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#14 Sometimes it snows in April 〜4月の雪なんて何かの前兆なのが見え見えだった(4)
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3月31日、卒業記念ライブ。Back Door MenとUnhappy Girlsの混成メンバーによる特別ステージは大反響を呼んだ。集まった業界関係者は、いきなり登場した女の子に「あの娘は誰だ⁉︎」と色めき立つ。視線の先にいたのはもちろん澄香だ。
♪悠久の 湖水(みず)の音
触れるたびに 心解ける
神々に いだかれて
届かぬ想い 空を翔る
清楚で華のあるルックス。持ち前の元気さにすみかの透明感がミックスされた完璧な歌唱。澄香はたった1曲で会場を魅了し、紗英が所属する事務所のマネジャーは、慌てて本社に連絡するほどだった。
ライブが終わり、2人は成功を喜びながら帰途につく。
「あー緊張した!でも楽しかった。どうでしたか澄香の歌は?」
「すごいよ。透矢や理恵が、最初の1フレーズを聴いたら顔色変わって、本気で合わせてきたもんな。あえて澄香をリハに出さず本番まで温存した俺の勝ちだぜ」
「相変わらず性格悪ー。でも私もお姉ちゃんの歌を聴いてみたかったな」
「何を言う、さっきのはすみかちゃんの歌と同じだよ。録音したから後で聴こう」
「そうなの?えへ、嬉しいなー」
澄香は満面の笑みで貴明の腕にしがみついた。2人は、怒濤のように押し寄せた数々の試練や驚きが、このライブでひとまず決着したような充実感を味わっていた。
「聴いてたかい?すみかちゃん…」
2人で見上げた月。それはまるですみかの穏やかな笑顔のように、雲間に揺れていた。
数日後。4月の埼玉県南には珍しくぼたん雪がちらつく。鼠色の曇天の下、よく通うラーメン屋を左に曲がって駅に伸びるいつもの通学路。新生活を控えてのんびり過ごす貴明と澄香は、外で昼を食べようと駅前に向かっていた。
「そういや梨杏に初めて会ったのもここで、こんな雪の日だったよ。今頃は囚人生活を満喫してるのかな」
「会いたいね。梨杏さんがいなかったらみんな死んでたもん」
「最初は偉そうで気に食わなかったけどな。でもな、こんな話をしてる時に限って平気な顔で現れるのがあいつのやり方だ。油断大敵だぞ、ははは」
「あは、まさかそんな…」
その時突如、目の前が白く発光する。現れたのはもちろん偉そうな少女だった。
「あ“あ”ーん?誰が気に食わないって?」
「りりりり梨杏⁉︎マジか?」
目が点になる2人。梨杏はちっちっちっと人差し指を左右に振った。やはり古臭い。
「お前たち全員生き残っちゃったろ。合格しちゃったというかさ」
「いやすみかちゃんは…」
「何言ってんの、そこに澄香と一緒にいるでしょ。聞かなくてもわかるわよ。なーに、体なんてただの器、飾りだから」
「いや待て待て、それよりも500年の刑はどうした?」
「実はあんたらが合格したおかげで、世話役の私の評価が逆に上がっちゃってさあ」
貴明と澄香は、口があんぐりと開いたまま閉まらない。
「謹慎も造反も不問で、むしろリスペクトされまくりよ。我が世の春だねー」
「だ、だったらなんで…」
貴明と澄香が、同時に下向きでワナワナと震え出す。
「どどうした2人とも?」
「だったらなんで、もっと早く会いに来ねえんだよ!こんのヨゴレ使い魔!」
「梨杏さーん!澄香…もう会えないって思って…」
澄香は堪えきれず、大泣きで梨杏に抱きつく。
「ごめんよ…あっちにも色々あんのよ。私だって澄香とすみかは可愛いし、一刻も早く会いたかったのよ。貴明は別にいいけど」
「お前な…ま、それくらいでちょうどいいや。お帰り!」
