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第三章
罪と罰
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魔王がポータル・マシンに現れた時、その正面には驚いた表情のカラヴィアの姿があった。
「魔、魔王様!?」
「カラヴィアか…。おまえ1人か?トワはどうした?」
「あ…」
カラヴィアの頭の中は混乱していた。
マシンからトワが消えて、てっきり魔王の元へ戻ったのだと思って、魔王への言い訳を必死で考えていた時に、同じ台座から魔王が現れたからだ。
だがここに魔王が現れて、トワを探しているということは、魔王はまだトワに会っていないということだ。つまり、カラヴィアが彼女を襲ったこともバレていない。
カラヴィアにとって、トワがどこへ行ったのかということよりも、その方が大事だった。
「魔王様!たった今、トワさんをこのマシンで転送したところだったんです!」
「…マシンは我が修理していた。誰も転送などされておらん」
「え~?それじゃあ行き違いになったんですわ」
「…それもありえん。このマシンは双方同時に稼働することはない。転送先の台座に人が乗っていると稼働しない仕組みになっているのだ」
「じゃあ…」
「本当にトワはここにいないのか?」
「本当ですよ!疑うなんてヒドイです!せっかくあの娘を見つけてマシンに乗せたのに!」
「おまえが?」
「そ、そうです…」
カラヴィアはおそるおそる返事をした。
魔王は自分が転送されてきたマシンを調べてみた。
「特に問題はないように見受けられるが…」
「あ、あの娘が焦ってボタンを何度も押していたから、誤作動したんじゃないでしょうか?」
「焦って?なぜ焦っていたのだ?」
「さ、さあ…?早く帰りたかったんじゃないですか?この上からパパッっていなくなりましたから」
カラヴィアはそう勝手な解釈を魔王に語った。
魔王はその様子を訝しんだ。
「…このマシンにはおまえがトワを乗せたのだろう?」
「あ…そ、そうでした」
「まさかおまえ、トワに何かしたのではあるまいな?」
「いいえ!そんな、滅相もないです!トワさんを殺そうだなんてそんなこと!」
魔王はカラヴィアをじろりと睨んだ。
カラヴィアは「あ」と短く叫んで自分の口を押えた。
「…ほう?トワを殺そうとしたのか」
「あわわわ…い、いいえ!そ、そんなことして、してません!」
「我の前で嘘をつくとどうなるか、わかっているだろうな?」
「ち、違います!嘘だなんて、ワタシはただ…」
カラヴィアは明らかに狼狽している。
「カイザードラゴン、我の姿で出てカラヴィアを捕らえろ!」
魔王が叫ぶと、ネックレスからカイザーが魔王と同じ姿でカラヴィアの隣に出現した。
さすがのカラヴィアもこれには驚いた。
「魔王様!?…が2人?」
「これは我が召喚したカイザードラゴンの擬態スキルだ」
「カ、カイザードラゴン…!?こ、こんな力があったんですの…?」
『変身はおまえの特許ではないぞ』
そう云って、魔王の姿のカイザーはカラヴィアの腕を掴んだ。
「フン、無駄よ。ワタシのスキル<素粒子化>はすべてのものをすり抜けることができるのよ?」
『やってみるがいい』
「ハッ!自信過剰なドラゴンね」
カラヴィアがその姿を<素粒子化>させると、カイザーに掴まれている腕が一瞬消えたように見えた。
通常ならそれでカイザーの腕をすり抜けることができるはずだった。
だがその腕は、カイザーに掴まれたままだった。
「な!なぜ?どうして?」
『私は目に見えぬものをも掴むことができるのだ。<素粒子化>したおまえの体なぞ容易く捕らえられるわ』
カイザーはそう云って、掴んだ手を引き寄せ、魔王の前に引っ立てた。
「痛たたッ痛い!やめてよ!」
「我はおまえを信用して送り出した。我が大切に思っているトワをよもや傷つけるような真似はすまいと思っていたが…どうやら甘かったようだな」
