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第17話 日本では……(5)
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「なあ、昨日のリリちゃん見た?」
「ああ、見た見た。やっぱ最高だよなぁ」
「だよなぁ。リリちゃん、歩いてるだけでもエロいもんなぁ」
「わかるー」
リリスのミニョレ村紹介動画が投稿された翌朝、剛は教室でいつもの友人たちとリリスの魅力について熱く語り合っていた。
「ライブ配信とかやってくれないかなぁ?」
「たしかに。でもなぁ。せっかくすごいCGなのに、いきなり変になったら嫌だしなぁ」
「あー、わかるー」
「そういえばあの村、何て名前だっけ?」
「リリス村じゃなくて……」
「ミモレ村?」
「あー、そうそう。そんな感じ。イスタンブール王国だっけ?」
「ちげーよ。それトルコだし」
「マジで? あそこトルコなの? ってか、トルコってどこ?」
「ほら、あれだよ。あのへん」
「あのへんって?」
「あのへんだって」
「わかってねーじゃねーか」
そういって爆笑しながら騒いでいると、メガネをかけた真面目そうな女子生徒が立ち上がった。彼女の名前は藤田夏美、このクラスの学級委員長である。
「ちょっと、もう少し静かにしてよ。朝からそんな大声で変なことしゃべらないで」
「ん? なんだよ委員長。いいじゃん。それよりトルコってどこ?」
「はぁ!? そんなことも知らないの?」
剛に言われて面食らった様子の藤田だったが、すぐに地図帳を取り出して場所を指し示す。
「ここよ! こんなの常識じゃない」
「そうなんだ。委員長やっぱ頭いいな。ありがとう」
「な、何よ……」
まんざらでもなさそうな様子の藤田をよそに、剛たちはリリスの話を再び始める。
「でさ。実際はどこなんだろうな? あそこ」
「え? CGだろ?」
「でもさ。CGで水車なんて用意するか?」
「あー、たしかに。ん? そうだ! 委員長!」
「な、何よ?」
「これ、どこがモデルだか分かる? 異世界転生系VTuberのリリちゃんっていう娘なんだけどさ。こういう村って、どの辺にあるか知らない?」
剛はそう言ってスマホを藤田に差し出し、それを見た藤田は眉をひそめた。それから小さな声で、やっぱりこういう娘が好きなのかな、と誰にも聞こえないほど小さな声で呟く。
「ん? なんか言った?」
「なんでもないわよ。で、これがどこかだったわね?」
「そう」
「やけにリアルだけど、CGに決まってるじゃない。だって、この村、電線も街灯もないのよ? 生活できるわけないし、何日もここにいて動画の撮影続けられるわけないでしょ?」
「それもそうだなぁ。で、どの辺がモデルなの?」
「え? それは……」
「委員長でも分かんないなら無理だな」
「だな。でもやっぱCGだよなぁ」
「そうよ。CGに決まってるわ」
藤田が自信ありげに頷いたところで、教室のドアが開いて担任の教師が入ってきた。
「よーし、ホームルーム始めるぞー。みんな席に着けー。あとスマホ持ってきている奴は机の上に出せー」
「じゃあ、そういうことだからね」
そう言って藤田は自分の席へと戻っていったのだった。
◆◇◆
翌朝登校した剛のところに藤田がやってきた。
「茂手内くん、分かったわよ。昨日の」
「え? 村のモデル?」
「そう。あの村はね、典型的なモット・アンド・ベイリー型のお城なの」
「え? もっと?」
「モット・アンド・ベイリーよ。中世で一番多かったお城のタイプ」
そう言うと得意げな表情になり、流れるように説明を始めた。
「あの領主の城って説明してたとこ、あれがモットね。盛り土を小高い丘を作るの。で、その土は周りを掘って調達しているの。ベイリーっていうのは村のことね。本来は低い庭っていう意味らしいわ。始まりは九世紀ごろ。カロリング帝国の崩壊で諸侯が外敵から身を守るために作ったのが始まりという説が主流みたい。それで十世紀にはノルマンディーやドイツ地方に広がって、十三世紀にかけてアイルランドやデンマークなどにも広がっていったの。十三世紀後半からは新しいタイプのそれからは新しい様式の城に変わっていったらしいけど、歴史的には重要な意味を持っていたと推測されるわ。たとえば有名なイギリスのウィンザー城ね。あのお城だって最初はモット・アンド・ベイリー方式で建てられていて――」
藤田はそれからも覚えたてであろう知識をとうとうと披露する。
「というわけよ。どう? わかった?」
「お、おう。とりあえずどこかは分からなかったってことはわかった」
「なっ!?」
藤田は一瞬ショックを受けた様子になるが、すぐに気を取り直す。
「ま、待ってなさい。すぐに見つけてきてあげるんだから」
「お? なになに? 茂手内と委員長、何話してんの?」
「おう、杉田。なんか委員長が調べてくれたんだけど、リリちゃんのミモレ村ってよくある感じのやつらしいぜ」
「ちょっと、ミモレ村じゃないわよ。ミニョレ村って言っていたじゃない。あんなに一生懸命説明してたんだから覚えてあげなさいよ」
「え? 委員長、リリちゃんの動画ちゃんと見たの?」
「な、何よ? あんなこと言われて気になっただけなんだから。別にリリちゃんがかわいいとか、そういうんじゃないんだからね!」
「まじかー、まさか委員長がリリちゃんの魅力を分かってくるなんて意外だったなー」
「な、何よっ!」
「おーい。ホームルーム始めるぞー」
三人の会話は入ってきた担任の教師によって遮られたのだった。
================
学級委員長といえばメガネでツンデレなイメージです。
次回は二度目のコメント返し動画を撮影します。お楽しみに!
