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(31)ウルリック3 ☆
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「どのみち、あなたに残された選択肢は多いとは言えません」
「…私にどうしろって言うんですか?」
「実験に協力してください。すべてはそれからです」
「…嫌です。何と言われようと、あなたのこと好きになれないから。それにどんな形でも、やっぱりガイアを裏切れません」
「…そうですか。残念です」
「私、これで失礼します」
私は今度こそ席を立った。
書斎を出て行こうとする私の肩越しに、ウルリックが顔を寄せてきて、スン、と鼻から息を吸い込むような仕草をした。
「な、何ですかっ?!」
「いえ、主が、あなたを抱くといつも良い香りがすると言っていたものですから」
「そんなのしませんよ。ガイアだけです、そんなこと言うの…っていうか、そんなことまで聞いてるんですか?」
「ええ。事細かに話してくださいますよ。あなたの体のどこに奴隷番号が書かれているのかも知っています」
「…!」
顔がカ~ッと赤くなった。
信じらんない。
そんなことまで話してるなんて…!
「そんな風に話されると、抱きたくなりますよね」
ウルリックはにこやかな笑顔を作った。
彼の手が私の頬に触れただけで、ゾッとした。
「やだ!触らないで」
彼の手から逃れようとした。
だけど、どういうわけか、足がもつれて体が言うことを聞いてくれない。
「あ…あれ…?足が…」
「…ようやく効いてきたようですね」
立っていられなくなって、体がグラリと後ろへ傾く。
「ふむ、効果が出るまで四十分程度というところですか」
「まさか…さっきのお茶に…何か…?」
私はウルリックの腕の中に倒れかかった。
「ええ。申し訳ないとは思いましたが」
「最初から、そのつもりだったんですか…」
「もちろん、同意を取ってからとは思っていましたよ」
「体が痺れて…動かない…」
「意識は奪わずに四肢の自由だけを奪うという秘薬を調合しました。お茶に含まれる成分と交じり合うと、媚薬の効果もあるそうですよ」
「う…そ…」
彼は私の体を抱き留めながら、囁くように言った。
「奴隷商人が良く使う手です。こうして体の自由を奪えば商品を傷つけずに味見できますからね。まあ嫌がる反応を楽しみたいという連中も多いですが、私は乱暴は好みません」
「や、やめて…」
「大丈夫、効果は数時間で消えます。その間に済ませてしまいますから心配いりません」
「嫌、やめて…!こんなことして、ガイアになんていうつもり?」
「心配いりません。主も承知の上です」
え…?
耳を疑った。
「それ、どういうこと…?まさか…ガイアも知ってたっていうの…?」
「ええ。我が主も、実験の結果をお知りになりたいと思っているのです」
「嘘…!そんなはずない!」
嘘よ、嘘!
ガイアが私をこの人に抱かせようとしたなんて。
そんなの、信じない。
嘘よ…!
そういえば…出かける時、ガイアは「すまないな」って言っていた。
それにこの前ガイアが言ってた、頼み事って…まさか…このこと?
はじめから、私をウルリックに抱かせるつもりだったの…?
