陽だまりキッチン、ときどき無双~クラス転移したけどかわいい幼馴染とのんびり異世界を観光します~

一色孝太郎

文字の大きさ
46 / 54

第46話 Side. サラ(6)

しおりを挟む
 乱闘が始まり、数時間が経過した広場は惨憺さんたんたる有り様となっていた。大勢の男たちが血を流して倒れており、さらに今もなお乱闘が継続しているのだ。

「くそっ! 俺たちは無実の神官様をお助けするんだ!」
「そうだ! 実力行使だ! 神に逆らう不届き者を処罰しろ!」
「そうだそうだ!」
「させるか!」
「聖女様に無礼を働いた奴を許すわけにはいかねぇ!」
「処刑だー!」
「ふざけるな! 神官様は無実だって評議会議員が言ってたぞ!」
「じゃあなんで牢屋に入ってんだ!」
「だから冤罪えんざいだって言ってんだろうが! いい加減わかれ!」
「冤罪なわけあるか! 聖女様はぐあっ!?」
「おい! 刺されたぞ! おい! 大丈夫か!?
「お前! 何やってんだ!」
「うるせぇ! 言って分からねぇならこうするしかねぇだろ!」
「なんだと!? もう許さねぇ。お前ら! 武器を持ってこい!」
「おい! こっちもだ! 負けるな!」

 こうしてついには武器を用いた流血沙汰が起き、大規模な武力衝突にまで発展していく。

 一方、そんな騒ぎが起きているとは夢にも思っていないダニエラは、町長公邸の執務室で必死に考えていた。

「聖女様に残っていただくには、やはり町の者たちがどれほど聖女様を歓迎しているかをお示しする必要があるはず。やっぱり盛大な歓迎式典? それとも豪華な晩餐? でも、あれほどの美貌をお持ちのお方にご満足いただけるかしら?」

 ダニエラは眉間に皺を寄せながらブツブツと独り言をつぶやくが、すぐに首を横に振った。

「ダメだわ。うちの町は貧しいし、もう女が二人しか残ってない限界集落だもの。きっとそういう物質的なところじゃ勝ち目がないわ。だったらせめて真心だけは示して、クラインボフトも悪くないって思ってもらわなきゃ。うん、それしかないわ」

 ダニエラはベルを鳴らす。するとすぐに執事の男が入ってきた。

「失礼します。お呼びでしょうか?」
「ええ。緊急で臨時評議会を招集するわ」
「え? ですがホルスト様は現在収監されております。評議会は全員出席が慣例では……」
「議員が一人いなくても開催できるでしょう? 聖女様に関する話よ。今すぐ! 全員を招集なさい!」
「かしこまりました」

 執事は一礼すると、足早に退室していくのだった。

◆◇◆

 それから一時間ほどが経った。

 執務室で評議会開催の連絡を待っているダニエラは、しびれを切らしたのか再びベルを鳴らした。

 だが普段であればすぐにやってくるはずの執事が入ってこない。

 ダニエラはなんどもベルを鳴らし、ようやく執事がやってきた。かなり急いで来たようで、額に汗をかき、肩で大きく息をしている。

「どういうこと? なんでまだ評議会が開催されないの? 聖女様に関する緊急の話って言ったわよね!?」
「はぁはぁはぁ。はい、そのようにお伝えしているのですが……」
「じゃあなんで!」
「半数の評議会議員の方は出席を拒否され、残る方々とは連絡が取れません」
「はぁ!? どういうこと!?」
「まだ詳しくは把握できていないのですが、どうやら一部の民衆が暴徒化したようでして……」
「え? 何それ? 暴動が起きたってこと?」
「いえ、住民同士が二つのグループに分かれて争っているようです」
「え? じゃあ男同士の喧嘩?」
「いえ、そんな規模ではないようです」
「どういうこと?」
「申し訳ございません。まだ状況が把握できておりません。ただ、出席を拒否された評議会議員の方々が事態の収拾に当たっているそうでして、いつもどおり任せてほしいとのことでした」
「いつもどおり……そうね……」
「では、臨時評議会のご招集は取りやめる、ということでよろし――」
「よろしいわけないでしょう!」

 ダニエラは怒りを爆発させた。

「警備隊に招集を掛けなさい! 聖女様がいらしているこのタイミングで暴れた馬鹿どもを全員逮捕しなさい! 私が直々に出ます!」
「えっ? ですが……」
「何? 文句あるの?」

 ダニエラは執事をギロリとにらんだ。その眼力に執事は体を硬くし、小さく息を呑んだ。

「行くわよ」

 ダニエアは立ち上がり、警備隊の本部へと向かうのだった。

◆◇◆

 ふう。ふう。やっぱりこの体、本当に体力がないわ。

 ちょっと町の中をちょっと散歩しただけでこんなに足がくたくたになるだなんて、思わなかったわ。

 うーん。やっぱりそこの筋肉ダルマにお姫様抱っこしてもらおうかしら?

