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第一章
回復士の授業
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先日の魔族討伐での一件で、騎士団からクレームがあったのか、次の日のデボラ先生の授業は、基本的なことから始まった。
そもそもこの世界には、元の世界とは違う理がたくさんある。
この世界の生き物すべての周りには『マギ』と呼ばれる粒子が取り巻いていて、人間や魔族はそのマギを使って魔法を使うことができるという。
マギには色があって、その属性によって色が違うみたい。火の属性なら赤、って感じで。
魔属性は魔族だけが持つ属性で、色は黒。人間が持っていない唯一の属性だ。
逆に聖属性は、人間だけが持てる属性で、色は白か白銀。魔族は持つことができない。
レナルドが云っていた、私のような黒い髪は魔属性を持つ者の特徴だという。だから人間には黒い髪の者はほとんどいない。
メイドさんが私を見るとき、ちょっと嫌な顔をするのはそのせいだ。
魔力の強い者は、このマギをたくさん身に纏うことができるということだ。
人間に比べて魔族はこのマギをたくさん纏うことができるといい、たいていの魔族は魔法が使える。
逆に人間は魔法を使えない者の方が多い。
そんな人間の中でも魔法を使える者は貴重で、どこかの騎士団に属するか、大司教公国へ来て魔法士になるケースが多いという。
デボラは、回復魔法がいかに重要かを説明してくれた。
自身が回復士であることへの自負からなのだろうけど、話を聞くとあながちそれだけでもないことがわかった。
「体力も魔力も魔族に劣る人間が、唯一魔族に優位にあるものが、回復魔法です」
デボラは得意気に言った。
「傷を治したり、体力や魔力を回復させたり、死者を蘇生したりできるのは聖属性魔法だけです。聖属性と対極にある魔属性を持つ魔族は、そもそも聖属性魔法を持つことはできません。また聖属性魔法である回復魔法を受け入れることもできません。つまり、魔族には回復魔法というものが存在しないのです」
「じゃあ魔族たちはどうやって怪我を治してるの?」
「各個人の持つ回復系スキルに頼るか、魔族専用の回復ポーションで回復するしかありません。しかも魔族専用ポーションは高価な上、連続使用ができないという粗悪品です。つまり事実上、魔族を癒す手段はほとんどない、ということになります」
たしかに、ゲームとかでも敵が回復魔法使うことってあんまりない気がする。
使うのはたいていボスキャラよね。
「なので、こちらが死なない限り、力の弱い者でもダメージを与え続ければ魔族を倒すことができるのです」
これはこの世界の常識のようだ。
すべての魔族は生まれながらに魔属性を持っているため、回復魔法が効かない。
だからどれだけ強い魔族でも長期戦になれば回復魔法を持つ人間が有利なのだ。
強い魔族と人間がこれまで対等に戦ってこれたのはひとえに回復魔法のおかげである。
この国の回復士は優秀な者が多いため、ほかの国からもスカウトが頻繁にくると、デボラは自慢していた。
魔族は人間に比べてかなり長命らしく、1000年以上生きる者も珍しくないそうだ。
魔力の強い者は総じて長命の傾向があるという。
彼らは若い肉体を保ったまま長い年月を重ね、魔力が尽きると死ぬと云われている。
魔王に至っては寿命はなく不老不死なのだが、それは例外中の例外で、長命な魔族といえども、不死身ではない。
どれだけ戦闘力の高い魔族でも、致命傷を受ければ死ぬ。そしてそれが回復できないとなれば勝機はこちらにあるのだ。
ちなみに最高位の聖属性魔法は、蘇生魔法で、死んだ人を生き返らせるっていう究極の魔法だ。
これが使える人はさすがに希少で、現在は1人もおらず、大司教ですらも使えないのだという。
だれも使えない魔法だけど、教本にちゃんと載っているのは、50年くらい前までは使える人がいたからだという。
その成功率は40%未満ということだったが、蘇生に成功した者の半分は不死者となってしまったという。それでも100人に1人くらいは成功したらしいけど、かなりの低確率だ。
