エロフに転生したので異世界を旅するVTuberとして天下を目指します

一色孝太郎

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第53話 炊き出しに参加してみた

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「異世界からこんにちは。リリス・サキュアです♪」

 ラ・トリエールの制服姿で元気よく挨拶をするリリスの後ろには、石造りの立派な教会が映し出されていた。

「今日はですね。なんとあの紫水晶アメジストの聖女レティシア様がやっているという炊き出しのお手伝いにやってきました。というわけで、早速登場してもらいましょう。聖女レティシア様です。どうぞ!」

 すると拍手と歓声のSEが流れ、画面の端からレティシアが画面に入ってきた。レティシアの下にはきちんとテロップで名前が表示されており、リリスの動画編集スキルの向上も見てとれる。

「レティシア様、今日はよろしくお願いします」
「ええ、よろしくお願いいたしますわ」

 レティシアはまさに聖女といった雰囲気を身に纏い、穏やかな微笑みを浮かべている。

「それでレティシア様、今日の炊き出しとはどのようなことをするんでしょうか?」
「炊き出しとは試練に直面され、余裕のなくなってしまった方々に豊穣の神アスタルテ様の慈悲をお配りし、試練を乗り越えていただくための糧としていただくための行為です。具体的には教会に寄付されたものを利用し、食事を無料で配布いたしますわ」
「食事をですか?」
「ええ。イストレアでは、いえ、この国では仕事がなかったり、怪我や病気などで働けなくなるなどしてその日の暮らしに困る方々が多くいらっしゃいます。そういった方々に寄り添うのも、わたくしたちアスタルテ教会の役目なのですわ」
「そうなんですね!」

 よどみなくすらすらとアスタルテ教会の意義を説明するレティシアに対し、いかにも台本を読んでいそうな感じでリリスが相槌を打つ。

「ところでリリスさん、そちらの服装はどうされたんですか?」
「はい! 実はですね。私、ラ・トリエールというパン屋さんで働いているんですけど、これはそこの制服なんです」
「まぁ、そうでしたか。とても人気のお店だとお聞きしたことがありますわ」
「知ってるんですか? ありがとうございます。それでですね。ラ・トリエールの店主さんにこの炊き出しの話をしたら、うちのパンを持って行けって言ってくださったんです。それがこちらです!」

 すると画面が少し引く。するとリリスの隣にこれでもかと大量のパンが入った大きな籠が置かれているのが映った。

「まあ、こちらのパンがそうだったのですね。わたくし、一体どうしたのだろうと思っていましたわ」

 レティシアはそう言ってクスリと笑う。

「はい。そうなんです。ちょっと食べてみます?」
「まあ、いいんですの?」
「もちろんです。というわけで、はい。こちらにカットした一番人気のミルクロールを用意してあります」

 リリスはパンの山の上に置かれていたお皿をレティシア様に差し出した。その上には一口サイズにカットされたミルクロールが乗せられている。

「まあ、これが……ありがとうございます」

 レティシアはそう言うと、お淑やかな仕草でミルクロールを口に運んだ。

「まあ、美味しいですわ。甘くてふわふわで、上品なミルクの香りします」

 そう言って微笑むレティシアの表情は幸せそうで、見ている者まで暖かい気持ちにさせてくれそうなオーラを漂わせている。

「これを食べたら困っている人たちも元気になってくれますかね?」
「ええ、きっと。きっと、勇気が出て、困難に立ち向かっていけるようになるはずですわ」

 レティシアは聖女然とした微笑みを画面に向けてくる。

「ありがとうございます。えへへ、レティシア様のお墨付きをいただきました。というわけで、今日はラ・トリエールのパンを持って炊き出しに行ってこようと思います!」

 すると画面が切り替わり、シスター風の格好をした女性たちがせわしなく働いている様子が映し出された。

 教会の脇には列の整理のためと思われるロープが張られ、そこを進んだ先には大きな鍋が火にかけられている。その脇では女性たちが野菜を刻んでいる。

「見てください。教会の人たちが準備をしています。今日のメニューは野菜と干し肉のスープに、ラ・トリエールのパンです。楽しみですね」

 リリスが鍋の近くに近づくと、女性たちが刻んだ野菜をまとめて鍋の中に入れた。ぐつぐつと白い湯気が立ちのぼる。

「私はですね。パンを配る係ですので、パンを切るお手伝いをしようと思います」

 リリスはそう言うと鍋から離れ、パンを切っている女性たちのところに近づいていく。

「おはようございます。お手伝いさせてください」
「ああ、あなたがリリスさんですね。よろしくお願いします。そこのナイフでパンをこのくらいの厚さで切ってください」
「わかりました」

