少年刑事レオンの冒険──犯罪者を出し抜け!

作家志望の怠惰な学生

文字の大きさ
3 / 35
犯罪者の城

犯罪者の城

しおりを挟む
 レオンのやつ、完全に頭がおかしくなっているな。それに耳を貸した僕、チャック・マーティンも大概に変なのだが。彼とはずっと前から親友としてやってきて、様々な陰謀論を聞いてきたが、虐殺だなんて言い出したのは初めてだ。

 しかも、今までになく必死な様子だった。こりゃあ精神科医にみてもらった方がいいぞ。まったく、昔はこちらが彼にケアされる側だったのだが……

 僕たちは、共に両親を失った身だ。レオンはつい最近まで、意地の悪い叔父の家に居候していたが、バイトの収入が上がったことで一人暮らしを始めた。僕は兄と弟と一緒に事故物件のアパートに住んでいる。僕があんなしけた喫茶店で働くのも、弟に不自由させないためだ。境遇を比べると弟を養わなければいけない分、僕の方が明らかにひどかったが、傍から見ればレオンも幼くしてかなりの不幸に苛まれている。なのに彼は、僕を支えることに徹してくれていた。

 本当は、こんな話をしている場合ではない。現在の僕は、過去のことなどどうでもよくなるくらい、おかしな状況に立たされていた。

 僕とレオンは、左右を林に挟まれ、かろうじて舗装された道路を歩いている。話に聞いた作戦を警戒し、恐る恐る一歩ずつ踏み出す。

 靴の裏に何か柔らかい感触を感じた。排泄物かと思いうめいたが、その柔らかいものが不気味な音を立てうごめいたので、思わず悲鳴を上げ、後ずさった。足があった所には寸胴な蛇が横たわっていた。

 レオンは大丈夫か、と心配してきた。どうせ嫌味だ──イライラしてきた僕はそう思い込み、はねのけてやった。早足で力任せに坂道を登っていく。なにが虐殺だ、バカげた妄想は終わりにしてもらうぞ。

「おい、もうちょっと慎重に動けよ」
「うんざりなんだよ、まったく。君の陰謀論に終止符を打つんだ。そもそも、その説が正しいと本気で思うなら、なぜ来たんだ? 巻き添えを食って死んじまうかもしれないのに」

 少し言い過ぎたかと思ったが、仕方がない。こういうタイプの人間は、自身の問題点をズバリ指摘しないと自覚すらしないのだから。

 それから十分程度僕はやみくもに進み、レオンをかなり突き放していた。無意識に耳をすましていたが、彼は一言も発しない。最後に振り返ったときは、涙目というと大げさだが、明らかに傷ついた様子だった。当てのない嫌悪感に襲われた僕は空をにらんだ。

 城はちゃんと存在していた。二つの太い塔が四角い建物を挟む、といった形だ。全体的にはタイルが所々はがれている程度の破損で、崩れている個所はなかった。だが壁も屋根も、指より太い無数のツタに覆われており、とても手入れされているようには見えない。

 かつて庭だったであろう荒地で僕たちは身をかがめている。だんだんレオンの説が、現実味を増したような気がしてきた。城のあちこちから、大きめの物音がする。極めつけは目を凝らすと見えた、LED電球の白い灯り──

「お前さんたち、ここで何をしとるんだね?」

 声は背後から聞こえた。僕は振り向くと同時に腕を構え、万が一に備えた。

 だが、そこにいたのはボロボロの布を羽織った老婦人だった。不気味な装いではないが、息を切らした僕は警戒を解かなかった。

 僕もレオンもまともな言葉を発せず、目線で責を押し付けあった。老婦人は真顔で微動だにしない。何回か動作を繰り返すうち、レオンの方が口を開いた。

「えっと、ただの好奇心で入ってみただけですよ。先客がいなければ、秘密の集合場所にでもしようかなって……」
「先客ねぇ」

 老婦人は腕を組み、せわしなく歩き始めた。どうしたものか、と呟いている。

「ついてきな]

 少し戸惑ったものの、僕たちは従った。建物の方へ誘導される。お茶でもふるまってくれるのかと思い、少し気を緩めた。これが致命的だった。

 夫人は正面の建物の錆びたドアを引いて開き、さあ、と促して僕たちを招き入れた。だが中に入った瞬間──

〈ガタ、バタン!〉
 
 と派手に音を立てて、ドアを閉められた。

「どういう意図だか知らないけど、これで閉じ込めたつもりか?」

 レオンはわざとらしく笑ってみせた。

 ここはいわゆる玄関ホールらしい。ドアから色あせたレッドカーペットが伸びていて、奥にある巨大な階段へと繋がっている。階段の奥には横に伸びた通路があり、階段と合わせるとT字状に見える。

 辺りは思いのほか明るく、他の部屋から電球の光が漏れていた。

 待てよ? 電気がついているということは──

「ここには、あの老婆の他に人間がいるかもしれない!」

 僕はレオンの耳元で叫んだ。彼は同調し、二人で震えあがった。

「それに、閉じ込められたってことは、そいつらは──」

 レオンはゴクリと音を立て、つばを飲み込んだ。

「かなり危険な連中で、俺たちは襲われるかもってこと、だよな」

「そう思われるのも仕方がない」

 前触れもなく、通路からスーツ姿で細眼鏡の華奢な男が現れ、声を上げた。かん高くて通った声だ。かなり威圧感がある。

 無論、僕とレオンは瞬時に構えを取り、自然とドアノブに手を掛けた。が、鍵をかけられているらしく、動かない。

 細眼鏡の男は、僕らの動作など気にも留めない。

「実際我々はお前たちを拘束しなければならない。もしかすると、ここに来たのは偶然なのかもしれないが……どのみちもう遅い」

 眼鏡を光らせ、男は凄惨な笑みを浮かべた。背後から、複数の大柄な漢が五人ほど現れた。

 


 あとがき

 少しでも「面白い!」と思った方はいいね・感想お願いします!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

BODY SWAP

廣瀬純七
大衆娯楽
ある日突然に体が入れ替わった純と拓也の話

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

処理中です...