「梨杏さーん…」
梨杏は澄香の頭を撫でながら言う。
「他の連中の面倒見るのも大変なのよ。あ、何かあったら貴明、あんた出勤だから」
「出勤てなんだよ」
「エクストリームの力を授かったんだから、たまに役に立つ気はないのかって言ってんのよ」
「…なぜ素直に、俺のパワーを借りる時が来るとか言えんのだ?」
「あはは、いいなあこの感じ。やっぱあんたら面白いわ」
「面白くねえって話をしてんだよ!澄香離れろ、ヨゴレが伝染るぞ」
「梨杏さん大好き…」
大騒ぎのランチを終え、梨杏はケチャップまみれの口でどこかに去った。
「相変わらず気まぐれな奴だ。でも4月に雪が降るなんて、おかしいとは思ってたんだ」
「澄香、雪は好きだよ」
「なんと!吹雪で死にかけたのにどの口が言うのか」
「いや、あんなのはもう沢山だけど…でも今日もいいことあった」
「な、あいつ本当にミューズ神だと思うか?」
「神の使いって言ってたもんね。ミューズって神様の中ではパシリなのかなあ」
「よせ!また罰が当たるぞ。俺は知ーらないっと」
「あっ…ということを昨日お兄ちゃんが言ってましたよ梨杏さん!天罰を!」
「やめろ、またどこかで見てるぞ!」
落ち着かないことが増えそうではあるが、欠けたままで収まりが悪かったピースが揃ったことに、2人は改めて安堵していた。
貴明と澄香、梨杏、そしてすみか。この4ヶ月で一生離れない絆が生まれた4人。特に貴明とすみかは、諸々足りない自分が命がけで守るべき存在がいるということに、深い喜びを感じていた。
絆の中心にいるのは紛れもなく澄香だ。彼女の笑顔は、いつも周りを巻き込んで幸せにする。響子が言っていた、人と人とを結びつける力というやつかもしれない。
「澄香ってさ、そういうエクストリーム能力があるんじゃないか?」
「何?」
「はは、なんでもないよ。さ、帰って曲を仕上げるかな」
「えー、一緒にいるときくらい音楽忘れようよー、もう」
「バカ言え、俺から音楽を取ったら何が残ると…」
「自覚してるんだね」
「…違う。澄香が残る。どうしよう、音楽より大事なものができてしまった」
「ばっばっバカ兄貴!もう!」
2人は気づく由もなかったが、そんないつものやり取りを、梨杏が時空を超えて楽しそうに見つめていた。
♪悠久の 湖水(みず)の音
触れるたびに 心解ける
神々に いだかれて
届かぬ想い 空を翔る
清楚で華のあるルックス。持ち前の元気さにすみかの透明感がミックスされた完璧な歌唱。澄香はたった1曲で会場を魅了し、紗英が所属する事務所のマネジャーは、慌てて本社に連絡するほどだった。
ライブが終わり、2人は成功を喜びながら帰途につく。
「あー緊張した!でも楽しかった。どうでしたか澄香の歌は?」
「すごいよ。透矢や理恵が、最初の1フレーズを聴いたら顔色変わって、本気で合わせてきたもんな。あえて澄香をリハに出さず本番まで温存した俺の勝ちだぜ」
「相変わらず性格悪ー。でも私もお姉ちゃんの歌を聴いてみたかったな」
「何を言う、さっきのはすみかちゃんの歌と同じだよ。録音したから後で聴こう」
「そうなの?えへ、嬉しいなー」
澄香は満面の笑みで貴明の腕にしがみついた。2人は、怒濤のように押し寄せた数々の試練や驚きが、このライブでひとまず決着したような充実感を味わっていた。
「聴いてたかい?すみかちゃん…」
2人で見上げた月。それはまるですみかの穏やかな笑顔のように、雲間に揺れていた。
数日後。4月の埼玉県南には珍しくぼたん雪がちらつく。鼠色の曇天の下、よく通うラーメン屋を左に曲がって駅に伸びるいつもの通学路。新生活を控えてのんびり過ごす貴明と澄香は、外で昼を食べようと駅前に向かっていた。
「そういや梨杏に初めて会ったのもここで、こんな雪の日だったよ。今頃は囚人生活を満喫してるのかな」
「会いたいね。梨杏さんがいなかったらみんな死んでたもん」
「最初は偉そうで気に食わなかったけどな。でもな、こんな話をしてる時に限って平気な顔で現れるのがあいつのやり方だ。油断大敵だぞ、ははは」
「あは、まさかそんな…」
その時突如、目の前が白く発光する。現れたのはもちろん偉そうな少女だった。
「あ“あ”ーん?誰が気に食わないって?」
「りりりり梨杏⁉︎マジか?」
目が点になる2人。梨杏はちっちっちっと人差し指を左右に振った。やはり古臭い。
「お前たち全員生き残っちゃったろ。合格しちゃったというかさ」
「いやすみかちゃんは…」
「何言ってんの、そこに澄香と一緒にいるでしょ。聞かなくてもわかるわよ。なーに、体なんてただの器、飾りだから」
「いや待て待て、それよりも500年の刑はどうした?」
「実はあんたらが合格したおかげで、世話役の私の評価が逆に上がっちゃってさあ」
貴明と澄香は、口があんぐりと開いたまま閉まらない。
「謹慎も造反も不問で、むしろリスペクトされまくりよ。我が世の春だねー」
「だ、だったらなんで…」
貴明と澄香が、同時に下向きでワナワナと震え出す。
「どどうした2人とも?」
「だったらなんで、もっと早く会いに来ねえんだよ!こんのヨゴレ使い魔!」
「梨杏さーん!澄香…もう会えないって思って…」
澄香は堪えきれず、大泣きで梨杏に抱きつく。
「ごめんよ…あっちにも色々あんのよ。私だって澄香とすみかは可愛いし、一刻も早く会いたかったのよ。貴明は別にいいけど」
「お前な…ま、それくらいでちょうどいいや。お帰り!」
「梨杏さーん…」
梨杏は澄香の頭を撫でながら言う。
「他の連中の面倒見るのも大変なのよ。あ、何かあったら貴明、あんた出勤だから」
「出勤てなんだよ」
「エクストリームの力を授かったんだから、たまに役に立つ気はないのかって言ってんのよ」
「…なぜ素直に、俺のパワーを借りる時が来るとか言えんのだ?」
「あはは、いいなあこの感じ。やっぱあんたら面白いわ」
「面白くねえって話をしてんだよ!澄香離れろ、ヨゴレが伝染るぞ」
「梨杏さん大好き…」
大騒ぎのランチを終え、梨杏はケチャップまみれの口でどこかに去った。
「相変わらず気まぐれな奴だ。でも4月に雪が降るなんて、おかしいとは思ってたんだ」
「澄香、雪は好きだよ」
「なんと!吹雪で死にかけたのにどの口が言うのか」
「いや、あんなのはもう沢山だけど…でも今日もいいことあった」
「な、あいつ本当にミューズ神だと思うか?」
「神の使いって言ってたもんね。ミューズって神様の中ではパシリなのかなあ」
「よせ!また罰が当たるぞ。俺は知ーらないっと」
「あっ…ということを昨日お兄ちゃんが言ってましたよ梨杏さん!天罰を!」
「やめろ、またどこかで見てるぞ!」
落ち着かないことが増えそうではあるが、欠けたままで収まりが悪かったピースが揃ったことに、2人は改めて安堵していた。
貴明と澄香、梨杏、そしてすみか。この4ヶ月で一生離れない絆が生まれた4人。特に貴明とすみかは、諸々足りない自分が命がけで守るべき存在がいるということに、深い喜びを感じていた。
絆の中心にいるのは紛れもなく澄香だ。彼女の笑顔は、いつも周りを巻き込んで幸せにする。響子が言っていた、人と人とを結びつける力というやつかもしれない。
「澄香ってさ、そういうエクストリーム能力があるんじゃないか?」
「何?」
「はは、なんでもないよ。さ、帰って曲を仕上げるかな」
「えー、一緒にいるときくらい音楽忘れようよー、もう」
「バカ言え、俺から音楽を取ったら何が残ると…」
「自覚してるんだね」
「…違う。澄香が残る。どうしよう、音楽より大事なものができてしまった」
「ばっばっバカ兄貴!もう!」
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