202 / 246
第九章
to be continue→
しおりを挟む
ピピ、ピピ、ピピ…。
アラームの音…?
「うん、36.2…平熱ね」
誰かの声が聞こえた。
私はゆっくり目を開けた。
「あ…目が覚めた?」
目の前に、覗き込む顔があった。
同僚の坂木梨香子だ。
体温計を持ってる。
そうか、今の音は体温計の音だったんだ。
「あ…れ?私…何して…」
私はベッドに寝かされていることにようやく気付いた。
「良かったー!このまま目が覚めないかとヒヤヒヤしてたんだから」
梨香子も、他の看護師も、ピンクのナース服を着ている。
ってことは、ここ、うちの病院なのか…。
「まだ動かない方がいいわよ。外傷は捻挫と擦り傷程度だけど、脳震盪起こしてたみたいだから」
「脳震盪…?私、どうしたの?」
「も~ビックリしたわよ。工事現場から鉄骨が落ちて来たんだって?すんでのところで直撃を免れたらしいじゃない。良く避けれたよねえ」
「鉄骨…?」
あ…そういえば、出勤する時に近道しようと思って、工事現場の近くを通ったんだっけ。
でもそっからの記憶がない。
「工事現場の人が、うちの病院に運び込んでくれたのよ。近くで良かったわ。あんたがうちの看護師だって聞いてビックリしてたわよ」
「そうなんだ…」
「にしても、やっぱりショックだったのね。あんた丸1日寝てたのよ?」
「あ…ごめん…、そういや私、夜勤だったんだよね?誰か替わってくれたの?」
「私が替わりに出たわよ。ってことで夜勤明けだからもう帰るとこ。今度奢りなさいよね」
「うん、もちろん」
「…冗談よ。事故だもん、助かって良かったわよ」
「ごめんね、迷惑かけて…」
看病する人が看病されるなんて情けないわ…。
あれ?でも梨香子、たしか昨日は合コンだって云ってたような?わざわざキャンセルしてくれたのかな?イケメンがくるかもってメチャメチャやる気だしてたのに…。悪いことしちゃったな…。絶対奢ろう。
「気にしないでいいって。一応、いろいろ検査するみたいで、しばらく検査入院ってことになるみたいよ」
「え~、いいのかなあ?だっていっつも看護師長、休む時うるさいじゃん…」
「今回はいいみたいよ。通勤途中の事故だったから労災になるみたいだし、工事の会社の責任者がさっき謝りに来て、治療代と慰謝料払って、示談にしたいらしいわよ。うちの病院の弁護士がいろいろやってくれるみたいだから、安心して、ゆっくり休みなよ。一応、目が覚めたって先生呼んで来るね」
「うん…ありがとう」
治療代が全額出るってことで私は高額な個室に入れられている。
こんな時で何だけど、ここ、憧れの個室だったんだよね。
ここが空いてるなんて奇跡だけど、なんか急にキャンセルが出たらしい。
トイレと洗面所は別々についてるし、シャワー室も完備してる。備え付けのテレビも大きいし、ネット環境も行き届いてるイマドキの個室だ。ベッドもリクライニングで最高~!
自分の勤務する病院で看護されるってなんだか変な感じだけど、病院長もやけに優しくしてくれるし、こんなチャンス、滅多にない。
梨香子にアパートの鍵を渡して着替えと暇つぶしの漫画を持って来てもらった。
さすがにゲーム機は持ってこれなくて残念だったけど。まあ、スマホのゲームで我慢しとこ。
…そういえば、事故に遭う前やってたゲーム、投げっぱなしだったな…。
もうちょっとでラスボス倒せたのに。
あのクソ魔王め、回復しやがって…。
魔王…。
魔王って言葉が妙にひっかかる。
…なんだか、長い夢を見ていた気がするけど、よく思い出せない。
もしかして、ゲームの夢でも見てたのかな。
何か、大事なことを忘れているような気もするんだけど。
洗面所で手を洗う時に、ふと鏡に映った自分を見た。
あれ…?
私の顔って、こんなだったっけ…?
