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エピローグ
ゴラクドールの再会
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ゴラクドールの中央に位置する魔王府は、仮に使用していたホテルを全面改装して、正式に魔王府の建物とした。
その中には、これまで吹き抜けのロビーなどで寝泊まりしていたラセツたち体の大きな魔族たちの宿舎も造られた。
魔王都にある魔王城の大きさには到底及ばないが、それでも1万人の兵士や官吏が寝泊まりできる程の部屋数と広さがあるほど、巨大な建物である。
その魔王府の広大な裏庭の一角にはキュロスのキャンプから移設された巨大なポータル・マシンが設置されていた。
魔王は、魔王城とゴラクドールを結ぶ大型ポータル・マシンのみを残し、他の大型ポータル・マシンはすべて回収して魔王の倉庫にしまい込み、以降、大型ポータル・マシンの製造を禁止した。
製造が許可されたのは1人用のポータル・マシンのみで、すべてのポータル・マシンの設置はアザドーによる許可制とした。
今日は、その大型ポータル・マシンから魔王府へ、多くの魔族たちが訪れていた。
その中には魔貴族などの上の立場の者もいたため、見た目重視で選抜された近衛部隊がその接客に当たっていた。
美しく着飾ったザグレムも、取り巻きを連れて現れたが、ユリウスの姿がなくてがっかりしていた。
来客の中にはマクスウェルの姿もあった。
マクスウェルはカオス消失後、カラヴィアを見つけ、調査の結果を報告させた。
カラヴィアはジュスターが息子のジュイスであると証言した。あの場でジュスターがカオスを召喚したところを見ていたマクスウェルは、それを確信した。
マクスウェルはすぐにジュスターを訪ね、直接問い詰めたが、ジュスターは最後まで自分がジュイスであると認めなかった。
あきらめきれないマクスウェルは、その後も何度も魔王府へと足を運ぶことになったが、平行線のままだった。
そのジュスターは魔王から新たに魔王護衛将の地位を与えられ、ダンタリアンやホルスらと肩を並べることになった。彼の実力からすれば当然だと、誰からも異論はなかった。
更に彼がゴラクドールに駐留する魔王軍の最高司令官に任じられたことで、マクスウェルといえど、そう気軽に彼に会うことができなくなった。
ジュスターはその冷たい美貌と氷魔法の使い手であることから、氷の騎士の異名を持っていた。表情がほとんど変わらないことでも有名で、彼に気軽に声を掛けようとする者はほとんどおらず、何者も寄せ付けない恐れ多い存在となってしまっていた。
そんな彼に気兼ねなく接しているのは聖魔騎士団の面々だ。
彼らもテュポーン討伐の働きにより、それぞれ階級がかなり上がった。
カナンは上級魔大将になり、魔王駐留軍の指揮官と聖魔軍の指揮官を兼任することとなった。彼は配下からの信頼も厚く、魔王駐留軍の実質的なナンバー2となった。他の団員たちも皆、上級魔騎士という位をもらった。
だが、テスカだけはそれを辞した。
彼は騎士団を電撃退団することになったのだ。
皆、その決断には驚いたが、その理由を聞いた時、全員がそれを祝福したのだった。
ジュスターも彼の決意を尊重し、退団を認めることにした。
欠員の出た騎士団に、ジュスターはゼフォンとイヴリスを入団させた。2人共トワと個人的に契約していたので、以前から勧誘を考えていたのだ。
ゼフォンもイヴリスも、トワのために働けることと、他の騎士団の面々と肩を並べられることを光栄なことだと喜びを露わにした。
イヴリスは、ジュスターが兄かもしれないと父から聞いていて、それとなく確かめるよう云われていたのだが、面と向かって聞く勇気はなかった。
この日はゴラクドールの入国門にも多くの人々が詰めかけていた。
いつにも増して、立派な仕立て馬車の到着が多いのは、今日行われる式典のためである。