「ああ、見た見た。やっぱ最高だよなぁ」
「だよなぁ。リリちゃん、歩いてるだけでもエロいもんなぁ」
「わかるー」
リリスのミニョレ村紹介動画が投稿された翌朝、剛は教室でいつもの友人たちとリリスの魅力について熱く語り合っていた。
「ライブ配信とかやってくれないかなぁ?」
「たしかに。でもなぁ。せっかくすごいCGなのに、いきなり変になったら嫌だしなぁ」
「あー、わかるー」
「そういえばあの村、何て名前だっけ?」
「リリス村じゃなくて……」
「ミモレ村?」
「あー、そうそう。そんな感じ。イスタンブール王国だっけ?」
「ちげーよ。それトルコだし」
「マジで? あそこトルコなの? ってか、トルコってどこ?」
「ほら、あれだよ。あのへん」
「あのへんって?」
「あのへんだって」
「わかってねーじゃねーか」
そういって爆笑しながら騒いでいると、メガネをかけた真面目そうな女子生徒が立ち上がった。彼女の名前は藤田夏美、このクラスの学級委員長である。
「ちょっと、もう少し静かにしてよ。朝からそんな大声で変なことしゃべらないで」
「ん? なんだよ委員長。いいじゃん。それよりトルコってどこ?」
「はぁ!? そんなことも知らないの?」
剛に言われて面食らった様子の藤田だったが、すぐに地図帳を取り出して場所を指し示す。
「ここよ! こんなの常識じゃない」
「そうなんだ。委員長やっぱ頭いいな。ありがとう」
「な、何よ……」
まんざらでもなさそうな様子の藤田をよそに、剛たちはリリスの話を再び始める。
「でさ。実際はどこなんだろうな? あそこ」
「え? CGだろ?」
「でもさ。CGで水車なんて用意するか?」
「あー、たしかに。ん? そうだ! 委員長!」
「な、何よ?」
「これ、どこがモデルだか分かる? 異世界転生系VTuberのリリちゃんっていう娘なんだけどさ。こういう村って、どの辺にあるか知らない?」
剛はそう言ってスマホを藤田に差し出し、それを見た藤田は眉をひそめた。それから小さな声で、やっぱりこういう娘が好きなのかな、と誰にも聞こえないほど小さな声で呟く。
「ん? なんか言った?」
「なんでもないわよ。で、これがどこかだったわね?」
「そう」
「やけにリアルだけど、CGに決まってるじゃない。だって、この村、電線も街灯もないのよ? 生活できるわけないし、何日もここにいて動画の撮影続けられるわけないでしょ?」
「それもそうだなぁ。で、どの辺がモデルなの?」
「え? それは……」
「委員長でも分かんないなら無理だな」
「だな。でもやっぱCGだよなぁ」
「そうよ。CGに決まってるわ」
藤田が自信ありげに頷いたところで、教室のドアが開いて担任の教師が入ってきた。
「よーし、ホームルーム始めるぞー。みんな席に着けー。あとスマホ持ってきている奴は机の上に出せー」
「じゃあ、そういうことだからね」
そう言って藤田は自分の席へと戻っていったのだった。
◆◇◆
翌朝登校した剛のところに藤田がやってきた。
「茂手内くん、分かったわよ。昨日の」
「え? 村のモデル?」
「そう。あの村はね、典型的なモット・アンド・ベイリー型のお城なの」
「え? もっと?」
「モット・アンド・ベイリーよ。中世で一番多かったお城のタイプ」
そう言うと得意げな表情になり、流れるように説明を始めた。
「あの領主の城って説明してたとこ、あれがモットね。盛り土を小高い丘を作るの。で、その土は周りを掘って調達しているの。ベイリーっていうのは村のことね。本来は低い庭っていう意味らしいわ。始まりは九世紀ごろ。カロリング帝国の崩壊で諸侯が外敵から身を守るために作ったのが始まりという説が主流みたい。それで十世紀にはノルマンディーやドイツ地方に広がって、十三世紀にかけてアイルランドやデンマークなどにも広がっていったの。十三世紀後半からは新しいタイプのそれからは新しい様式の城に変わっていったらしいけど、歴史的には重要な意味を持っていたと推測されるわ。たとえば有名なイギリスのウィンザー城ね。あのお城だって最初はモット・アンド・ベイリー方式で建てられていて――」
藤田はそれからも覚えたてであろう知識をとうとうと披露する。
「というわけよ。どう? わかった?」
「お、おう。とりあえずどこかは分からなかったってことはわかった」
「なっ!?」
藤田は一瞬ショックを受けた様子になるが、すぐに気を取り直す。
「ま、待ってなさい。すぐに見つけてきてあげるんだから」
「お? なになに? 茂手内と委員長、何話してんの?」
「おう、杉田。なんか委員長が調べてくれたんだけど、リリちゃんのミモレ村ってよくある感じのやつらしいぜ」
「ちょっと、ミモレ村じゃないわよ。ミニョレ村って言っていたじゃない。あんなに一生懸命説明してたんだから覚えてあげなさいよ」
「え? 委員長、リリちゃんの動画ちゃんと見たの?」
「な、何よ? あんなこと言われて気になっただけなんだから。別にリリちゃんがかわいいとか、そういうんじゃないんだからね!」
「まじかー、まさか委員長がリリちゃんの魅力を分かってくるなんて意外だったなー」
「な、何よっ!」
「おーい。ホームルーム始めるぞー」
三人の会話は入ってきた担任の教師によって遮られたのだった。
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学級委員長といえばメガネでツンデレなイメージです。
次回は二度目のコメント返し動画を撮影します。お楽しみに!
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