勘違いから始まる吸血姫と聖騎士の珍道中

一色孝太郎

文字の大きさ
199 / 625
武を求めし者

第五章第21話 変わり果てた村(前編)

しおりを挟む
歩くこと五日、死なない獣の襲撃に遭いつつも平時と変わらないペースで歩くことができた私たちは予定通りフゥーイエ村へと到着した。

しかし、私たちの目に飛び込んできた風景は、以前お世話になったフゥーイエ村とは全く異なるものだった。

建物はボロボロに破壊されて廃墟となり、人っ子一人歩いていない。

ところどころに何かが散らばっており、そこをハエがブンブンと飛び回っているのが不快さをかき立てる。

あまりの惨状に目を覆いたくなってしまうほどだ。

「そんな……」
「ふん。グズグズしていたせいだな。この腐り方だと襲撃があったのは二日前だろう。生き残りがいれば襲撃の主がわかるかもしれん。探すぞ」

将軍はそれだけ言うと平然とした様子で村の中を歩いていった。そして破壊された建物に生存者がいないかを見て回っている。

そうか。私のせいか。将軍の言っていた通りにあのまま山狩りに行けばこの村は助かったかもしれないのか。

私は何ともやるせない気持ちになる。

治療して助かったと喜んでいた人たちとその家族の人たち、村長さん、ツィンシャまでの道案内をしてくれたルゥー・ヂゥさんといった関わりのあった人たちの顔を思い浮かべると涙が滲んでしまう。

「フィーネ様……私はフィーネ様の判断は正しかったと思います」
「そうでござるよ。いくら将軍でも寝ている間は一人で殲滅できていなかったでござる。それにもし将軍の言う通りにしていたとして、拙者たちがいない間にチィーティエンが襲われてもっと多くの被害が出ていたかもしれないでござるよ」
「クリスさん、シズクさん……」

二人はそう言って慰めてくれるが気分は晴れない。

「姉さま、ここの人たちは仕方なかったんですよ。この村は姉さまの差し伸べた救いの手を振り払ったんですから、自業自得です」
「ルーちゃん……」

それでも、何とかできたかもしれないじゃないか。

そんな私たちの様子を見ていたリーチェがフードの中から出てくると、私の頭をいい子いい子と撫でてくれた。

「リーチェまで……そうですね。くよくよしていても仕方ありませんね。私たちも生き残りがいないか探してみましょう」
「はい」

私たちは気を取り直して村の捜索を行う。やはりどこも酷い状態で、とても生き残りがいるようには思えない。

もし仮にいたとしてもどこかに逃げているのではないだろうか?

誰一人として見つけられない絶望的な捜索を続け、私たちは村長さんの家だった場所へとやってきた。

村長さんの家は他の木造の家と違って石造りなため部分的には原型を留めている。それでも壁に大穴が空いていたりと激しく破壊されている。

この村に一体何があったのだろうか?

「人の気配はありませんね」

クリスさんを先頭に半壊した建物の中へと足を踏み入れる。

「誰もいなそうでござるな。あ、いや? この声は?」
「えっ? あたしは何も聞こえませんでしたよ?」
「む? 空耳でござったか?」
「空耳ですか……もしかしたら化けて出てしまっているのかも知れませんね。あとできちんと送ってあげましょう」
「ひっ」

あ、しまった。クリスさんが化けて出るで反応してしまった。

「クリスさん、私がいますし、それに私が浄化魔法を付与した剣をお借りしているんですから、今のクリスさんなら大丈夫ですよ」
「! そうでした! 私としたことが!」

流石にそろそろ慣れて欲しいな、などと考えていると私にも誰かの声が聞こえてきた。

「これは……子供の声?」
「えっ?」
「ちょっと静かにしてもらえますか?」

そうして静かになったところで、私はどんな小さな音も聞き漏らなさないように聴覚に全神経を集中する。

「……ぐすっ」

やっぱり!

これは子供の泣き声だ。生存者がいる!

「こっちから声がしますね」

私は声のしたほうへ、建物の奥へと歩いていく。するとそこには破壊された瓦礫が積み重なっていた。

「この瓦礫の下っぽいですね」
「かすかに声が聞こえるでござるな」

どうやらシズクさんにも聞こえているようだ。

「では瓦礫をどかしてしまいしょう」
「拙者も手伝うでござるよ」
「あ、待ってください。私がやります」

クリスさんとシズクさんが作業に掛かろうとするが時間の無駄なので止める。

「え? フィーネ殿?」
「フィーネ様、力仕事でしたら私たちが」
「いえ、力仕事じゃありませんから。というか、クリスさんは前にその現場にいたじゃないですか。はい、収納」

私は瓦礫を自分の収納に入れるとそのまま建物の外へ投棄する。

「は、はは。拙者の主もでたらめだったでござる」

唖然とした表情でそういうシズクさんに私は毅然と抗議する。

「ちょっと。将軍と一緒にしないでください。これはスキルなんですから」
「はは、そうでござるな」

白銀の里で地下に閉じ込められた時よりも瓦礫の量はかなり少ないため、一度で邪魔な瓦礫を全てどけることができた。

そしてその瓦礫の下からは板張りの床が現れた。だが、その一ヵ所に鉄になっている部分がある。

「あれは?」
「隠し部屋の入り口、でしょうか?」

私たちはその鉄になっている部分に近づくとそこを軽くノックしてみる。

ゴンゴンと重そうな音がするが、少し響いているような感じがあるのでどうやら裏側に何かあるような気がする。

だが、開けるための取っ手などがない。一体どうやって開くのだろうか?

「フィーネ様、お下がりください。私が斬ります」
「え? ああ、はい。お願いします」
「はい」

クリスさんが聖剣を抜き、そして狙いすました四連撃で鉄板を四角形に切り抜いた。

すると切り抜かれた鉄板がゴトンゴトンと大きな音を立てて中へと落ちていった。

私が中を覗くとそこは竪穴になっており、梯子が掛けられているが、ほぼ完全な真っ暗闇だ。周りが明るいせいで暗闇を見通すのは少し大変ではあるが、じっくり見れば問題ない。

どうやら穴の深さは 2 ~ 3  メートル程のようだ。

「誰かいますか?」

私は呼びかけてみると、小さく「ひっ」と引きつった様な子供の声が聞こえる。

「子供が中にいますね。行ってみましょう」
「お待ちください。フィーネ様。私が先に行きます」
「え、でも、クリスさんはこれだけ暗いと何も見えないんじゃ……」
「う、ですが安全を確認せずにフィーネ様を先に行かせるなどできません」
「うーん、子供の声がするので大丈夫だと思いますけど……」
「では拙者が先に行くでござるよ。拙者も夜目はかなり利くようになったでござるからな」

そう言うとシズクさんがするりと降りていき、そして着地すると OK サインを出してきた。

「じゃあ、クリスさんとルーちゃんはここで見張りと兵士の皆さんが来た時に状況を伝えてあげてください」
「「はい」」

私はそう言い残すと梯子を降りて穴のそこへと到着した。そこにはシズクさんと小さな木の扉があった。

「フィーネ殿、開けるでござるよ」

そう言ってシズクさんは扉を引いて開ける。すると、そこにはおよそ 2 メートル四方程の小さな地下室で、そこには小さな女の子と男の子、そして血まみれで倒れているルゥー・ヂゥさんの姿があった。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

祝石細工師リーディエの新婚生活

古森きり
恋愛
ハルジェ伯爵家で虐げられていたリーディエは、父に隠居した元公爵ジャスティの後添えに売られてしまう。 高齢のジャスティはリーディエを息子の祝石研究者ソラウの世話係を依頼し、彼に祝石細工師を勧められる。 もの作りの楽しさに目覚めたリーディエは、ソラウとともに穏やかで幸せな日々が始まった―― カクヨム、ノベプラに読み直しナッシング書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、ベリカフェにも掲載すると思う。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

処理中です...