7 / 122
第7話 日本では……(2)
しおりを挟む
「おはよう、朱里ちゃん、剛君。昨日はよく眠れた?」
洋子が起きてきた朱里と剛に優しく微笑みかけた。まるで昨日の仏頂面が嘘のようににこやかである。
「……おはようございます」
「おはようございます」
朱里は遠慮がちに、剛はやや寝ぼけた様子でそう挨拶を返す。
「昨日はごめんなさいね。いきなりだったからおばさん、ちょっと動転していて……。でも二人だって辛いものね。おばさんは猛夫君の代わりには慣れないけれど、どうか頼ってちょうだい」
洋子は申し訳なさそうにそう言うと、二人に向かって微笑んだ。
「え……?」
「はい。おばさん、よろしく」
朱里は表情を強張らせ、剛はあまり興味がなさそうな様子でそう答える。
「朱里ちゃんも、よろしくね」
「……はい」
「さあ、二人とも学校でしょう? 早く食べなさい」
洋子は二人をそう急かすと、二人のお茶碗に炊き立てのご飯をよそうのだった。
◆◇◆
朝食をとった二人は制服に着替え、それぞれの学校へと向かう。
「ねえ、剛」
「何? 姉ちゃん」
「あの人たちさ」
「分かってるよ。俺らのこと、嫌ってるだろ? 他人だもん」
「うん」
「だから俺、中学卒業したら高校行かないでバイトする。あの人らの世話になりたくないし」
「でも、兄さんは……」
「分かってるよ。兄ちゃんは俺たちのためにすげぇ働いてくれてたし。大学行けって言ってたもんな」
「うん。兄さんはあたしたちのために大学行かなかったのに……」
朱里は辛そうな表情で俯いた。
「あ、姉ちゃん。俺こっち」
「あ! うん。じゃあ、またね」
「うん。また」
こうして二人はそれぞれの学校へと登校するのだった。
◆◇◆
「お! 茂手内じゃん! お前大丈夫なのか?」
剛が教室に入ると、一人の男子生徒が声をかけてきた。彼の名は杉田浩平、剛のクラスメイトである。
「よぉ、杉田。見てのとおり、全然問題なし」
「ホントか? お前、なんか目にクマできてるぞ?」
「マジで? 見てなかったわ」
「やっぱ悩んでるんじゃないのか? お兄さんのこと」
「あ、そういうんじゃねーわ。すげぇの見つけちまったんだよ」
「すげぇの?」
「ああ、リリちゃんっていう新人VTuber。なんとかって異世界にエルフとして転生したっていう設定なんだけど、超かわいいんだよ」
「は? お前、まさかそれで?」
「おう。マジすげぇって。抜けるぜ。ほら、この子」
「ん? どれどれ……うわっ! マジだ! 超かわいい!」
「だろ? ダウンロードしてあるから、放課後な?」
「やったぜ!」
こうして剛は杉田にリリスの動画を見せる約束をしたのだった。
◆◇◆
放課後、預けておいたスマホを担任の教師から返してもらい、剛は校舎裏へと向かった。
するとそこにはすでに五人ほどの男子生徒が集まっていた。彼らは剛と同じ学年で、こうしてよくつるんでいる仲間だ。
「よお、お前らもか」
「おうよ。杉田がすげぇかわいいVTuberをお前が見つけたって聞いたからな」
そう言ったのは山本大翔だ。
「ああ、山本。まじですげぇから」
そう言って剛がスマホを取り出し、リリスの動画を再生する。
「あ、やべぇ」
「超かわいいじゃん」
「やばい。これ実写?」
「なわけねぇだろ。実写でこんなかわいい娘、いるわけないじゃん」
冷静にツッコミを入れたのは西川昭介、剛のクラスメイトである。
「だよなぁ」
彼らの視線は画面の中で微笑むリリスに釘付けになっている。
「この胸、でかいよな」
「透けねぇかなぁ」
「CGが透けるわけねぇだろ」
「ゴブリンってなんだよ」
「おおい! そこモザイクかよ!」
ゴブリンの股間にモザイクがかかっているシーンで彼らは大爆笑した。
「やべぇ、絶対狙ってるだろ」
「だよなぁ」
「絶対エロイラストとか出そう」
「あー、めっちゃ抜けそう」
「っていうか、これだけでも抜けるだろ」
「たしかに!」
「おい、最初から」
「おう」
こうして剛たちは夢中になってリリスの動画を何度も見返すのだった。
◆◇◆
その夜、部屋で寝転んでいる剛のスマホに通知が入った。
「お? やった! リリちゃんの動画!」
剛はすぐさま通知から動画の再生を始める。
「今日はですね。せっかく異世界に転生したので、魔法をみんなにお見せしたいと思います」
「リリちゃんの存在が魔法だよなぁ」
剛はそう呟くと、食い入るように画面を見ている。
「ひゃんっ!?」
「うおっ!?」
リリスが間違って噴水に触った場面で剛は思わず動画を一時停止した。
「やばい。マジヤバい。ってか、これ、本当にCGか? CGってこんな風になるんだっけ? 下着、ちょっと透けてるような?」
剛はそんなことを呟きながらも食い入るように画面を見つめている。
「よし。『リリちゃん、可愛いうえにスタイル良くって最高! 今度はコスプレが見たいです!』っと」
剛はリリスの動画にそうコメントを残した。
そして動画を最後まで見た剛はリピート再生すると、近くに置かれたティッシュ箱へと手を伸ばすのだった。