馬車は、諸外国からの訪問客が多く、警備にあたっていた聖魔軍も大忙しだった。
到着した馬車から降りてきた客の中に、将とエリアナ、ゾーイ、アマンダの姿もあった。
彼らは賓客らしく正装をしていた。
「おーい、将!」
将たち4人の元へ駆け寄ってきたのは、漆黒の軍服に身を包んだアルシエルだった。
「お、アルシエルじゃんか!久しぶり!」
ゾーイとアマンダは魔王軍の軍団長であるアルシエルに、丁寧に挨拶をした。
「将たちも元気そうだね。聞いたよ、オーウェン新王国の総団長になったんだって?」
「そうよ。将は御前試合で騎士団全員負かしちゃったからね。で、あたしは総団長付きの魔法士になったわけ」
「まあ、実質は副官のゾーイに頼りっきりなんだけどな」
「フッ、君たちは、相変わらずだね」
「そういうおまえも軍団長なんてすげーじゃん」
「うーん、ガラじゃないんだけど、同時期に上級魔騎士に任じられたゼフォンが『おまえが断るなら俺も断る』なんていうもんだから仕方なくね」
「おまえもすっかり魔族だよな」
「うん、おかげさまでね。そういえばあいつは?一緒なんだろ?」
「ああ、優星?それなら向こうよ」
エリアナが指さした方向には、騎士たちに囲まれた女王カーラベルデがいて、その隣には彼女をエスコートする優星の姿があった。
「あの噂ってマジだったんだ?あいつが女王の恋人って…」
アルシエルが問うと、将はニヤニヤしながら云った。
「あいつ、カオスが消滅した時さ、命がけで魔王を取り戻したトワにめちゃくちゃ感動したらしいんだ。それで、『世界を救うのは愛だ!』なーんて突然目覚めちまって、それからはもう手あたり次第に女の子に声かけてえらいことになってたんだよ。国内でもかなりヒンシュク買ったよな」
「ホント、タラシもいいとこだわ。あの顔で『僕に愛を教えて欲しい』なんて言うもんだから、本気になっちゃた子も結構いたのよ」
「ハハ…、そういうとこはやっぱりあいつ、魔族なんだね」
「は?何よ魔族って皆そうなの?」
「ああ、魔族は多くの相手と知り合って、その中から相手を選ぶことが多いらしいんだ。魔族は実力主義だからね。つまり女王様が他の女性たちよりも優れていたってあいつが認めたわけだ」
「なんだ、単なる面食いのクソ男だったのかと思ってたわ」
エリアナが嫌味たっぷりに云うと、アルシエルと将は苦笑いした。
「まあ、勇者が相手ならばと父も許しているし、カーラがいいというのなら構いませんよ。ですが、泣かせるようなことがあれば容赦しませんけどね」
ゾーイは笑顔で云ったが、その眼は笑っていなかった。
エリアナはゾーイを横目に、アマンダにこっそり耳打ちした。
「ライバルが減って良かったわね。今がチャンスじゃない?」
「チャ、チャンスって?」
「あんた、ちゃんと告白したの?」
「あの、それとなくは…。で、でもデートらしきものも何度かしてるんですよ?」
「あー、もう!ああいうタイプは匂わせとかじゃダメ。ちゃんと言わないと気づかないのよ。ガツン!って行きなさいよ!」
「は、はい!」
アマンダがエリアナに勇気づけられていた時、背後から声を掛ける者がいた。
「はぁ~い、あんたたち、元気してたぁ?」
明るく声を掛けたのは、ショッキングピンクのドレスを身に纏った派手でエキゾチックな魔族の美女だった。
「えっと…誰?」
突然見知らぬ美女に挨拶された将は首を傾げた。
アルシエルは笑って云った。
「カラヴィアだよ」
「えー!?それが本当の姿?」
将たちは驚きの声を上げた。
そのカラヴィアが、実はオーウェン新王国の魔法士長リュシー・ゲイブスだと知っているアマンダは、声を大にして叫んだ。
「こんなところで何してんですか!ゲイブス魔法士長がいなくなったってちょっとした騒ぎになってたんですよ?」
「ずっとオジサンやってるとさぁ、息抜きしないと耐えらんなくなるのよ~」
カラヴィアは真っ赤な口紅の塗られた唇で、キャハハ、と笑った。
「それに、ワタシもそろそろ次の繁殖相手探さないとって思ってるのよね。魔王様はトワに譲ってやったからさ。半年後に開かれるイシュタム祭のトーナメント戦見て決めようかって思ってんのよ」