 筋肉ダルマだけあって、安定感は抜群なのよね。

 って、あれ? なんか向こうが騒がしいわね。何かしら?

 行ってみましょ。

「っ!? 聖女様! あちらは危険な感じがします!」
「えっ? そぉなんですかぁ?」
「はい。ちょっと見て参りますので、ここでお待ちください」

 そう言って地味顔が走って行ったわ。

 って、あれ? なんかものすごい顔で戻ってきたけど?

「聖女様! すぐにこの場から離れてください! あちらでは大規模な乱闘が起きています」
「えっ?」
「怪我人も多く、もしかすると聖女様がお怪我をされてしまうかもしれません」

 乱闘? ってことはもしかしてチャンスじゃない?

「あのぉ、それってぇ、もしかしてぇ、怪我をぉ、しちゃってる人がぁ、いるんですかぁ?」

 あれ? ちょっと、地味顔。その顔、何? 口をあんぐり開けちゃって。

 あはは、すごい馬鹿っぽーい。

「聖女様、もしや、怪我人を治療なさろうと?」
「はぁい。だってぇ、怪我をぉ、したらぁ、痛くてぇ、かわいそぉじゃないですかぁ」
「「「せっ、聖女様……」」」

 あ、冒険三兄弟の声がそろった。ホントに兄弟みたい。おもしろーい。

「お任せください! 俺たちが命に代えてでも、聖女様をお守りします」
「はぁい。じゃあぁ、行きましょぉ」

 地味顔を先頭にして、乱闘の現場に来たんだけど……これ、乱闘ってレベルじゃなくない?

 なんでみんな武器なんて持ってるの? しかも、なんで二手に分かれて戦ってるのよ?

 っていうか、何人いるのよ!?

 大丈夫? 死人、出てない? あっちこっちで血まみれの人が倒れてるし……。

「お前らー! 聞けー!」

 わっ! 地味顔、ものすごい声量ね。あたしには無理だわぁ。

「乱闘の理由は知らん! 止めもしない! だが! 聖女様がー! 怪我人をー! 治療してー! くださるとー! 仰っている! 手遅れになる前に! 怪我人をー! こっちに運べえええぇぇぇ!」

 あれ? 乱闘が止まったわね。

 地味顔、やるじゃん。

 でも、怪我人を運んで来てはくれないみたいね。

 ま、いきなり言われても信じられないわよね。

 じゃあ、そこで血を流してる小汚いおっさんで見せてあげましょうか。あたしの歴代最高の聖女の神聖力を。

 さあ、あんたら、ちゃあんと見てなさいよ!

================
 次回更新は通常どおり、2024/03/21 (木) 18:00 を予定しております。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

クラスまるごと異世界転移

八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。 ソレは突然訪れた。 『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』 そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。 …そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。 どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。 …大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても… そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

妖精の森の、日常のおはなし。

華衣
ファンタジー
 気づいたら、知らない森の中に居た僕。火事に巻き込まれて死んだはずだけど、これってもしかして転生した?  でも、なにかがおかしい。まわりの物が全部大きすぎるのだ! 草も、石も、花も、僕の体より大きい。巨人の国に来てしまったのかと思ったけど、よく見たら、僕の方が縮んでいるらしい。  あれ、身体が軽い。ん!?背中から羽が生えてる!? 「僕、妖精になってるー!?」  これは、妖精になった僕の、ただの日常の物語である。 ・毎日18時投稿、たまに休みます。 ・お気に入り&♡ありがとうございます!

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

Gランク冒険者のレベル無双〜好き勝手に生きていたら各方面から敵認定されました〜

2nd kanta
ファンタジー
 愛する可愛い奥様達の為、俺は理不尽と戦います。  人違いで刺された俺は死ぬ間際に、得体の知れない何者かに異世界に飛ばされた。 そこは、テンプレの勇者召喚の場だった。 しかし召喚された俺の腹にはドスが刺さったままだった。

処理中です...