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第67話 コーデリア峠の戦い(後編)
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「……まさかの事態ですな」
ハロルドは大炎上するシェウミリエ帝国軍の偽の陣地を尾根から眺めていた。
「え? もしかしてあんな挑発に乗って魔族の部隊が突っ込んだんですか?」
「そのようですぞ。銅鑼の音もかすかに聞こえましたからな」
「いやぁー、まさかの事態っすね。どうするんすか? プラン変更っすか?」
「そうであるな。これより我が隊は作戦目標を変更、ジャーミー峠(※コーデリア峠のシェウミリエ帝国名)に巣食う魔族どもの砦を襲撃し、その機能を停止させる」
「はっ!」
そうしてハロルド率いる聖騎士と将司はすさまじい速さでコーデリア峠の砦を目指すのだった。
◆◇◆
「何? 勝手に出撃した者がいるだと!? ふざけるな!」
報告を受けたブライアンは夜中だというのに大声を張り上げた。
「どこの馬鹿だ!」
「そ、それが……今年入隊したばかりの新兵たちです。ラントヴィルでの虐殺にかなり憤っていたようで……」
「馬鹿者がっ!」
ブライアンは机を両掌でバシンと強く叩いた。
「儂だって今すぐにでも連中を皆殺しにしてやりたいのを我慢しているというのにっ!」
ブライアンは怒り心頭のようで、バシバシと何度も机を叩く。
「そ、それで、いかがいたしましょう?」
「……命令違反は重罪だ。戻ってきたら軍法会議だ」
「あの、救援は?」
「出さん。シェウミリエの連中には何か策があるはずだ。むざむざと死地に飛び込むなど、愚か者のすることだ」
ブライアンはそう言うと椅子にドカッと座り、次の指示を出した。
「戸締りを厳重にせよ! シェウミリエの連中だけでなく、命令違反をした馬鹿どもも入れるな!」
「ははっ!」
部下の男が敬礼をしてブライアンの執務室を出ようとしたちょうどそのとき、砦に爆発音が鳴り響いた。
「何事だ!」
「わ、わかりません!」
「何を言っているのだ! さっさと情報を集めてこい! 緊急事態だろうが!」
ブライアンは部下の男を怒鳴りつけると即座に剣を持ち、司令室へと向かった。
そうしてブライアンが司令室に駆け込むと、数人の魔族の兵士たちが集まっていた。
「状況は?」
「何者かが砦に侵入しました。どうやら通用口の扉の鍵が掛かっていなかったようです」
「何!? 命令違反の馬鹿どもか!」
「恐らくは」
「で、侵入者の数は?」
「白い鎧を着た戦士がおよそ五十です。ですがかなりの手練れのようです」
「何だと? 今、白い鎧を着た手練れと言ったか?」
「は! 白い鎧を着た手練れの戦士が五十です!」
「ちっ」
ブライアンはそう言って舌打ちをした。
「そいつらはおそらく聖導教会の聖騎士だ。やつらは手ごわいうえに、魔族というだけで無条件に殺すことを是としている狂信者だ。必ず複数人で囲い込んで戦え!」
「ははっ!」
「それから、連中の最高戦力を見つけろ! 儂がそいつを殺る!」
「ははっ!」
「……ここは、コーデリア峠は抜かせんぞ」
ブライアンは強い怒りをその目に宿し、そう呟いたのだった。
◆◇◆
コーデリア峠の砦に侵入した将司たちは、大量の食糧が備蓄された部屋を発見した。
「ああ、ありましたぞ。さあ、ショーズィ殿。燃やすのですぞ」
「はい」
将司は躊躇なく火球を撃ち込んだ。
すると積み上げられていた油に引火し、瞬く間に燃え広がる。
「これで大体全部っすかね?」
「だといいですけど……」
ブラッドリーの言葉に将司は曖昧な相槌を打った。
「これだけ物資を失えばしばらくは戦えないはずですぞ」
「そうっすね」
「さあ、早くこの場を離れるのですぞ。残るは門の破壊ですぞ」
「はいっす」
「わかりました」