「あーそれ聞いたよ。カナンも出るんだって?セウレキアの闘技場より面白そうだって評判になってるんだ。俺もエントリーしようかなあ?」
「やめときなさいよ。魔族とまともに戦えるわけないでしょ?」
話が盛り上がっていると、警備隊長のエルドランが、会場へ移動するようにと声を掛けてきた。
彼もまた魔王軍の正装である黒の軍服を身に着けていた。
「やあ、エルドラン。案内係ご苦労様」
「アルシエル、おまえも早く持ち場に着けよ。ゼフォン殿は一緒ではないのか?」
「うん、今朝は僕より先に家を出ていったよ。聖魔騎士団は魔王府に集合がかかってるんだってさ」
「そうか」
それを聞いたエリアナが反応して、アルシエルにこそっと囁いた。
「あんた、ゼフォンと一緒に住んでんの?」
「そうだよ」
「ふーん?そういう仲になったんだ?」
「まあね。ゼフォンから、宿舎の部屋がめちゃくちゃ広いから一緒に住まないかって誘われたんだ」
「へえ、意外ね~!てっきりあんたからだと思ってた」
「さすがにそんな勇気ないよ。だってゼフォンってめちゃくちゃモテるんだよ?」
「あんただってモテそうだけど」
「僕なんかまだまだだよ。言ったろ?魔族は実力主義なんだって」
エリアナは「ふ~ん」と頷いて、アルシエルに近づき、彼だけに聞こえるように囁いた。
「ねえ…聞いていい?」
「何だよ?」
「どっちが受け?それともリバ?」
「エリアナ…そんな言葉、どこで覚えたのさ…」
アルシエルは呆れて云った。
「俗物的なこというのやめなよ。僕ら魔族はそういうんじゃないから」
「僕ら魔族、ねえ…。あんたもすっかり魔族になったのね。もう将のことはいいの?」
「ハハ、なんだか懐かしいな。僕が将を好きだったなんて、今となっては考えられないよ」
「ふ~ん、魔族になって好みが変わったの?」
「そうかもね。でも、性的マイノリティを気にして世間の目にビクビクしてた頃を思うと、今はすごく自由で充実してるよ。本当に、生まれ変わってよかったと思ってる」
「そう…良かったわね」
「君は?エリアナ」
「あたしはね…そのうち家族を持ちたいって思ってるの」
「それは、将と結婚したいってこと?」
「しっ!内緒よ。じゃないとあいつ、つけあがるから」
「ハハ、君らはお似合いだよ。結婚式するなら絶対呼んでくれよ?」
彼らは昔のようにわいわいと騒ぎながら、徒歩で中央広場へと向かって行った。
その中には、これまで吹き抜けのロビーなどで寝泊まりしていたラセツたち体の大きな魔族たちの宿舎も造られた。
魔王都にある魔王城の大きさには到底及ばないが、それでも1万人の兵士や官吏が寝泊まりできる程の部屋数と広さがあるほど、巨大な建物である。
その魔王府の広大な裏庭の一角にはキュロスのキャンプから移設された巨大なポータル・マシンが設置されていた。
魔王は、魔王城とゴラクドールを結ぶ大型ポータル・マシンのみを残し、他の大型ポータル・マシンはすべて回収して魔王の倉庫にしまい込み、以降、大型ポータル・マシンの製造を禁止した。
製造が許可されたのは1人用のポータル・マシンのみで、すべてのポータル・マシンの設置はアザドーによる許可制とした。
今日は、その大型ポータル・マシンから魔王府へ、多くの魔族たちが訪れていた。
その中には魔貴族などの上の立場の者もいたため、見た目重視で選抜された近衛部隊がその接客に当たっていた。
美しく着飾ったザグレムも、取り巻きを連れて現れたが、ユリウスの姿がなくてがっかりしていた。
来客の中にはマクスウェルの姿もあった。
マクスウェルはカオス消失後、カラヴィアを見つけ、調査の結果を報告させた。
カラヴィアはジュスターが息子のジュイスであると証言した。あの場でジュスターがカオスを召喚したところを見ていたマクスウェルは、それを確信した。
マクスウェルはすぐにジュスターを訪ね、直接問い詰めたが、ジュスターは最後まで自分がジュイスであると認めなかった。