「嘘よ…」
「但し、あなたの同意を取ることが条件でした。けど、あなたが絶対にうんと言わないことは主もわかっていたはずですから、実質承諾したようなものです」
「…!」
「最初は眠らせて、あなたの気付かぬ間に事を済ませてしまおうかとも考えたのですが、それではあなたがどういう状態でどういう結果を得られるのかわかりませんし、実験の意味の半分を失ってしまいますから、仕方なくこのような手段を取らせていただきました」
ショックでウルリックの言葉が耳に入ってこなかった。
ただただ、ガイアが私をこの人に抱かせることを許したということが信じられなかった。
ウルリックは動けない私を抱えて床に横たえた。
「やめて…」
「力づくで言うことをきかせることは禁じられていましたから、こんな卑怯な手を使うことを思いついてしまいました。騙したようで申し訳なく思っています」
不意に、避妊香の香りが鼻を突いた。
ウルリックが円卓の上で香を焚いているんだ。
「…何をするつもり?」
彼は、抵抗できない私の上に馬乗りになった。
「何って、セックスですよ」
「お願い、本当にやめて!」
「主の気が変わらないうちに、済ませてしまいましょうか」
ウルリックは私の言葉に耳を貸さず、私の服のボタンを器用に一つずつ外していった。
なんとかして逃げたいけど、手足がしびれてまったく動かせない。
彼が私の胸を開けさせると、首に着けていたネックレスの青い宝石が露わになった。
「ほう…、これが主から贈られたものですか。これを見ても執着ぶりがわかりますね。それに、こんなにしっかりと印が付けられて。たくさん愛されたんですね」
印って、もしかしてガイアの付けたキスマークのこと?
そんなところまで見られるなんて…!
下着まですべて脱がされ、剥き出しになった私の裸身を、ウルリックは視姦するように眺めた。
「小振りな胸だと聞いていましたが、色も形も綺麗だし、私はこれくらいがちょうどいいと思いますよ」
こんなんで褒められてもちっとも嬉しくない。
どうしてこんなことに…?
ガイア、助けて…!
彼は手のひらで乳房の形を楽しんだ後、指で胸の先を摘まむように転がした。
「こ…んなの、ダメ…」
「手足以外の感覚は生きてるはずです。少し気持ちよくして差し上げましょうか」
彼はおへそから下半身にゆっくりと指を這わせると、私の膝を立てて、左右に割るように広げた。
「や…いやぁ!」
こんな恥ずかしい恰好、ガイア以外の人に見られるなんて…!
「ああ、これですね。奴隷番号というのは」
そう言いながら、私の脚の付け根をまさぐる。
「ひっ!」
「確かに、こんな場所に刻まれていたら、興奮しますね」
私の体はまるで人形になったみたいに、他人の手によってしか動かせない状態になっていた。
そのくせ、性的な感覚は生きている。
彼の舌がくすぐったくそこを這うのがわかった。
「いつもこうして舐めてもらっているんでしょう?」
「やめて…!嫌!」
感じたくないのに、感じてしまう。
「綺麗に手入れされていますね。美しくて蠱惑的な女性器だ」
彼の両手が、私の秘唇を押し開いて、隅々まで眺めている。
「や、やめて…そんなとこ見ないで!変態!」
「まだあまり使い込まれていない、綺麗な色だ。陰核は小さめですかね」
そう言って彼は陰核を指先で転がすように弄り始めた。
「やっ!ダメ…!」
「濡れてきましたね。感じやすい体だ。ここを弄りながら、中も刺激しましょうか」
ウルリックの指が一本、中に入ってきた。
「ひっ」
「狭い穴だ。挿れやすいように、もう少し濡らしておきましょう」
「嫌ぁっ…」
長くて細い指が、私の内部を掻き回す。
その指が二本、三本と増やされる。
ガイアのとは違う、ゆっくりとしなやかな動きで内部を蹂躙する。
感じたくなくても私のそこは、じんわりと潤ってきてしまう。
「準備はいいようですね」
「やめて…お願い…」
仰向けになったままの私の目から涙がこめかみを伝って落ちた。
「泣くことはありませんよ。実験だと言ったでしょう…こんなことはただの作業です。あなたは気持ちよくなることだけを考えていればいい」
「嫌…!こんなの嫌よ…!あなた、おかしいわ!」
「おかしくないですよ。ちゃんと勃ってますから。さて、挿れますよ」
股間に何かが押し付けられる感覚があった。
上半身を起こすことができなくて、自分の下半身で何が行われているのか確認できないけど、わかる。
ウルリックが私の中に押し入ろうとしているんだ。
「嫌、助けて、ガイア…!!」
「目を瞑って、私を主だと思っていればいい」
「そんなの無理よ!」
このままじゃウルリックに犯されちゃう…!