「魔王様、誤解です!ほんのちょっと、その、出来心っていうか…。だって、あの娘、生意気なんですよ!?魔王様のこと気安く呼んだりして!」
その時、魔王の口元が少し緩んだ。
彼女が自分をゼルくん、と呼んだ時のことを思い出していたのだ。
「…確かに気安いな」
「でしょ?だからワタシ、魔王様にナイショでガツンとかましてやろうと思ったんですよぉ!」
「つまりおまえは我を裏切ったと」
「え?え?裏切ってなんかいませんてば!あの娘は魔王様に相応しくないって思っただけです!」
カラヴィアは自分自身でボロを出していることに気付いていなかった。
『魔王よ、おまえにはがっかりだ。こんないい加減な者を信用しているとは』
カイザーは魔王と同じ顔で、彼を責めるように云った。
「…確かに我に対する忠誠心に関しては信用していた部分はあった」
「そ、そうですとも!ワタシは何があっても魔王様を裏切ったりしませんわ!」
「…おまえはその軽口で我をイラつかせることが多かったが、退屈から救ってくれたこともあった。それゆえお前の行動には目をこぼしてやっていたことも多々あった」
「魔王様…!ああ、やっぱりワタシの心をわかってくださっているのですね!嬉しい!」
「おまえはそれをいいことに増長したのだな」
「そ、そんなことはありませんわ!魔王様はやっぱりワタシを愛してくださっているってことがわかっていただけです!」
「おまえの自己中心的な妄想にはうんざりだ」
「え…?」
カイザーはカラヴィアを無視して、魔王に語り掛けた。
『魔王よ。トワがどこへ行ってしまったかわかるか?』
カイザーの言葉を受けて、魔王はポータル・マシンの近くへ行き、転送パネルを操作した。
「マシンの誤作動なのかどうか原因は不明だが、どこか別のポータル・マシンに転送されている可能性が高い」
「どうしてわかるんですの?」
「マシンの台座の上から消えたということは、空間魔法が発動しているということだ。そして見たところこのマシンは正常に動いている。このマシンは複数の転送先を登録できるもののようだ。ここに登録されている別の転送先を調べればトワの行方を追えるかもしれん」
「…どうして?」
カラヴィアはカイザーに腕を掴まれたまま悲し気に魔王を見た。
「どうしてあの娘のことばっかり心配するんです?ワタシじゃダメなの?どうしてあんな人間なんかに!?ワタシの方がずっと魔王様を愛してるのに!あの娘が来たからワタシを捨てるなんてヒドイです!」
「おまえは他人の気持ちを一度でも考えたことがあるのか」
「そんなの…、ワタシはただ一途に魔王様を…」
「自分の気持ちを押し付けるだけの愛は、相手を傷つけるということにそろそろ気付くべきだ」
「ま、魔王様…?」
魔王は、カラヴィアの顔の前に掌をかざした。
「我が、おまえの裏切りによってどれだけ落胆させられたか、その身を持って知れ」
「ひっ…お、お許しを…」
すると魔王の掌から強烈な炎が噴き出して、カラヴィアの顔面を焼いた。
「ぎゃぁぁぁぁ!!」
魔王の指に次第に力が入り、カラヴィアの顔前で爪を立てる仕草をした。
美しかったカラヴィアの顔面はみるみるうちに焼けただれ、見えない手でえぐられるように両頬に鋭い爪跡が無残に付いていく。それは魔王の怒りそのものを具現化していた。
「あああああああーーーーー!!痛ぁい!熱いぃ!」
カラヴィアはあまりの苦痛に悲鳴を上げながら、両手で自分の顔を覆いながらのたうち回った。
床を転げまわるカラヴィアを魔王とカイザーは冷たく見下ろしていた。
「カイザードラゴン、そこの鏡を取って見せてやれ」
カイザーは棚の上に置かれていた鏡を取って、床に横たわるカラヴィアの前にトン、と置いた。
それはトワに傷を癒されたイドラが、自分の顔を眺めていた卓上鏡だった。
「カラヴィア、鏡を見ろ」
床に転げまわっていたカラヴィアは、自分の目の前に置かれた鏡に気付き、顔からそっと手を放して見た。