あきらめきれないマクスウェルは、その後も何度も魔王府へと足を運ぶことになったが、平行線のままだった。
そのジュスターは魔王から新たに魔王護衛将の地位を与えられ、ダンタリアンやホルスらと肩を並べることになった。彼の実力からすれば当然だと、誰からも異論はなかった。
更に彼がゴラクドールに駐留する魔王軍の最高司令官に任じられたことで、マクスウェルといえど、そう気軽に彼に会うことができなくなった。
ジュスターはその冷たい美貌と氷魔法の使い手であることから、氷の騎士の異名を持っていた。表情がほとんど変わらないことでも有名で、彼に気軽に声を掛けようとする者はほとんどおらず、何者も寄せ付けない恐れ多い存在となってしまっていた。
そんな彼に気兼ねなく接しているのは聖魔騎士団の面々だ。
彼らもテュポーン討伐の働きにより、それぞれ階級がかなり上がった。
カナンは上級魔大将になり、魔王駐留軍の指揮官と聖魔軍の指揮官を兼任することとなった。彼は配下からの信頼も厚く、魔王駐留軍の実質的なナンバー2となった。他の団員たちも皆、上級魔騎士という位をもらった。
だが、テスカだけはそれを辞した。
彼は騎士団を電撃退団することになったのだ。
皆、その決断には驚いたが、その理由を聞いた時、全員がそれを祝福したのだった。
ジュスターも彼の決意を尊重し、退団を認めることにした。
欠員の出た騎士団に、ジュスターはゼフォンとイヴリスを入団させた。2人共トワと個人的に契約していたので、以前から勧誘を考えていたのだ。
ゼフォンもイヴリスも、トワのために働けることと、他の騎士団の面々と肩を並べられることを光栄なことだと喜びを露わにした。
イヴリスは、ジュスターが兄かもしれないと父から聞いていて、それとなく確かめるよう云われていたのだが、面と向かって聞く勇気はなかった。
この日はゴラクドールの入国門にも多くの人々が詰めかけていた。
いつにも増して、立派な仕立て馬車の到着が多いのは、今日行われる式典のためである。
馬車は、諸外国からの訪問客が多く、警備にあたっていた聖魔軍も大忙しだった。
到着した馬車から降りてきた客の中に、将とエリアナ、ゾーイ、アマンダの姿もあった。
彼らは賓客らしく正装をしていた。
「おーい、将!」
将たち4人の元へ駆け寄ってきたのは、漆黒の軍服に身を包んだアルシエルだった。
「お、アルシエルじゃんか!久しぶり!」
ゾーイとアマンダは魔王軍の軍団長であるアルシエルに、丁寧に挨拶をした。
「将たちも元気そうだね。聞いたよ、オーウェン新王国の総団長になったんだって?」
「そうよ。将は御前試合で騎士団全員負かしちゃったからね。で、あたしは総団長付きの魔法士になったわけ」
「まあ、実質は副官のゾーイに頼りっきりなんだけどな」
「フッ、君たちは、相変わらずだね」
「そういうおまえも軍団長なんてすげーじゃん」
「うーん、ガラじゃないんだけど、同時期に上級魔騎士に任じられたゼフォンが『おまえが断るなら俺も断る』なんていうもんだから仕方なくね」
「おまえもすっかり魔族だよな」
「うん、おかげさまでね。そういえばあいつは?一緒なんだろ?」
「ああ、優星?それなら向こうよ」
エリアナが指さした方向には、騎士たちに囲まれた女王カーラベルデがいて、その隣には彼女をエスコートする優星の姿があった。
「あの噂ってマジだったんだ?あいつが女王の恋人って…」
アルシエルが問うと、将はニヤニヤしながら云った。
「あいつ、カオスが消滅した時さ、命がけで魔王を取り戻したトワにめちゃくちゃ感動したらしいんだ。それで、『世界を救うのは愛だ!』なーんて突然目覚めちまって、それからはもう手あたり次第に女の子に声かけてえらいことになってたんだよ。国内でもかなりヒンシュク買ったよな」
「ホント、タラシもいいとこだわ。あの顔で『僕に愛を教えて欲しい』なんて言うもんだから、本気になっちゃた子も結構いたのよ」
「ハハ…、そういうとこはやっぱりあいつ、魔族なんだね」