 リリスはそう言うと手を魔法で出したであろう水で濡らして洗った。そして手を前に出すと、魔法なのだろうか? 手に残った水滴が集まって地面に落ちる。

「このくらいですね」
「そうそう……って、ちょっと、そんな危ない切り方しないで! 指を切りますよ!」

 リリスがパンを手のひらで押さえて切ろうとしたのを見て女性の一人が慌てて止める。

「え?」
「いいですか? ナイフを使うときはこうやって、指を立てて切ってください。そうじゃないと、指を切って怪我するかもしれませんよ」
「あ、そうなんですね。こうですか?」
「そう。上手いですよ」

 リリスは次々とパンを切っていき、やがてすべてのパンを切り終えた。

「終わりました。あ! もうたくさん人がやってきています!」

 画面が切り替わり、大勢の人が列に並んでいる様子が映し出された。並んでいる人たちはあまりきれいな身なりをしておらず、困窮しているであろうことが容易に想像できる。

「ついに始まりますね。パンを配るだけですけど、頑張ろうと思います」

 その声を待っていたかのように並んでいた人たちが陶器の器に盛られたスープを受け取り、次々とリリスの前に流れてくる。

「はい。パンです。どうぞ」
「あ、ああ。ありがとう……」

 受け取った男性の視線はパンでなくリリスの胸に釘付けになっていたが、リリスは気付いた様子もなくパンを手渡す。

 それからすぐに画面は早送りとなり、次々とパンを配っていく様子が映し出されている。

 最初のうちは困窮していそうな身なりの人たちが受け取っていたのだが、徐々に身なりが良くなっていき、ついにはどう見てもお金に困っていなそうな人たちまでパンを受け取っている。

 しかしリリスは特に気にした様子もなくパンを配り、ついにすべて配り終えた。

「ふぅ。なんだかあっという間でしたね。この後は、レティシア様が無償で怪我をした市民の治療をするそうなんですけど、そういうシーンを出すのはGodTubeの規約に引っかかってしまうみたいなので近くからはお伝え出来ません。あ、ほら! あそこの行列ですね」

 画面がそちらを向くと長い行列が出来ており、その先頭にはレティシアらしき女性の姿があった。レティシアはひざまずく先頭の老人に手をかざし、温かな光を老人に向けて放っている。

 やがて治療が終わったのか老人が離れ、次の人にまた温かな光を浴びせる。

「レティシア様はやっぱりすごいですよね。私もああいう治癒魔法が使えたら聖女リリス様って、なるんでしょうかねぇ? あ! ちょっと似合わないですかね? えへっ」

 そうしてリリスが可愛らしく笑ったところで画面はゆっくりとフェードアウトしていく。

 そして次に画面が戻ってくると、オープニングのように教会の前でリリスとレティシアが並んで立っていた。

「というわけで、今日はレティシア様のお手伝いをして、炊き出しをしてみました。レティシア様、今日はありがとうございました」
「こちらこそありがとうございました。本当に助かりましたわ」
「いえいえ、こちらこそ貴重な経験をさせていただきありがとうございました。この動画のご覧の皆さんはぜひ、コメント欄で感想とか、教えてもらえると嬉しいです」

 リリスはそう言って両手を胸の高さまで上げ、人差し指を下に向けて上下させる。

「いいねボタン、チャンネル登録もよろしくお願いします。それじゃあ、また会いにきてくださいね。バイバーイ」

 リリスが笑顔で右手を振り、レティシアもそれに合わせて微笑んだところで動画は終了するのだった。
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