ガイア…助けに来てよ!
私がこの人に抱かれるのを知ってて、どうして知らん顔して出て行ったの?
宝石くれたり、いい子で待ってろって言ったくせに。
なんで、他の人に私を渡しちゃうの…?
結婚するから、やっぱりいらなくなったの…?
こんなの強姦だよ…!
あんまりだ…!
私は涙を流しながらもぎゅっと目を瞑った。
ウルリックが私の内部に入ってくるのを覚悟した。
「ん…?おや、これは…」
ウルリックはそう言って、腰を引いた。
明らかに狼狽していた。
「うーん、これではダメですね」
何?
なぜ彼は止めたの?
何が起こっているのかわからない。
そうしている間に、ガチャ、と鍵の開く音がした。
カツカツ、と足音が近づいてくる。
私の寝かされている所からは、書斎の入口が見えなかった。
誰か入ってきた…?
誰?
ううん、誰でもいい、助けて。
「助けて、お願い…!」
私は声を振り絞って、助けを求めた。
「ウルリック様、そこまでですよ」
この声…。
「ユージン君」
そうだ、ユージンの声だ。
どうしてここに彼が?
「君は主と一緒に出掛けたんじゃなかったんですか」
「旦那様の命令で戻ってきたんですよ。ウルリック様を連れてこいって」
「…なんだ。やっぱり、気が変わったんですか」
「そうみたいです」
「そこまでご執心とは…」
「そういうわけなんで、その立派な持ち物、仕舞ってもらっていいですか?」
「仕方がないですね」
ウルリックは衣服を正して、私の上から立ち退いた。
代わりにユージンが傍にやって来て、私を見下ろした。
「サラちゃんのそういうとこ見るの、二度目だね」
「やだ、見ないで…!」
脚を開いてとんでもない恰好をしたまま寝そべっている姿を、彼の前に晒している。
ユージンに裸を見られるのは風呂場以来二度目だけど、やっぱり恥ずかしい。
なんでこんなとこばっかり出くわすんだろ…。泣きたい。
ユージンはそんな私を見て、何かに気付いた。
「あれ。サラちゃん、生理来ちゃったんだ?」
「え…?」
「すごいタイミングだね。ウルリック様、ビックリしたんじゃない?」
「嘘…!やだ、本当?今まで来てなかったのに、どうして…?」
「避妊香のせいだと思うよ。吸い続けてると生理遅れるんだってさ」
「そうなんですか…」
知らなかった。
そんな副作用があるなんて。
「…ああ、やっぱり生理だったんですか。突然出血したので、驚いてしまいました。それではどのみち香を焚いても続けることはできませんでしたね」
ウルリックは納得したという表情をした。
「ユージンさん、助けてください。なんとかしたいけど…体が…動かないんです…」
「待ってて。姉さん呼んでくるから」
ユージンはウルリックをチラッと見た。
「ウルリック様、女の子にこういうことするの、俺は反対ですからね」
「…ですね。連れて戻って構いませんよ」
「そうします。これじゃあんまりだ」
ユージンは自分の上着を脱いで私の体の上に掛けてくれた。
「サラさん、申し訳なかったですね。主のために、どうしても実験の結果を得たかったのです。こんな方法しか思いつかなかったことを許してください」
「…許せるわけない…!こんな酷いことして…ウルリックさんなんて嫌いです!」
「そうでしょうね」
口では謝っているけど、許してもらおうなんて思っていない口ぶりだった。
ユージンは私を上着にくるんで抱き上げた。
「ごめんね。こんな酷い事になっちゃって」
「…ガイア様の命令で、来てくれたんですか?」
「うん。旦那様、やっぱりサラちゃんが大事なんだよ。本当はご自分で来たかったんだと思うけど王都での予定が詰まってて戻るのは無理だったから、俺が代わりに来たんだ」
ユージンはそのまま私を部屋まで運んでくれた。
だけど私の中にはガイアに対する猜疑心が芽生えてしまっていた。
「…私にどうしろって言うんですか?」
「実験に協力してください。すべてはそれからです」
「…嫌です。何と言われようと、あなたのこと好きになれないから。それにどんな形でも、やっぱりガイアを裏切れません」
「…そうですか。残念です」
「私、これで失礼します」
私は今度こそ席を立った。
書斎を出て行こうとする私の肩越しに、ウルリックが顔を寄せてきて、スン、と鼻から息を吸い込むような仕草をした。
「な、何ですかっ?!」
「いえ、主が、あなたを抱くといつも良い香りがすると言っていたものですから」
「そんなのしませんよ。ガイアだけです、そんなこと言うの…っていうか、そんなことまで聞いてるんですか?」
「ええ。事細かに話してくださいますよ。あなたの体のどこに奴隷番号が書かれているのかも知っています」
「…!」
顔がカ~ッと赤くなった。
信じらんない。
そんなことまで話してるなんて…!