そこに映っていたのは、醜く焼けただれ、爪でねじるように傷つけられた、到底自分とは思えない顔だった。
その爪の傷は3本の筋となって赤くただれていた。
もしここにザグレムを知る者がいたら、捨てられた愛人だと思うに違いなかった。
「いやぁぁぁーーー!!」
カラヴィアの絶望的な悲鳴が部屋中に響き渡った。
「うう…痛い、熱い…!魔王様ぁひどい…い…い…」
「言っておくが変身スキルを使用してもその火傷と傷は消えんぞ」
魔王の残酷な行為に、カラヴィアは泣き続けている。
「我を裏切った罪を、その程度で許してやるのだ。感謝しろ」
カラヴィアは両手で顔を押えながら泣きわめいていた。
顔が痛い、熱いだの、こんな顔じゃもう誰も相手にしてくれない、だのと云いながら。
それでもカラヴィアは魔王への恨みや憎しみを口にすることはなかった。
「泣いているヒマがあるならトワを探すんだな。その顔を治せるのはトワだけだ。探し出して、許しを請え。そうすればトワは治してくれるだろう」
魔王は冷たく云った。
するとカラヴィアは顔を押えたままその言葉に反応した。
「それ、本当…?魔王様。あの娘が、治せるって…?」
カラヴィアは弱弱しい声で尋ねた。
「嘘は云わん。それがおまえに対するせめてもの情けだ。だが今度トワに危害を加えようとしたら、今度は全身を焼いてやる」
「ひぃぃ!これ以上はやめて!お願い!もうしませんから!お願いですぅ!」
カラヴィアは両手で顔を覆いながら、魔王に泣いて懇願した。
「これをくれてやる」
魔王は表情を変えず、カラヴィアの前に、仮面を投げた。
それは以前、前線基地でトワに付けさせた白い仮面だった。
「うぅぅ…」
呻きながらカラヴィアは白い仮面を拾ってふらふらと立ち上がった。
壁にかかっていたグレーのローブを取って羽織ると、そのままポータル・マシンに向かって歩き出した。
「魔王様、待ってて…すぐ、奇麗なワタシに戻るから…」
カラヴィアは、ブツブツ呟きながら勝手にマシンの台座に乗って転送されて行った。
「魔、魔王様!?」
「カラヴィアか…。おまえ1人か?トワはどうした?」
「あ…」
カラヴィアの頭の中は混乱していた。
マシンからトワが消えて、てっきり魔王の元へ戻ったのだと思って、魔王への言い訳を必死で考えていた時に、同じ台座から魔王が現れたからだ。
だがここに魔王が現れて、トワを探しているということは、魔王はまだトワに会っていないということだ。つまり、カラヴィアが彼女を襲ったこともバレていない。
カラヴィアにとって、トワがどこへ行ったのかということよりも、その方が大事だった。
「魔王様!たった今、トワさんをこのマシンで転送したところだったんです!」
「…マシンは我が修理していた。誰も転送などされておらん」
「え~?それじゃあ行き違いになったんですわ」
「…それもありえん。このマシンは双方同時に稼働することはない。転送先の台座に人が乗っていると稼働しない仕組みになっているのだ」
「じゃあ…」
「本当にトワはここにいないのか?」
「本当ですよ!疑うなんてヒドイです!せっかくあの娘を見つけてマシンに乗せたのに!」
「おまえが?」
「そ、そうです…」
カラヴィアはおそるおそる返事をした。
魔王は自分が転送されてきたマシンを調べてみた。
「特に問題はないように見受けられるが…」
「あ、あの娘が焦ってボタンを何度も押していたから、誤作動したんじゃないでしょうか?」
「焦って?なぜ焦っていたのだ?」
「さ、さあ…?早く帰りたかったんじゃないですか?この上からパパッっていなくなりましたから」
カラヴィアはそう勝手な解釈を魔王に語った。
魔王はその様子を訝しんだ。
「…このマシンにはおまえがトワを乗せたのだろう?」
「あ…そ、そうでした」
「まさかおまえ、トワに何かしたのではあるまいな?」
「いいえ!そんな、滅相もないです!トワさんを殺そうだなんてそんなこと!」