色白で、鼻筋がスッと通ってて目もパッチリしてる。
少し中性的な感じだけど、ものすごい美少女がそこに映っていた。
「これ、誰…?」
思わず声に出てしまった。
少なくとも見慣れたいつもの平凡顔じゃなかった。
特別美人でもない、平均的な日本人顔の私は…?
じっと見ているうちに、鏡の中の自分の顔が、見慣れたいつもの平凡な顔に戻った。
なんだ…幻覚?
今のは何だったの?妄想?
やっぱ、頭打ったせいかな…?
どこかで見たことのあるようなモデル系美少女だった。
あー、あんな顔だったら人生変わってたんだろうな。
それにひきかえ、私はクラスの中のその他大勢的立ち位置。間違ってもヒロインポジションじゃない。
もう何度鏡を見ても、あの美少女はいない。
そこにいるのはいつもの平均的な顔の日本人の女だった。
私は盛大に溜息をついて肩を落とした。
これでも合コンに行けば、ナースフィルターがかかってそこそこモテるんだぞ。結果は伴ってないけど…。
捻挫もだいぶ良くなってきて、院内を歩けるようになった。
いつ退院してもいいと思うけど、なんか保険とか諸々大人の事情やらで私の入院期間はきっかり1週間になった。
「は~暇…あと4日もあるじゃん…」
院内2階にある喫茶スペースでダラダラしていると、梨香子が慌ててやってきた。
「いたいた、ちょっとトワ!」
「んー?」
「私にも内緒ってのはひどくない?」
「何のこと?」
「やだ、とぼけちゃって。あんな超絶イケメン、どこで見つけたのよ~!今1階の受付に来てるわよ。もう皆大騒ぎしてるんだから」
「来てるって…誰が?」
「あんたの婚約者!」
「へ?」
婚約者?
梨香子、何を云ってるの?
彼氏すらいたことないのに、婚約者?
何の冗談ですか…?
アラームの音…?
「うん、36.2…平熱ね」
誰かの声が聞こえた。
私はゆっくり目を開けた。
「あ…目が覚めた?」
目の前に、覗き込む顔があった。
同僚の坂木梨香子だ。
体温計を持ってる。
そうか、今の音は体温計の音だったんだ。
「あ…れ?私…何して…」
私はベッドに寝かされていることにようやく気付いた。
「良かったー!このまま目が覚めないかとヒヤヒヤしてたんだから」
梨香子も、他の看護師も、ピンクのナース服を着ている。
ってことは、ここ、うちの病院なのか…。
「まだ動かない方がいいわよ。外傷は捻挫と擦り傷程度だけど、脳震盪起こしてたみたいだから」
「脳震盪…?私、どうしたの?」
「も~ビックリしたわよ。工事現場から鉄骨が落ちて来たんだって?すんでのところで直撃を免れたらしいじゃない。良く避けれたよねえ」
「鉄骨…?」
あ…そういえば、出勤する時に近道しようと思って、工事現場の近くを通ったんだっけ。
でもそっからの記憶がない。
「工事現場の人が、うちの病院に運び込んでくれたのよ。近くで良かったわ。あんたがうちの看護師だって聞いてビックリしてたわよ」
「そうなんだ…」
「にしても、やっぱりショックだったのね。あんた丸1日寝てたのよ?」
「あ…ごめん…、そういや私、夜勤だったんだよね?誰か替わってくれたの?」
「私が替わりに出たわよ。ってことで夜勤明けだからもう帰るとこ。今度奢りなさいよね」
「うん、もちろん」
「…冗談よ。事故だもん、助かって良かったわよ」
「ごめんね、迷惑かけて…」
看病する人が看病されるなんて情けないわ…。
あれ?でも梨香子、たしか昨日は合コンだって云ってたような?わざわざキャンセルしてくれたのかな?イケメンがくるかもってメチャメチャやる気だしてたのに…。悪いことしちゃったな…。絶対奢ろう。
「気にしないでいいって。一応、いろいろ検査するみたいで、しばらく検査入院ってことになるみたいよ」
「え~、いいのかなあ?だっていっつも看護師長、休む時うるさいじゃん…」
「今回はいいみたいよ。通勤途中の事故だったから労災になるみたいだし、工事の会社の責任者がさっき謝りに来て、治療代と慰謝料払って、示談にしたいらしいわよ。うちの病院の弁護士がいろいろやってくれるみたいだから、安心して、ゆっくり休みなよ。一応、目が覚めたって先生呼んで来るね」
「うん…ありがとう」
治療代が全額出るってことで私は高額な個室に入れられている。
こんな時で何だけど、ここ、憧れの個室だったんだよね。
ここが空いてるなんて奇跡だけど、なんか急にキャンセルが出たらしい。
トイレと洗面所は別々についてるし、シャワー室も完備してる。備え付けのテレビも大きいし、ネット環境も行き届いてるイマドキの個室だ。ベッドもリクライニングで最高~!