「そんな風に話されると、抱きたくなりますよね」
ウルリックはにこやかな笑顔を作った。
彼の手が私の頬に触れただけで、ゾッとした。
「やだ!触らないで」
彼の手から逃れようとした。
だけど、どういうわけか、足がもつれて体が言うことを聞いてくれない。
「あ…あれ…?足が…」
「…ようやく効いてきたようですね」
立っていられなくなって、体がグラリと後ろへ傾く。
「ふむ、効果が出るまで四十分程度というところですか」
「まさか…さっきのお茶に…何か…?」
私はウルリックの腕の中に倒れかかった。
「ええ。申し訳ないとは思いましたが」
「最初から、そのつもりだったんですか…」
「もちろん、同意を取ってからとは思っていましたよ」
「体が痺れて…動かない…」
「意識は奪わずに四肢の自由だけを奪うという秘薬を調合しました。お茶に含まれる成分と交じり合うと、媚薬の効果もあるそうですよ」
「う…そ…」
彼は私の体を抱き留めながら、囁くように言った。
「奴隷商人が良く使う手です。こうして体の自由を奪えば商品を傷つけずに味見できますからね。まあ嫌がる反応を楽しみたいという連中も多いですが、私は乱暴は好みません」
「や、やめて…」
「大丈夫、効果は数時間で消えます。その間に済ませてしまいますから心配いりません」
「嫌、やめて…!こんなことして、ガイアになんていうつもり?」
「心配いりません。主も承知の上です」
え…?
耳を疑った。
「それ、どういうこと…?まさか…ガイアも知ってたっていうの…?」
「ええ。我が主も、実験の結果をお知りになりたいと思っているのです」
「嘘…!そんなはずない!」
嘘よ、嘘!
ガイアが私をこの人に抱かせようとしたなんて。
そんなの、信じない。
嘘よ…!
そういえば…出かける時、ガイアは「すまないな」って言っていた。
それにこの前ガイアが言ってた、頼み事って…まさか…このこと?
はじめから、私をウルリックに抱かせるつもりだったの…?