魔王はカラヴィアをじろりと睨んだ。
カラヴィアは「あ」と短く叫んで自分の口を押えた。
「…ほう?トワを殺そうとしたのか」
「あわわわ…い、いいえ!そ、そんなことして、してません!」
「我の前で嘘をつくとどうなるか、わかっているだろうな?」
「ち、違います!嘘だなんて、ワタシはただ…」
カラヴィアは明らかに狼狽している。
「カイザードラゴン、我の姿で出てカラヴィアを捕らえろ!」
魔王が叫ぶと、ネックレスからカイザーが魔王と同じ姿でカラヴィアの隣に出現した。
さすがのカラヴィアもこれには驚いた。
「魔王様!?…が2人?」
「これは我が召喚したカイザードラゴンの擬態スキルだ」
「カ、カイザードラゴン…!?こ、こんな力があったんですの…?」
『変身はおまえの特許ではないぞ』
そう云って、魔王の姿のカイザーはカラヴィアの腕を掴んだ。
「フン、無駄よ。ワタシのスキル<素粒子化>はすべてのものをすり抜けることができるのよ?」
『やってみるがいい』
「ハッ!自信過剰なドラゴンね」
カラヴィアがその姿を<素粒子化>させると、カイザーに掴まれている腕が一瞬消えたように見えた。
通常ならそれでカイザーの腕をすり抜けることができるはずだった。
だがその腕は、カイザーに掴まれたままだった。
「な!なぜ?どうして?」
『私は目に見えぬものをも掴むことができるのだ。<素粒子化>したおまえの体なぞ容易く捕らえられるわ』
カイザーはそう云って、掴んだ手を引き寄せ、魔王の前に引っ立てた。
「痛たたッ痛い!やめてよ!」
「我はおまえを信用して送り出した。我が大切に思っているトワをよもや傷つけるような真似はすまいと思っていたが…どうやら甘かったようだな」
「魔王様、誤解です!ほんのちょっと、その、出来心っていうか…。だって、あの娘、生意気なんですよ!?魔王様のこと気安く呼んだりして!」
その時、魔王の口元が少し緩んだ。
彼女が自分をゼルくん、と呼んだ時のことを思い出していたのだ。
「…確かに気安いな」
「でしょ?だからワタシ、魔王様にナイショでガツンとかましてやろうと思ったんですよぉ!」
「つまりおまえは我を裏切ったと」
「え?え?裏切ってなんかいませんてば!あの娘は魔王様に相応しくないって思っただけです!」
カラヴィアは自分自身でボロを出していることに気付いていなかった。
『魔王よ、おまえにはがっかりだ。こんないい加減な者を信用しているとは』
カイザーは魔王と同じ顔で、彼を責めるように云った。
「…確かに我に対する忠誠心に関しては信用していた部分はあった」
「そ、そうですとも!ワタシは何があっても魔王様を裏切ったりしませんわ!」
「…おまえはその軽口で我をイラつかせることが多かったが、退屈から救ってくれたこともあった。それゆえお前の行動には目をこぼしてやっていたことも多々あった」
「魔王様…!ああ、やっぱりワタシの心をわかってくださっているのですね!嬉しい!」
「おまえはそれをいいことに増長したのだな」
「そ、そんなことはありませんわ!魔王様はやっぱりワタシを愛してくださっているってことがわかっていただけです!」
「おまえの自己中心的な妄想にはうんざりだ」
「え…?」
カイザーはカラヴィアを無視して、魔王に語り掛けた。
『魔王よ。トワがどこへ行ってしまったかわかるか?』
カイザーの言葉を受けて、魔王はポータル・マシンの近くへ行き、転送パネルを操作した。
「マシンの誤作動なのかどうか原因は不明だが、どこか別のポータル・マシンに転送されている可能性が高い」
「どうしてわかるんですの?」
「マシンの台座の上から消えたということは、空間魔法が発動しているということだ。そして見たところこのマシンは正常に動いている。このマシンは複数の転送先を登録できるもののようだ。ここに登録されている別の転送先を調べればトワの行方を追えるかもしれん」
