エロフに転生したので異世界を旅するVTuberとして天下を目指します

一色孝太郎

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第73話 日本では……(15)

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「おーい! 茂手内!」
「お! おはよう。細川、なんかあったのか?」

 登校してきた剛を下駄箱で見つけた細川が駆け寄ってきた。

「なあ! リリちゃんが今朝、ライブしたらしいぜ!」
「え? マジで!?」
「マジ! なんか、西川が配信見たらしいんだよ」

 それを聞いた剛は大慌てで鞄の中から自分のスマホを取り出した。

「うわぁ、本当だ。通知入ってるじゃん! おやすみモードにしてたから……って、朝六時かよ! 寝てるわ!」
「だよなぁ。なんで西川そんな時間に起きてたんだよ」

 悔しがる二人を他の登校してきた生徒たちが不思議そうに見守っている。

「くそぉ、次も朝早いのか?」
「いや、そうじゃないっぽい。なんか時差あるらしくてさ」
「時差?」
「そう。リリちゃんのところ、お昼なのにこっちは早朝だったからびっくりしたって」
「マジか。リリちゃん、海外なのかぁ」

 剛がそう言うと、登校してきた藤田が声を掛けてきた。

「おはよう、二人とも」
「あ、委員長。おはよう」
「ええ。でも、あんまりここで立ち話をしてたら迷惑よ」
「え? あ、そうだった。ごめん」

 藤田はテキパキと上履きに履き替える。

「あ、そうそう。それとね。さっきあなたたちが話していた件だけど、リリちゃんはアメリカの西海岸かハワイあたりから配信してるんじゃないかしら?」
「え?」
「カナダやアラスカかも知れないけど、時差を考えるとあの辺りのはずよ」
「……委員長、もしかして?」

 剛が恐る恐るといった様子で訪ねると、藤田は勝ち誇ったような笑みを浮かべる。

「もちろん、生で見たわよ。名前も読み上げてもらったわ」
「マジで!?」
「あんな朝早かったのに!?」
「ちょっと! 大声出さないでよ」
「あ……ごめん」
「ほら、早く上履きに履き替えて。教室行くわよ」
「お、おう」

 藤田に促され、剛たちは上履きに履き替えると教室を目指して歩いていく。

「それで委員長。配信はどうだったんだ?」
「え? どうもこうも、ライブは初めてだったわけだし、色々と準備がちゃんとできてない感じだったわね。でも、コメントを丁寧に拾ってくれてたのは好感が持てたわ。なんていうか、視聴者を大切にしてくれそうな人っていう印象かしら」
「マジか……」
「それで委員長、リリちゃんは大丈夫そうなの?」
「え? なんのこと?」

 細川の質問に藤田は眉をひそめる。

「ちゃんねる0.5でリリちゃんの配信が終わるかもって言われてて」
「え? どうしてそんな話になるの?」
「いや、だって、あのレベルのグラで毎回作り込んで配信するなんて滅茶苦茶お金かかるから、GodTubeの収益程度じゃ無理だって。で、今回ライブを始めてスパチャで稼ごうとしてるんじゃないかって言われてて……」
「ああ、そういうこと。それでライブ中に危機とかわけのわからないことを言っている人がいたのね」
「マジか。リリちゃんにそれをちょくで聞いたやつがいるんだ」
「いたわよ。でも、リリちゃんはなんのことだか分かっていないっぽかったわね。リリちゃんは一人でやっているって言ってたし、すぐにお金が無くなってやめるなんてことはないんじゃないかしら?」
「そ、そっか……」
「大体、お金に困っているならスパチャの設定忘れるなんてあるわけないわ」
「え? スパチャの設定忘れる?」
「そう。リリちゃん、コメントで指摘されるまでスパチャのことなんて頭になかったみたいよ。スパチャが送れないって言われてから確認してたわ」
「マジか……」
「しかもスパチャは次回からって言ってたし、お金のことはそこまで気にしていないんじゃない? グラフィックもいつもどおりだったし、もう実写って言われても納得しそうなレベルだったわ。そこまでグラフィックを作り込めるんだから、お金がないなんてことはないんじゃない?」
「そっか。ああ、良かった」

 細川はほっと胸を撫でおろした様子だ。

「じゃあさ、委員長」
「なあに? 茂手内くん」
「リリちゃんって結局何者なのかな?」
「え?」
「だって、委員長は昔リリちゃんはなんかのプロモーションだって言ってたでしょ?」
「そうね。でも今はそんな雰囲気はないわね」
「でしょ? でもアメリカから日本向けに配信してるってどういうことなんだろう?」
「そうね……」

 藤田は真剣な表情になり、虚空を見つめる。

「誰も名乗り出ないって言うことは、やっぱりお金持ちの道楽なのかもしれないわね。企業がやっているならさすがにもう名乗り出てくるでしょうし」
「あー、道楽かぁ。なるほどなぁ」
「案外、日本のアニメが大好きな大富豪がやらせているのかもしれないわね」
「なるほど」

 そんな会話をしているうちに剛たちは教室へと到着した。

「あ! 委員長、おはよう! 今日の日直なんだけど……」

 教室に入るなり藤田はクラスメイトの女子に話しかけられる。

「うん。おはよう。茂手内くん、細川くん、またね。それで、日直がどうしたの?」

 藤田は剛たちに別れを告げ、声を掛けてきた女子と一緒に歩いていく。

「俺らも座るか。西川が見たってことは……」
「ああ、放課後だな」

 剛たちはそう言うと、それぞれの席へと向かうのだった。

◆◇◆

 その日の放課後、屋上に集まった剛たちの前で西川が朝のライブのことを自慢気に話していた。

「でさ。リリちゃん、マジで可愛かったんだよ。しかも俺らのコメント丁寧に拾ってくれてさ」
「おう」
「ほら! これとかどうよ?」

 西川が自慢気に差し出したスマホの画面には、早朝のライブで設定を確認しているらしいリリスの姿が映し出されている。

「え? 何これ? 何やってるの?」
「スパチャの設定を確認してるリリちゃん」
「うおっ。じゃあ、マジでスパチャの設定がオフになってたわけ?」
「ああ、マジマジ。おかげでリリちゃん金欠説は一気に吹っ飛んだってわけ」
「うおおお、やったぜ」
「やっぱ委員長の言ってたとおりなのか」
「は? 委員長も?」
「ああ。委員長、ライブで見てたらしいぜ。名前も読み上げてもらったって」
「マジかぁ。この学校では俺だけだと思ってたのに」

 西川はそう言うと、頭を抱えてオーバーなリアクションをしながら悔しがる。

「おーい、お前ら」
「お! 山本! おせぇぞ」
「いやー、わりぃわりぃ。ちょっと担任に捕まっててさ。それより聞いてくれよ。俺、今朝のライブでリリちゃんに名前、読み上げてもらったんだよね!」
「は!?」
「お前も見てたの?」
「おう! なんつーか、こう、虫の知らせ? よく分かんねーけど朝早くに目が覚めたと思ったらいきなり通知鳴って……って、え? も、って俺だけじゃねえの? 見たの」
「俺は見てたぜ」
「あと委員長も見たらしい」
「マジか。俺だけだと思ってたのに……」

 山本も西川と同様に、頭を抱えてオーバーなリアクションをしながら悔しがるのだった。
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