「嘘よ…」
「但し、あなたの同意を取ることが条件でした。けど、あなたが絶対にうんと言わないことは主もわかっていたはずですから、実質承諾したようなものです」
「…!」
「最初は眠らせて、あなたの気付かぬ間に事を済ませてしまおうかとも考えたのですが、それではあなたがどういう状態でどういう結果を得られるのかわかりませんし、実験の意味の半分を失ってしまいますから、仕方なくこのような手段を取らせていただきました」
ショックでウルリックの言葉が耳に入ってこなかった。
ただただ、ガイアが私をこの人に抱かせることを許したということが信じられなかった。
ウルリックは動けない私を抱えて床に横たえた。
「やめて…」
「力づくで言うことをきかせることは禁じられていましたから、こんな卑怯な手を使うことを思いついてしまいました。騙したようで申し訳なく思っています」
不意に、避妊香の香りが鼻を突いた。
ウルリックが円卓の上で香を焚いているんだ。
「…何をするつもり?」
彼は、抵抗できない私の上に馬乗りになった。
「何って、セックスですよ」
「お願い、本当にやめて!」
「主の気が変わらないうちに、済ませてしまいましょうか」
ウルリックは私の言葉に耳を貸さず、私の服のボタンを器用に一つずつ外していった。
なんとかして逃げたいけど、手足がしびれてまったく動かせない。
彼が私の胸を開けさせると、首に着けていたネックレスの青い宝石が露わになった。
「ほう…、これが主から贈られたものですか。これを見ても執着ぶりがわかりますね。それに、こんなにしっかりと印が付けられて。たくさん愛されたんですね」
印って、もしかしてガイアの付けたキスマークのこと?
そんなところまで見られるなんて…!
下着まですべて脱がされ、剥き出しになった私の裸身を、ウルリックは視姦するように眺めた。
「小振りな胸だと聞いていましたが、色も形も綺麗だし、私はこれくらいがちょうどいいと思いますよ」
こんなんで褒められてもちっとも嬉しくない。
どうしてこんなことに…?
ガイア、助けて…!
彼は手のひらで乳房の形を楽しんだ後、指で胸の先を摘まむように転がした。
「こ…んなの、ダメ…」
「手足以外の感覚は生きてるはずです。少し気持ちよくして差し上げましょうか」
彼はおへそから下半身にゆっくりと指を這わせると、私の膝を立てて、左右に割るように広げた。
「や…いやぁ!」
こんな恥ずかしい恰好、ガイア以外の人に見られるなんて…!
「ああ、これですね。奴隷番号というのは」
そう言いながら、私の脚の付け根をまさぐる。
「ひっ!」
「確かに、こんな場所に刻まれていたら、興奮しますね」
私の体はまるで人形になったみたいに、他人の手によってしか動かせない状態になっていた。
そのくせ、性的な感覚は生きている。
彼の舌がくすぐったくそこを這うのがわかった。
「いつもこうして舐めてもらっているんでしょう?」
「やめて…!嫌!」
感じたくないのに、感じてしまう。
「綺麗に手入れされていますね。美しくて蠱惑的な女性器だ」
彼の両手が、私の秘唇を押し開いて、隅々まで眺めている。
「や、やめて…そんなとこ見ないで!変態!」
「まだあまり使い込まれていない、綺麗な色だ。陰核は小さめですかね」
そう言って彼は陰核を指先で転がすように弄り始めた。
「やっ!ダメ…!」
「濡れてきましたね。感じやすい体だ。ここを弄りながら、中も刺激しましょうか」
ウルリックの指が一本、中に入ってきた。
「ひっ」
「狭い穴だ。挿れやすいように、もう少し濡らしておきましょう」
「嫌ぁっ…」
長くて細い指が、私の内部を掻き回す。
その指が二本、三本と増やされる。
ガイアのとは違う、ゆっくりとしなやかな動きで内部を蹂躙する。
感じたくなくても私のそこは、じんわりと潤ってきてしまう。
「準備はいいようですね」
「やめて…お願い…」
仰向けになったままの私の目から涙がこめかみを伝って落ちた。
「泣くことはありませんよ。実験だと言ったでしょう…こんなことはただの作業です。あなたは気持ちよくなることだけを考えていればいい」
「嫌…!こんなの嫌よ…!あなた、おかしいわ!」
「おかしくないですよ。ちゃんと勃ってますから。さて、挿れますよ」
股間に何かが押し付けられる感覚があった。
上半身を起こすことができなくて、自分の下半身で何が行われているのか確認できないけど、わかる。
ウルリックが私の中に押し入ろうとしているんだ。
「嫌、助けて、ガイア…!!」
「目を瞑って、私を主だと思っていればいい」
「そんなの無理よ!」
このままじゃウルリックに犯されちゃう…!