そうして将司たちが倉庫の前を離れて数分すると、突如倉庫で大爆発が発生する。
それを契機に砦内は一気に緊張に包まれる。
「思ったより早かったですな。急ぎ、任務を達成するのですぞ」
「はい!」
将司たちは自分たちの行く手を遮る門の破壊を目指して砦内を駆け抜けるが、そんな彼らの前に魔族の兵士が立ちはだかる。
「なっ!? 侵入者だ!」
「こいつら!」
魔族の兵士は岩の槍を放つが、戦闘を走るブラッドリーが白銀に輝く盾でそれを受け止めた。すると岩の槍は瞬く間に霧散する。
「なんだと!?」
「はっ! 魔法ばかりに頼るからそうなるんすよ!」
すり抜けざまにブラッドリーは剣を一閃し、あっさりと魔族の兵士を斬り伏せた。
将司たちは表情も変えずに倒れた魔族の兵士の脇を抜け、門へと走っていく。
そうして魔族の兵士たちを次々と切り伏せて門の前に辿りついた将司達だったが、そこには二十人ほどの魔族の兵士が待ち構えていた。
「逃げられると思うなよ!」
そう言うと、魔族の兵士たちは一斉に火球を放ってきた。
しかし聖騎士たちは白銀に輝く盾を前に構え、火球に向かって突っ込んでいく。
「馬鹿め!」
魔族の兵士たちは勝ち誇ったような表情を浮かべるが、すぐにその表情を一変させることとなった。
先ほどの土の槍と同様に、盾に当たった瞬間に火球が霧散してしまったのだ。
魔法が消えたことに動揺した兵士たちは距離を詰めてきた聖騎士たちに成すすべなく切り捨てられていく。
「さあ、ショーズィ殿。やるのですぞ」
「はい!」
将司は固く閉ざされた門に手を当てると、思い切り魔力を解放した。
ドォォォン!
すさまじい音と共に門は一撃で崩れ落ちた。
「ハロルドさん、他も!」
「そうですな。あの柱を破壊するのですぞ」
「わかりました」
将司は近くの太い柱を次々と破壊していく。
「ショーズィ殿、もう十分ですぞ。巻き込まれますぞ!」
「はい!」
将司は急いでその場を離れ、シェウミリエ帝国方面へと脱出した。
それからすぐにコーデリア峠の砦は轟音を立てて崩れ落ちたのだった。
ハロルドは大炎上するシェウミリエ帝国軍の偽の陣地を尾根から眺めていた。
「え? もしかしてあんな挑発に乗って魔族の部隊が突っ込んだんですか?」
「そのようですぞ。銅鑼の音もかすかに聞こえましたからな」
「いやぁー、まさかの事態っすね。どうするんすか? プラン変更っすか?」
「そうであるな。これより我が隊は作戦目標を変更、ジャーミー峠(※コーデリア峠のシェウミリエ帝国名)に巣食う魔族どもの砦を襲撃し、その機能を停止させる」
「はっ!」
そうしてハロルド率いる聖騎士と将司はすさまじい速さでコーデリア峠の砦を目指すのだった。
◆◇◆
「何? 勝手に出撃した者がいるだと!? ふざけるな!」
報告を受けたブライアンは夜中だというのに大声を張り上げた。
「どこの馬鹿だ!」
「そ、それが……今年入隊したばかりの新兵たちです。ラントヴィルでの虐殺にかなり憤っていたようで……」
「馬鹿者がっ!」
ブライアンは机を両掌でバシンと強く叩いた。
「儂だって今すぐにでも連中を皆殺しにしてやりたいのを我慢しているというのにっ!」
ブライアンは怒り心頭のようで、バシバシと何度も机を叩く。
「そ、それで、いかがいたしましょう?」
「……命令違反は重罪だ。戻ってきたら軍法会議だ」
「あの、救援は?」
「出さん。シェウミリエの連中には何か策があるはずだ。むざむざと死地に飛び込むなど、愚か者のすることだ」
ブライアンはそう言うと椅子にドカッと座り、次の指示を出した。
「戸締りを厳重にせよ! シェウミリエの連中だけでなく、命令違反をした馬鹿どもも入れるな!」
「ははっ!」
部下の男が敬礼をしてブライアンの執務室を出ようとしたちょうどそのとき、砦に爆発音が鳴り響いた。
「何事だ!」
「わ、わかりません!」
「何を言っているのだ! さっさと情報を集めてこい! 緊急事態だろうが!」
