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ジェームズトンプソンと深紅の男
捜索開始
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言われた通り、僕はトンプソンの事務所に向かった。リーパー刑事の車で行ったとき、周りの景色をよく見ていなかったがために、たどり着くのは至難だった。
かなりの時間をかけて、それらしい古びたビルの立ち並ぶ、暗い路地を見つけた。前に来た時よりもさらに暗く、不良がいきなり襲ってくるのではないかと不安になる。
トンプソンの事務所を見つけた──レンガの二階建て。前に豪華な装飾に見えていたものは、風になびく邪魔な洗濯物のように見える。横に長い奇怪な建物が、怪物の顔に見えてきた。重い足取りで、建物の側面へ回る。面倒な螺旋階段を上っていき、木製の扉をノックした──空っぽのはずの室内から鍵を開ける音が響いたので、僕の心臓は思い切り警鐘を鳴らした。
出てきたのはレオンだった。
「来てくれてありがとうな」
「感謝してもらわなきゃ困るよ」
僕は意地の悪い笑みを浮かべ、勝手にドアをくぐり廊下に入った。カーペットは泥で無残に汚れている。前に入らないよう指示された、複数の扉が目に入った。今なら、侵入し放題だ──よせよ、無知で無邪気な子供じゃあるまいし……
オフィスは、数十年前に閉業した古本屋のような暗い雰囲気だった。棚の彫刻は恐ろしく、地獄から這い出てきた来た怪物が、この世のどこかの木造家具の中に封印されているとしたら、恐らくこいつがそうだ。
木製テーブルと椅子、客用の赤紫のソファーがポツンと置かれていた。緊迫しながら、ソファーに腰かけてみた。毛の生えた触手に鷲掴みにされているようで、どうにも不快だった。
「なぁ、さっきすごい物を見つけたんだ」
ふいにレオンが後ろから言った。振り返ると彼が持っていたのはラジオのような小さな箱だ──またくだらないガラクタを見つけて……
「分かってないみたいだな。これは、通信機さ! 警察無線が聞けるんだ!」
「なら、早く無線を流せよ」
僕は淡々と促した。今は緊急事態だが、どうにも冷静でいられる。
レオンが箱についている小さなつまみをいじくり回すと、耳障りな音がしばらく続いた。
「最後に聞いたときは、誘拐犯の車が道路封鎖を完全突破した、って報告だった」
レオンは真剣な眼差しでつまみを調整している。あたかもその箱を知り尽くしているかのようだ。少しづつメッセージが聞きとれるようになったが、ほとんどは事件と関係ないものだ。時間が刻一刻と過ぎていく。レオンは作業に集中しながらも、かなり焦って取り乱しているように見える。
ふとしたとき、有用に思える無線が一瞬聞こえてきた。
「おい、これじゃないのか」
僕はレオンの肩を叩いた。彼は目を合わせてきて、頷く。
「誘拐犯の車はテキサス州の──港で発見された。ナンバープレ―トは外されており、車の出所特定は困難」
「よし──向かうぞ」
「ハァ、分かったよ!」
結局レオンにつられて、僕は完全に捜索隊と化した。レオンはオフィスから出て、事務所を後にしようとする。僕も、拒否する肉体を引きずるようにして付いて行く。だが入り口ドアを抜ける前にレオンが立ち止まって、神妙な声になった。
「チャック、君は自分で思ってるよりずっといい奴だ。でも、これから相手にするかもしれない敵には、容赦しないようにしてくれ」
「──いまさらだね。前に二人で敵をぶちのめしたじゃないか。戦う覚悟はできてるよ」
あとがき
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かなりの時間をかけて、それらしい古びたビルの立ち並ぶ、暗い路地を見つけた。前に来た時よりもさらに暗く、不良がいきなり襲ってくるのではないかと不安になる。
トンプソンの事務所を見つけた──レンガの二階建て。前に豪華な装飾に見えていたものは、風になびく邪魔な洗濯物のように見える。横に長い奇怪な建物が、怪物の顔に見えてきた。重い足取りで、建物の側面へ回る。面倒な螺旋階段を上っていき、木製の扉をノックした──空っぽのはずの室内から鍵を開ける音が響いたので、僕の心臓は思い切り警鐘を鳴らした。
出てきたのはレオンだった。
「来てくれてありがとうな」
「感謝してもらわなきゃ困るよ」
僕は意地の悪い笑みを浮かべ、勝手にドアをくぐり廊下に入った。カーペットは泥で無残に汚れている。前に入らないよう指示された、複数の扉が目に入った。今なら、侵入し放題だ──よせよ、無知で無邪気な子供じゃあるまいし……
オフィスは、数十年前に閉業した古本屋のような暗い雰囲気だった。棚の彫刻は恐ろしく、地獄から這い出てきた来た怪物が、この世のどこかの木造家具の中に封印されているとしたら、恐らくこいつがそうだ。
木製テーブルと椅子、客用の赤紫のソファーがポツンと置かれていた。緊迫しながら、ソファーに腰かけてみた。毛の生えた触手に鷲掴みにされているようで、どうにも不快だった。
「なぁ、さっきすごい物を見つけたんだ」
ふいにレオンが後ろから言った。振り返ると彼が持っていたのはラジオのような小さな箱だ──またくだらないガラクタを見つけて……
「分かってないみたいだな。これは、通信機さ! 警察無線が聞けるんだ!」
「なら、早く無線を流せよ」
僕は淡々と促した。今は緊急事態だが、どうにも冷静でいられる。
レオンが箱についている小さなつまみをいじくり回すと、耳障りな音がしばらく続いた。
「最後に聞いたときは、誘拐犯の車が道路封鎖を完全突破した、って報告だった」
レオンは真剣な眼差しでつまみを調整している。あたかもその箱を知り尽くしているかのようだ。少しづつメッセージが聞きとれるようになったが、ほとんどは事件と関係ないものだ。時間が刻一刻と過ぎていく。レオンは作業に集中しながらも、かなり焦って取り乱しているように見える。
ふとしたとき、有用に思える無線が一瞬聞こえてきた。
「おい、これじゃないのか」
僕はレオンの肩を叩いた。彼は目を合わせてきて、頷く。
「誘拐犯の車はテキサス州の──港で発見された。ナンバープレ―トは外されており、車の出所特定は困難」
「よし──向かうぞ」
「ハァ、分かったよ!」
結局レオンにつられて、僕は完全に捜索隊と化した。レオンはオフィスから出て、事務所を後にしようとする。僕も、拒否する肉体を引きずるようにして付いて行く。だが入り口ドアを抜ける前にレオンが立ち止まって、神妙な声になった。
「チャック、君は自分で思ってるよりずっといい奴だ。でも、これから相手にするかもしれない敵には、容赦しないようにしてくれ」
「──いまさらだね。前に二人で敵をぶちのめしたじゃないか。戦う覚悟はできてるよ」
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