ガイア…助けに来てよ!
私がこの人に抱かれるのを知ってて、どうして知らん顔して出て行ったの?
宝石くれたり、いい子で待ってろって言ったくせに。
なんで、他の人に私を渡しちゃうの…?
結婚するから、やっぱりいらなくなったの…?
こんなの強姦だよ…!
あんまりだ…!
私は涙を流しながらもぎゅっと目を瞑った。
ウルリックが私の内部に入ってくるのを覚悟した。
「ん…?おや、これは…」
ウルリックはそう言って、腰を引いた。
明らかに狼狽していた。
「うーん、これではダメですね」
何?
なぜ彼は止めたの?
何が起こっているのかわからない。
そうしている間に、ガチャ、と鍵の開く音がした。
カツカツ、と足音が近づいてくる。
私の寝かされている所からは、書斎の入口が見えなかった。
誰か入ってきた…?
誰?
ううん、誰でもいい、助けて。
「助けて、お願い…!」
私は声を振り絞って、助けを求めた。
「ウルリック様、そこまでですよ」
この声…。
「ユージン君」
そうだ、ユージンの声だ。
どうしてここに彼が?
「君は主と一緒に出掛けたんじゃなかったんですか」
「旦那様の命令で戻ってきたんですよ。ウルリック様を連れてこいって」
「…なんだ。やっぱり、気が変わったんですか」
「そうみたいです」
「そこまでご執心とは…」
「そういうわけなんで、その立派な持ち物、仕舞ってもらっていいですか?」
「仕方がないですね」
ウルリックは衣服を正して、私の上から立ち退いた。
代わりにユージンが傍にやって来て、私を見下ろした。
「サラちゃんのそういうとこ見るの、二度目だね」
「やだ、見ないで…!」
脚を開いてとんでもない恰好をしたまま寝そべっている姿を、彼の前に晒している。
ユージンに裸を見られるのは風呂場以来二度目だけど、やっぱり恥ずかしい。
なんでこんなとこばっかり出くわすんだろ…。泣きたい。
ユージンはそんな私を見て、何かに気付いた。
「あれ。サラちゃん、生理来ちゃったんだ?」
「え…?」
「すごいタイミングだね。ウルリック様、ビックリしたんじゃない?」
「嘘…!やだ、本当?今まで来てなかったのに、どうして…?」
「避妊香のせいだと思うよ。吸い続けてると生理遅れるんだってさ」
「そうなんですか…」
知らなかった。
そんな副作用があるなんて。
「…ああ、やっぱり生理だったんですか。突然出血したので、驚いてしまいました。それではどのみち香を焚いても続けることはできませんでしたね」
ウルリックは納得したという表情をした。
「ユージンさん、助けてください。なんとかしたいけど…体が…動かないんです…」
「待ってて。姉さん呼んでくるから」
ユージンはウルリックをチラッと見た。
「ウルリック様、女の子にこういうことするの、俺は反対ですからね」
「…ですね。連れて戻って構いませんよ」
「そうします。これじゃあんまりだ」
ユージンは自分の上着を脱いで私の体の上に掛けてくれた。
「サラさん、申し訳なかったですね。主のために、どうしても実験の結果を得たかったのです。こんな方法しか思いつかなかったことを許してください」
「…許せるわけない…!こんな酷いことして…ウルリックさんなんて嫌いです!」
「そうでしょうね」
口では謝っているけど、許してもらおうなんて思っていない口ぶりだった。
ユージンは私を上着にくるんで抱き上げた。
「ごめんね。こんな酷い事になっちゃって」
「…ガイア様の命令で、来てくれたんですか?」
「うん。旦那様、やっぱりサラちゃんが大事なんだよ。本当はご自分で来たかったんだと思うけど王都での予定が詰まってて戻るのは無理だったから、俺が代わりに来たんだ」
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