ブライアンは部下の男を怒鳴りつけると即座に剣を持ち、司令室へと向かった。
そうしてブライアンが司令室に駆け込むと、数人の魔族の兵士たちが集まっていた。
「状況は?」
「何者かが砦に侵入しました。どうやら通用口の扉の鍵が掛かっていなかったようです」
「何!? 命令違反の馬鹿どもか!」
「恐らくは」
「で、侵入者の数は?」
「白い鎧を着た戦士がおよそ五十です。ですがかなりの手練れのようです」
「何だと? 今、白い鎧を着た手練れと言ったか?」
「は! 白い鎧を着た手練れの戦士が五十です!」
「ちっ」
ブライアンはそう言って舌打ちをした。
「そいつらはおそらく聖導教会の聖騎士だ。やつらは手ごわいうえに、魔族というだけで無条件に殺すことを是としている狂信者だ。必ず複数人で囲い込んで戦え!」
「ははっ!」
「それから、連中の最高戦力を見つけろ! 儂がそいつを殺る!」
「ははっ!」
「……ここは、コーデリア峠は抜かせんぞ」
ブライアンは強い怒りをその目に宿し、そう呟いたのだった。
◆◇◆
コーデリア峠の砦に侵入した将司たちは、大量の食糧が備蓄された部屋を発見した。
「ああ、ありましたぞ。さあ、ショーズィ殿。燃やすのですぞ」
「はい」
将司は躊躇なく火球を撃ち込んだ。
すると積み上げられていた油に引火し、瞬く間に燃え広がる。
「これで大体全部っすかね?」
「だといいですけど……」
ブラッドリーの言葉に将司は曖昧な相槌を打った。
「これだけ物資を失えばしばらくは戦えないはずですぞ」
「そうっすね」
「さあ、早くこの場を離れるのですぞ。残るは門の破壊ですぞ」
「はいっす」
「わかりました」
そうして将司たちが倉庫の前を離れて数分すると、突如倉庫で大爆発が発生する。
それを契機に砦内は一気に緊張に包まれる。
「思ったより早かったですな。急ぎ、任務を達成するのですぞ」
「はい!」
将司たちは自分たちの行く手を遮る門の破壊を目指して砦内を駆け抜けるが、そんな彼らの前に魔族の兵士が立ちはだかる。
「なっ!? 侵入者だ!」
「こいつら!」
魔族の兵士は岩の槍を放つが、戦闘を走るブラッドリーが白銀に輝く盾でそれを受け止めた。すると岩の槍は瞬く間に霧散する。
「なんだと!?」
「はっ! 魔法ばかりに頼るからそうなるんすよ!」
すり抜けざまにブラッドリーは剣を一閃し、あっさりと魔族の兵士を斬り伏せた。
将司たちは表情も変えずに倒れた魔族の兵士の脇を抜け、門へと走っていく。
そうして魔族の兵士たちを次々と切り伏せて門の前に辿りついた将司達だったが、そこには二十人ほどの魔族の兵士が待ち構えていた。
「逃げられると思うなよ!」
そう言うと、魔族の兵士たちは一斉に火球を放ってきた。
しかし聖騎士たちは白銀に輝く盾を前に構え、火球に向かって突っ込んでいく。
「馬鹿め!」
魔族の兵士たちは勝ち誇ったような表情を浮かべるが、すぐにその表情を一変させることとなった。
先ほどの土の槍と同様に、盾に当たった瞬間に火球が霧散してしまったのだ。
魔法が消えたことに動揺した兵士たちは距離を詰めてきた聖騎士たちに成すすべなく切り捨てられていく。
「さあ、ショーズィ殿。やるのですぞ」
「はい!」
将司は固く閉ざされた門に手を当てると、思い切り魔力を解放した。
ドォォォン!
すさまじい音と共に門は一撃で崩れ落ちた。
「ハロルドさん、他も!」
「そうですな。あの柱を破壊するのですぞ」
「わかりました」
将司は近くの太い柱を次々と破壊していく。
「ショーズィ殿、もう十分ですぞ。巻き込まれますぞ!」
「はい!」
将司は急いでその場を離れ、シェウミリエ帝国方面へと脱出した。
それからすぐにコーデリア峠の砦は轟音を立てて崩れ落ちたのだった。
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