「は?何よ魔族って皆そうなの?」
「ああ、魔族は多くの相手と知り合って、その中から相手を選ぶことが多いらしいんだ。魔族は実力主義だからね。つまり女王様が他の女性たちよりも優れていたってあいつが認めたわけだ」
「なんだ、単なる面食いのクソ男だったのかと思ってたわ」
エリアナが嫌味たっぷりに云うと、アルシエルと将は苦笑いした。
「まあ、勇者が相手ならばと父も許しているし、カーラがいいというのなら構いませんよ。ですが、泣かせるようなことがあれば容赦しませんけどね」
ゾーイは笑顔で云ったが、その眼は笑っていなかった。
エリアナはゾーイを横目に、アマンダにこっそり耳打ちした。
「ライバルが減って良かったわね。今がチャンスじゃない?」
「チャ、チャンスって?」
「あんた、ちゃんと告白したの?」
「あの、それとなくは…。で、でもデートらしきものも何度かしてるんですよ?」
「あー、もう!ああいうタイプは匂わせとかじゃダメ。ちゃんと言わないと気づかないのよ。ガツン!って行きなさいよ!」
「は、はい!」
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「はぁ~い、あんたたち、元気してたぁ?」
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「えっと…誰?」
突然見知らぬ美女に挨拶された将は首を傾げた。
アルシエルは笑って云った。
「カラヴィアだよ」
「えー!?それが本当の姿?」
将たちは驚きの声を上げた。
そのカラヴィアが、実はオーウェン新王国の魔法士長リュシー・ゲイブスだと知っているアマンダは、声を大にして叫んだ。
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カラヴィアは真っ赤な口紅の塗られた唇で、キャハハ、と笑った。
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「やめときなさいよ。魔族とまともに戦えるわけないでしょ?」
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「やあ、エルドラン。案内係ご苦労様」
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「そうか」
それを聞いたエリアナが反応して、アルシエルにこそっと囁いた。
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「そうだよ」
「ふーん?そういう仲になったんだ?」
「まあね。ゼフォンから、宿舎の部屋がめちゃくちゃ広いから一緒に住まないかって誘われたんだ」
「へえ、意外ね~!てっきりあんたからだと思ってた」
「さすがにそんな勇気ないよ。だってゼフォンってめちゃくちゃモテるんだよ?」
「あんただってモテそうだけど」
「僕なんかまだまだだよ。言ったろ?魔族は実力主義なんだって」
エリアナは「ふ~ん」と頷いて、アルシエルに近づき、彼だけに聞こえるように囁いた。
「ねえ…聞いていい?」
「何だよ?」
「どっちが受け?それともリバ?」
「エリアナ…そんな言葉、どこで覚えたのさ…」
アルシエルは呆れて云った。
「俗物的なこというのやめなよ。僕ら魔族はそういうんじゃないから」
「僕ら魔族、ねえ…。あんたもすっかり魔族になったのね。もう将のことはいいの?」
「ハハ、なんだか懐かしいな。僕が将を好きだったなんて、今となっては考えられないよ」
「ふ~ん、魔族になって好みが変わったの?」
「そうかもね。でも、性的マイノリティを気にして世間の目にビクビクしてた頃を思うと、今はすごく自由で充実してるよ。本当に、生まれ変わってよかったと思ってる」
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