洋子が起きてきた朱里と剛に優しく微笑みかけた。まるで昨日の仏頂面が嘘のようににこやかである。
「……おはようございます」
「おはようございます」
朱里は遠慮がちに、剛はやや寝ぼけた様子でそう挨拶を返す。
「昨日はごめんなさいね。いきなりだったからおばさん、ちょっと動転していて……。でも二人だって辛いものね。おばさんは猛夫君の代わりには慣れないけれど、どうか頼ってちょうだい」
洋子は申し訳なさそうにそう言うと、二人に向かって微笑んだ。
「え……?」
「はい。おばさん、よろしく」
朱里は表情を強張らせ、剛はあまり興味がなさそうな様子でそう答える。
「朱里ちゃんも、よろしくね」
「……はい」
「さあ、二人とも学校でしょう? 早く食べなさい」
洋子は二人をそう急かすと、二人のお茶碗に炊き立てのご飯をよそうのだった。
◆◇◆
朝食をとった二人は制服に着替え、それぞれの学校へと向かう。
「ねえ、剛」
「何? 姉ちゃん」
「あの人たちさ」
「分かってるよ。俺らのこと、嫌ってるだろ? 他人だもん」
「うん」
「だから俺、中学卒業したら高校行かないでバイトする。あの人らの世話になりたくないし」
「でも、兄さんは……」
「分かってるよ。兄ちゃんは俺たちのためにすげぇ働いてくれてたし。大学行けって言ってたもんな」
「うん。兄さんはあたしたちのために大学行かなかったのに……」
朱里は辛そうな表情で俯いた。
「あ、姉ちゃん。俺こっち」
「あ! うん。じゃあ、またね」
「うん。また」
こうして二人はそれぞれの学校へと登校するのだった。
◆◇◆
「お! 茂手内じゃん! お前大丈夫なのか?」
剛が教室に入ると、一人の男子生徒が声をかけてきた。彼の名は杉田浩平、剛のクラスメイトである。
「よぉ、杉田。見てのとおり、全然問題なし」
「ホントか? お前、なんか目にクマできてるぞ?」
「マジで? 見てなかったわ」
「やっぱ悩んでるんじゃないのか? お兄さんのこと」
「あ、そういうんじゃねーわ。すげぇの見つけちまったんだよ」
「すげぇの?」
「ああ、リリちゃんっていう新人VTuber。なんとかって異世界にエルフとして転生したっていう設定なんだけど、超かわいいんだよ」
「は? お前、まさかそれで?」
「おう。マジすげぇって。抜けるぜ。ほら、この子」
「ん? どれどれ……うわっ! マジだ! 超かわいい!」
「だろ? ダウンロードしてあるから、放課後な?」
「やったぜ!」
こうして剛は杉田にリリスの動画を見せる約束をしたのだった。
◆◇◆
放課後、預けておいたスマホを担任の教師から返してもらい、剛は校舎裏へと向かった。
するとそこにはすでに五人ほどの男子生徒が集まっていた。彼らは剛と同じ学年で、こうしてよくつるんでいる仲間だ。
「よお、お前らもか」
「おうよ。杉田がすげぇかわいいVTuberをお前が見つけたって聞いたからな」
そう言ったのは山本大翔だ。
「ああ、山本。まじですげぇから」
そう言って剛がスマホを取り出し、リリスの動画を再生する。
「あ、やべぇ」
「超かわいいじゃん」
「やばい。これ実写?」
「なわけねぇだろ。実写でこんなかわいい娘、いるわけないじゃん」
冷静にツッコミを入れたのは西川昭介、剛のクラスメイトである。
「だよなぁ」
彼らの視線は画面の中で微笑むリリスに釘付けになっている。
「この胸、でかいよな」
「透けねぇかなぁ」
「CGが透けるわけねぇだろ」
「ゴブリンってなんだよ」
「おおい! そこモザイクかよ!」
ゴブリンの股間にモザイクがかかっているシーンで彼らは大爆笑した。
「やべぇ、絶対狙ってるだろ」
「だよなぁ」
「絶対エロイラストとか出そう」
「あー、めっちゃ抜けそう」
「っていうか、これだけでも抜けるだろ」
「たしかに!」
「おい、最初から」
「おう」
こうして剛たちは夢中になってリリスの動画を何度も見返すのだった。
◆◇◆
その夜、部屋で寝転んでいる剛のスマホに通知が入った。
「お? やった! リリちゃんの動画!」
剛はすぐさま通知から動画の再生を始める。
「今日はですね。せっかく異世界に転生したので、魔法をみんなにお見せしたいと思います」
「リリちゃんの存在が魔法だよなぁ」
剛はそう呟くと、食い入るように画面を見ている。
「ひゃんっ!?」
「うおっ!?」
リリスが間違って噴水に触った場面で剛は思わず動画を一時停止した。
「やばい。マジヤバい。ってか、これ、本当にCGか? CGってこんな風になるんだっけ? 下着、ちょっと透けてるような?」
剛はそんなことを呟きながらも食い入るように画面を見つめている。
「よし。『リリちゃん、可愛いうえにスタイル良くって最高! 今度はコスプレが見たいです!』っと」
剛はリリスの動画にそうコメントを残した。
そして動画を最後まで見た剛はリピート再生すると、近くに置かれたティッシュ箱へと手を伸ばすのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる