それがわかったのはつい最近だけど、こんな人がそばにいてくれて、澄香は嬉しいです」
「澄香…ほんとに何でこんないい娘が…」
「2人とも心配しすぎー。でも、たまに優しいのもいいですねー」
と言ってペロッと舌を出す。ああそうか、確かにふとした時、おどけた時の表情はすみかと同じだ。瞳の色も肌の色もスタイルも声も少しずつ違うが、2人は同一人物だ。
「学校始まるまでゆっくり休もう。俺も疲れたしな」
だが懸念した通り、この日から澄香の調子は少しずつ悪くなっていった。高熱などわかりやすい症状はなかったが、体調というよりは心の問題であるのは明白だ。生命の光が弱くなるような、嫌な感覚に覆われ始めていた。
翌日。貴明はすみかに会うためアザーサイドに来た。この頃になると貴明は、会いたい対象がいる場所には簡単にドアを出現させられるようになっていた。パチモンなりに本家のどこ○もドアの機能性に近付いてきたともいえる。
「貴明さん。来てくれると思ってました」
落ち合ったのはクリスマスの思い出深い0階通り。澄香は自らの存在の儚さを自覚したことで急激に脆くなってきたが、すみかもあまり顔色が良くないように見える。
「澄香が調子悪いから、すみかちゃんも心配になってさ。大丈夫かい」
「私は平気。でも澄香の生命力が弱くなってきたのは私も感じています。顔も知らないのに、意識はつながっているんです」
「今後どうすればいいのかな。ごめん、無理なこと聞いてるね」
「ううん、全部私のせいだもの。澄香と貴明さんを悲しませることは絶対にしない。どうすればいいかはまだわからないけど…」
「ありがとう。もう一つ、これだけは言っておきたいんだ」
「はい?」
「俺はね、何があってもすみかちゃんが大好きだ。それだけは忘れないでほしい。だから、変な考えを起こさないで」
「貴明さん…」
すみかは涙を堪えて答える。
「今私が弱気になったり投げ出したりしたら、きっと澄香に悪影響がある。だから私もあなたと澄香を強く想い続けます。例え…」
次の言葉をためらい、ぎゅっと唇を噛む。
「例え、私や澄香にとって辛い結果になっても…」
ここまで言うとさすがに堪えきれず、涙が一粒流れる。貴明はその透明な涙をそっと拭い、手を重ねる。
「そう言ってくれると思った。2人が強い気持ちを持ってくれれば絶対に解決できる。そのためなら俺は何でもするから」
「わかりました。私も貴明さんみたいに、わがままを貫き通しますね!」
「うわわ、だんだん口悪くなってきた?俺の悪影響か…やっちまったかなあ」
「うふふ、人は似た者に惹かれると言いますからね」
無理に笑顔を作りつつ、声は震えている。贖罪の意識に揺れているのか。この娘を責めるなんてできるはずがない。第一そんなことをしたら、澄香に烈火の如く怒られるのは明白だ。
店を出る時、どちらからともなく手を繋いで歩く。互いの掌を強く握ったまま自動ドアを踏むと、白い光の中に貴明だけが消えていった。残されたすみかは唇を噛んだままうつむいていたが、その瞳には涙とともに、強い決意の光が宿っていた。
翌日、1月13日。澄香は得意の料理をする元気さえ失われていた。顔色も悪いのに「大丈夫だよ」と強がる笑顔が痛々しく、貴明はあえて体調には触れないようにしていた。
「そういえばさ、こないだ阿寒湖で一緒に遊んだって話をしたじゃん」
「そうだね、私が泣いてたとかさ。なんで私が湖で泣くのよ、もう」
「あれはさ、ひょっとしたら『未来の記憶』なのかなと思ってるんだ。鮮明なヴィジョではないけど、澄香が雪の上で泣いてるんだよ。最近では夢に出てくる」
「わー/危ない人が/いるー」
「なあ梨杏、どう思う?」
梨杏も澄香が気がかりで、毎日部屋に来ていた。
「また面倒くさそうなことを言い出したね」
「いや、エクスペリエンストの能力に、未来の記憶とか予知能力はないの?」
「うーん…すみかや恵美子が、お前が来る時はわかると言うのは、予知的な感覚に近いかもしれないね」
「だろ。俺さ、実は梨杏と初めて会うより前に、声や言葉をハッキリと聞いていたんだよね」
「ななんと!お前もなかなか底知れない能力の持ち主だな」
「俺の中の澄香の記憶は、確かに不鮮明で断片的だ。それはずっと思っていたから、記憶の操作があったのを認めるしかない。けど、阿寒の思い出は逆に強くなってるんだ。それが未来の記憶だとしたら、一緒に阿寒に行けばわかるんじゃないかと思う」
「妹を旅行に誘うだけでそこまで前置きする?まーあ面倒くさい男だわ」
「お兄ちゃん…ふふふっ」
澄香が、フッと力が抜けた丸い表情になる。
「嬉しい。けど長旅する体力はないかも」
「大丈夫だって!これは病気じゃないんだろ。な、梨杏」
「そ…そうだね。まだ気持ちでカバーできる段階。体は大丈夫なんでしょ」
そう言いつつ梨杏は、貴明に聞かれないよう言葉に出さず、意識下で澄香に語りかける。
(辛いだろうけど最後かもしれない。一緒に行っておいで)
それを感じ取った澄香は、嗚咽を漏らさぬよう口を押さえる。しばらく間を置き、
「わ、わかったよお兄ちゃん。そこまで言うなら仕方ないな。澄香はついて行ってあげましょう」
「そうか!宿は響子に言えば大丈夫だろ。遠いっても釧路までは飛行機だし、空港からバスで1時間半だ。長旅ってほどじゃないよ。ずっと一緒にいるんだしな」
「うん、楽しみ。でも寒いんでしょ?」
「MAXで-20℃くらいだから、道北や十勝に比べればマシだよ。あそこらへんは平常運転で-30℃だからな」
「まあ-20℃も十分致死量だけどねえ。大丈夫かい、澄香?」
「は、はは、まあ裸で行くわけじゃないしね、はは」
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