「…どうして?」
カラヴィアはカイザーに腕を掴まれたまま悲し気に魔王を見た。
「どうしてあの娘のことばっかり心配するんです?ワタシじゃダメなの?どうしてあんな人間なんかに!?ワタシの方がずっと魔王様を愛してるのに!あの娘が来たからワタシを捨てるなんてヒドイです!」
「おまえは他人の気持ちを一度でも考えたことがあるのか」
「そんなの…、ワタシはただ一途に魔王様を…」
「自分の気持ちを押し付けるだけの愛は、相手を傷つけるということにそろそろ気付くべきだ」
「ま、魔王様…?」
魔王は、カラヴィアの顔の前に掌をかざした。
「我が、おまえの裏切りによってどれだけ落胆させられたか、その身を持って知れ」
「ひっ…お、お許しを…」
すると魔王の掌から強烈な炎が噴き出して、カラヴィアの顔面を焼いた。
「ぎゃぁぁぁぁ!!」
魔王の指に次第に力が入り、カラヴィアの顔前で爪を立てる仕草をした。
美しかったカラヴィアの顔面はみるみるうちに焼けただれ、見えない手でえぐられるように両頬に鋭い爪跡が無残に付いていく。それは魔王の怒りそのものを具現化していた。
「あああああああーーーーー!!痛ぁい!熱いぃ!」
カラヴィアはあまりの苦痛に悲鳴を上げながら、両手で自分の顔を覆いながらのたうち回った。
床を転げまわるカラヴィアを魔王とカイザーは冷たく見下ろしていた。
「カイザードラゴン、そこの鏡を取って見せてやれ」
カイザーは棚の上に置かれていた鏡を取って、床に横たわるカラヴィアの前にトン、と置いた。
それはトワに傷を癒されたイドラが、自分の顔を眺めていた卓上鏡だった。
「カラヴィア、鏡を見ろ」
床に転げまわっていたカラヴィアは、自分の目の前に置かれた鏡に気付き、顔からそっと手を放して見た。
そこに映っていたのは、醜く焼けただれ、爪でねじるように傷つけられた、到底自分とは思えない顔だった。
その爪の傷は3本の筋となって赤くただれていた。
もしここにザグレムを知る者がいたら、捨てられた愛人だと思うに違いなかった。
「いやぁぁぁーーー!!」
カラヴィアの絶望的な悲鳴が部屋中に響き渡った。
「うう…痛い、熱い…!魔王様ぁひどい…い…い…」
「言っておくが変身スキルを使用してもその火傷と傷は消えんぞ」
魔王の残酷な行為に、カラヴィアは泣き続けている。
「我を裏切った罪を、その程度で許してやるのだ。感謝しろ」
カラヴィアは両手で顔を押えながら泣きわめいていた。
顔が痛い、熱いだの、こんな顔じゃもう誰も相手にしてくれない、だのと云いながら。
それでもカラヴィアは魔王への恨みや憎しみを口にすることはなかった。
「泣いているヒマがあるならトワを探すんだな。その顔を治せるのはトワだけだ。探し出して、許しを請え。そうすればトワは治してくれるだろう」
魔王は冷たく云った。
するとカラヴィアは顔を押えたままその言葉に反応した。
「それ、本当…?魔王様。あの娘が、治せるって…?」
カラヴィアは弱弱しい声で尋ねた。
「嘘は云わん。それがおまえに対するせめてもの情けだ。だが今度トワに危害を加えようとしたら、今度は全身を焼いてやる」
「ひぃぃ!これ以上はやめて!お願い!もうしませんから!お願いですぅ!」
カラヴィアは両手で顔を覆いながら、魔王に泣いて懇願した。
「これをくれてやる」
魔王は表情を変えず、カラヴィアの前に、仮面を投げた。
それは以前、前線基地でトワに付けさせた白い仮面だった。
「うぅぅ…」
呻きながらカラヴィアは白い仮面を拾ってふらふらと立ち上がった。
壁にかかっていたグレーのローブを取って羽織ると、そのままポータル・マシンに向かって歩き出した。
「魔王様、待ってて…すぐ、奇麗なワタシに戻るから…」
カラヴィアは、ブツブツ呟きながら勝手にマシンの台座に乗って転送されて行った。
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