100年前の勇者はそれが100%の確率で使えたそうだ。その力で死んだ仲間を蘇生させたとも云われている。勇者候補の私が期待されているのは、実はこの蘇生魔法を使えるようになることだった。
てか、勇者ってすごいんだな。
魔王を倒すほど強い上に、死んだ人を生き返らせることもできたなんて、完璧じゃん。
高位の回復魔法は一度の詠唱で対象者を全回復させられる。
さらに高位になると回復対象がもっと広範囲になる。
これが使用できるSS級回復士は、戦場で多くの兵士たちを癒すことができるので、神のように敬われているらしい。
SS級以上の回復士は現在この国に3人しかいないというが、その者たちは、常に戦場に同行している。
もっと狭い範囲回復のできるS級術者はもう少し多いが、一般的な治癒なら人数の多い上級回復士で十分だ。
で、今の私のレベルはというと、やっぱり下級のままで、1人に対してせいぜい2~3割回復させられればいい方だ。
止血と、かすり傷くらいしか治せない今の私は、回復ポーションよりも劣る存在なのだ。
唯一、デボラが褒めてくれたのは、私が無詠唱で魔法を使いこなせることだった。
さすがにこの世界の魔法士は無詠唱で魔法を発動させることはできないそうだ。
上級魔法になればなるほど、その詠唱時間が長くなるので、詠唱中に敵に狙われないよう細心の注意を払わねばならない。
無詠唱もなにも、呪文なんて知らないもんね。
ただ、「治れ~!」って念じているだけだし。
まあ、一応看護師だから、怪我の程度とかはわかるけどね。
エリアナたちも無詠唱だそうだから、これはやっぱり異世界人特有なのかもしれない。
でもエリアナたちはカッコいいからと、必殺技みたいにスキル名を叫ぶことにしたらしい。その方が集中できるんだって。
かなり恥ずかしいと思うんだけど、こちらの世界の人々の魔法は、詠唱の最後にそのスキル名を云う必要があるので誰も変だとか恥ずかしいとかいうことはないみたい。
だけど、やっているうちに「回復」と言葉に出した方が、効果が上がるってことに気付いた。
魔法士の濃ゆい授業でヘトヘトになった私は、試しに自分で自分を回復してみた。
体力的なことは回復できるみたいだけど、さすがに精神的ダメージは、魔法じゃ癒せないようだ。
他の勇者候補と比べられる毎日に、私は徐々に追い詰められていくことになった。
そもそもこの世界には、元の世界とは違う理がたくさんある。
この世界の生き物すべての周りには『マギ』と呼ばれる粒子が取り巻いていて、人間や魔族はそのマギを使って魔法を使うことができるという。
マギには色があって、その属性によって色が違うみたい。火の属性なら赤、って感じで。
魔属性は魔族だけが持つ属性で、色は黒。人間が持っていない唯一の属性だ。
逆に聖属性は、人間だけが持てる属性で、色は白か白銀。魔族は持つことができない。
レナルドが云っていた、私のような黒い髪は魔属性を持つ者の特徴だという。だから人間には黒い髪の者はほとんどいない。
メイドさんが私を見るとき、ちょっと嫌な顔をするのはそのせいだ。
魔力の強い者は、このマギをたくさん身に纏うことができるということだ。
人間に比べて魔族はこのマギをたくさん纏うことができるといい、たいていの魔族は魔法が使える。
逆に人間は魔法を使えない者の方が多い。
そんな人間の中でも魔法を使える者は貴重で、どこかの騎士団に属するか、大司教公国へ来て魔法士になるケースが多いという。
デボラは、回復魔法がいかに重要かを説明してくれた。
自身が回復士であることへの自負からなのだろうけど、話を聞くとあながちそれだけでもないことがわかった。
「体力も魔力も魔族に劣る人間が、唯一魔族に優位にあるものが、回復魔法です」
デボラは得意気に言った。
「傷を治したり、体力や魔力を回復させたり、死者を蘇生したりできるのは聖属性魔法だけです。聖属性と対極にある魔属性を持つ魔族は、そもそも聖属性魔法を持つことはできません。また聖属性魔法である回復魔法を受け入れることもできません。つまり、魔族には回復魔法というものが存在しないのです」
「じゃあ魔族たちはどうやって怪我を治してるの?」
「各個人の持つ回復系スキルに頼るか、魔族専用の回復ポーションで回復するしかありません。しかも魔族専用ポーションは高価な上、連続使用ができないという粗悪品です。つまり事実上、魔族を癒す手段はほとんどない、ということになります」
たしかに、ゲームとかでも敵が回復魔法使うことってあんまりない気がする。
使うのはたいていボスキャラよね。
「なので、こちらが死なない限り、力の弱い者でもダメージを与え続ければ魔族を倒すことができるのです」
これはこの世界の常識のようだ。
すべての魔族は生まれながらに魔属性を持っているため、回復魔法が効かない。
だからどれだけ強い魔族でも長期戦になれば回復魔法を持つ人間が有利なのだ。
強い魔族と人間がこれまで対等に戦ってこれたのはひとえに回復魔法のおかげである。
この国の回復士は優秀な者が多いため、ほかの国からもスカウトが頻繁にくると、デボラは自慢していた。
魔族は人間に比べてかなり長命らしく、1000年以上生きる者も珍しくないそうだ。
魔力の強い者は総じて長命の傾向があるという。
彼らは若い肉体を保ったまま長い年月を重ね、魔力が尽きると死ぬと云われている。
魔王に至っては寿命はなく不老不死なのだが、それは例外中の例外で、長命な魔族といえども、不死身ではない。
どれだけ戦闘力の高い魔族でも、致命傷を受ければ死ぬ。そしてそれが回復できないとなれば勝機はこちらにあるのだ。
ちなみに最高位の聖属性魔法は、蘇生魔法で、死んだ人を生き返らせるっていう究極の魔法だ。
これが使える人はさすがに希少で、現在は1人もおらず、大司教ですらも使えないのだという。
だれも使えない魔法だけど、教本にちゃんと載っているのは、50年くらい前までは使える人がいたからだという。
その成功率は40%未満ということだったが、蘇生に成功した者の半分は不死者となってしまったという。それでも100人に1人くらいは成功したらしいけど、かなりの低確率だ。
100年前の勇者はそれが100%の確率で使えたそうだ。その力で死んだ仲間を蘇生させたとも云われている。勇者候補の私が期待されているのは、実はこの蘇生魔法を使えるようになることだった。
てか、勇者ってすごいんだな。
魔王を倒すほど強い上に、死んだ人を生き返らせることもできたなんて、完璧じゃん。
高位の回復魔法は一度の詠唱で対象者を全回復させられる。
さらに高位になると回復対象がもっと広範囲になる。
これが使用できるSS級回復士は、戦場で多くの兵士たちを癒すことができるので、神のように敬われているらしい。
SS級以上の回復士は現在この国に3人しかいないというが、その者たちは、常に戦場に同行している。
もっと狭い範囲回復のできるS級術者はもう少し多いが、一般的な治癒なら人数の多い上級回復士で十分だ。
で、今の私のレベルはというと、やっぱり下級のままで、1人に対してせいぜい2~3割回復させられればいい方だ。
止血と、かすり傷くらいしか治せない今の私は、回復ポーションよりも劣る存在なのだ。
唯一、デボラが褒めてくれたのは、私が無詠唱で魔法を使いこなせることだった。
さすがにこの世界の魔法士は無詠唱で魔法を発動させることはできないそうだ。
上級魔法になればなるほど、その詠唱時間が長くなるので、詠唱中に敵に狙われないよう細心の注意を払わねばならない。
無詠唱もなにも、呪文なんて知らないもんね。
ただ、「治れ~!」って念じているだけだし。
まあ、一応看護師だから、怪我の程度とかはわかるけどね。
エリアナたちも無詠唱だそうだから、これはやっぱり異世界人特有なのかもしれない。
でもエリアナたちはカッコいいからと、必殺技みたいにスキル名を叫ぶことにしたらしい。その方が集中できるんだって。
かなり恥ずかしいと思うんだけど、こちらの世界の人々の魔法は、詠唱の最後にそのスキル名を云う必要があるので誰も変だとか恥ずかしいとかいうことはないみたい。
だけど、やっているうちに「回復」と言葉に出した方が、効果が上がるってことに気付いた。
魔法士の濃ゆい授業でヘトヘトになった私は、試しに自分で自分を回復してみた。
体力的なことは回復できるみたいだけど、さすがに精神的ダメージは、魔法じゃ癒せないようだ。
他の勇者候補と比べられる毎日に、私は徐々に追い詰められていくことになった。
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