自分の勤務する病院で看護されるってなんだか変な感じだけど、病院長もやけに優しくしてくれるし、こんなチャンス、滅多にない。
梨香子にアパートの鍵を渡して着替えと暇つぶしの漫画を持って来てもらった。
さすがにゲーム機は持ってこれなくて残念だったけど。まあ、スマホのゲームで我慢しとこ。
…そういえば、事故に遭う前やってたゲーム、投げっぱなしだったな…。
もうちょっとでラスボス倒せたのに。
あのクソ魔王め、回復しやがって…。
魔王…。
魔王って言葉が妙にひっかかる。
…なんだか、長い夢を見ていた気がするけど、よく思い出せない。
もしかして、ゲームの夢でも見てたのかな。
何か、大事なことを忘れているような気もするんだけど。
洗面所で手を洗う時に、ふと鏡に映った自分を見た。
あれ…?
私の顔って、こんなだったっけ…?
色白で、鼻筋がスッと通ってて目もパッチリしてる。
少し中性的な感じだけど、ものすごい美少女がそこに映っていた。
「これ、誰…?」
思わず声に出てしまった。
少なくとも見慣れたいつもの平凡顔じゃなかった。
特別美人でもない、平均的な日本人顔の私は…?
じっと見ているうちに、鏡の中の自分の顔が、見慣れたいつもの平凡な顔に戻った。
なんだ…幻覚?
今のは何だったの?妄想?
やっぱ、頭打ったせいかな…?
どこかで見たことのあるようなモデル系美少女だった。
あー、あんな顔だったら人生変わってたんだろうな。
それにひきかえ、私はクラスの中のその他大勢的立ち位置。間違ってもヒロインポジションじゃない。
もう何度鏡を見ても、あの美少女はいない。
そこにいるのはいつもの平均的な顔の日本人の女だった。
私は盛大に溜息をついて肩を落とした。
これでも合コンに行けば、ナースフィルターがかかってそこそこモテるんだぞ。結果は伴ってないけど…。
捻挫もだいぶ良くなってきて、院内を歩けるようになった。
いつ退院してもいいと思うけど、なんか保険とか諸々大人の事情やらで私の入院期間はきっかり1週間になった。
「は~暇…あと4日もあるじゃん…」
院内2階にある喫茶スペースでダラダラしていると、梨香子が慌ててやってきた。
「いたいた、ちょっとトワ!」
「んー?」
「私にも内緒ってのはひどくない?」
「何のこと?」
「やだ、とぼけちゃって。あんな超絶イケメン、どこで見つけたのよ~!今1階の受付に来てるわよ。もう皆大騒ぎしてるんだから」
「来てるって…誰が?」
「あんたの婚約者!」
「へ?」
婚約者?
梨香子、何を云ってるの?
彼氏すらいたことないのに、婚約者?
何の冗談ですか…?
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
【完結】巻き込まれたけど私が本物 ~転移したら体がモフモフ化してて、公爵家のペットになりました~
千堂みくま
ファンタジー
異世界に幼なじみと一緒に召喚された17歳の莉乃。なぜか体がペンギンの雛(?)になっており、変な鳥だと城から追い出されてしまう。しかし森の中でイケメン公爵様に拾われ、ペットとして大切に飼われる事になった。公爵家でイケメン兄弟と一緒に暮らしていたが、魔物が減ったり、瘴気が薄くなったりと不思議な事件が次々と起こる。どうやら謎のペンギンもどきには重大な秘密があるようで……? ※恋愛要素あるけど進行はゆっくり目。※ファンタジーなので冒険したりします。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる