少年刑事レオンの冒険──犯罪者を出し抜け!

作家志望の怠惰な学生

文字の大きさ
34 / 35
正義の衝突

終結

しおりを挟む
「これまでだ──君を殺すつもりはない。これから話すことをジェームズに伝えてもらわなければ。衝撃的な事実だ、肝を抜かすぞ」

「言いたいことがあるなら、さっさとしたほうがいい。あんたが死ぬか、警察の手に渡って面会できなくなる前に」
 
 俺はすっくと体を起こし、体勢を立て直した。

「そうさせてもらうよ」

 俺の動きなど見向きもせず、ブラッドは語り始めた。

「我ら最大の敵、その名は『メラク・アンダーソン』。奴は米国トップの悪徳実業家として知られているが、さらに邪悪な過去がある。

 彼はかつてとある研究所の所長だった──(カーン教授の父もここで働いており、悲惨な最期を遂げたのだが──)そこで人体クローンを制作していたのだ。私は当時彼の部下で、その研究の関係者だった──ん?」

 意識が現実に戻ったのか、ブラッドはこちらから目を逸らし、振り向いた。俺は隙をついて蹴り技を決めようと、彼に向けて踏み出すが、それどころではなくなった。船のどこともしれない場所から、銃声が轟いたのだ。

 間もなくブラッドは、今までの戦闘は何だったのかと思うほど、あっけなく鉄床に体を打ち付け、意識を失った──いや、違う、死んでいる。彼の額には生々しく穴が開いており、俺はその部位から目を逸らした。

 犯人が迫ってくる。そいつは今まで俺たちに好き勝手やられていた、残念な奴──小男だった。だが今やそのまなざしは真剣そのもので、怯えなど一切感じられない。

「お前、スパイだったのか! 最初からブラッドに忠誠なんて誓ってなかったんだな!」

「フフフ、彼に真の忠誠心を抱いていた者が、いったいどれほどいたと?」

 小男に銃口を向けられた。波音のない静まり返った船上に、彼の力強い声が響く。

「ブラッドが死んだ今、真実は絶たれた。後は君を殺せば、情報は完全に消失する」

 俺は男をにらみつけ、戦闘態勢に入った。右足を奴の方に向けて、両腕を心臓の前に構える。

「冗談じゃない。あんたごときに俺は倒せないぞ」

 小男は空を見つめ、かん高く笑った。

「『ごとき』だって! 私は武装し、君は満身創痍で隠れる場所もない──どこに勝ち目があると?」

「もうすぐ部隊が来る。俺をどうしようが、あんたに逃げ場はないぞ!」

「部隊は来ないよ。私の味方が、ツテで海軍に通報し、君たちを密航やら国際法違反で逮捕するよう仕向けた。君たちの機動隊は、違法性のものなのだろう? ここはアメリカ国内ではないのだから」

「そんなの…ハッタリもいいところだ!」

「信じるかどうかは君次第だ。どのみち確かめる術はない──君は、いまここで死ぬのだから」

 男は再び銃を構えた──ためらいなく一発。俺はかろうじて回避した。それから間を空けず二発目が放たれ、くるぶしをかすめた。それから連発が続いたがどれも直撃は逃れた。

「しぶといな……」

 相手とは二十歩程離れている──弾を完璧に避けながら、間合いを詰めるというのは無理だろう。ならば、最後の手段だ──

 身を投げた。俺は鉄の甲板と手すりの間をスルリと潜り抜け、受け身のつもりで頭を腕で覆い隠し、海上を背にして落下した。

 水面に当たったときの衝撃はすさまじく、骨が折れた気がしてうめいた。

 気を確かにしようと、まばたきする。頭を空中に出して小さな貨物船を見上げた。しばらくの間無心で見つめていたが、白い飛行機が飛び立つのを見て危機感を抱いた。まさか、ここまで追ってきたりしないよな……

 幸い、それは遠くの大陸に向けて飛行していった。

 さて、あとは助けを待つのみ。俺の冒険もこれで一区切り──とは思えないな。全ての元凶であるブラッドは死んだが、彼が最期に口にした「メラク・アンダーソン」という名は、頭にこびりついたままだ。




 僕の目の前には異質な崖がそびえたっていた。その根本には鉄製のシャッターが埋め込まれており、僕はそれが入口だろうと感づき、慎重に近づいて叩いてみた。

「何をやってるんだね! 電流が流れていたらどうする!」

 後列のリーパーの意見には耳を貸さなかった。一刻も早く弟を助け出すんだ──だがいったん、機動隊による銃撃の邪魔にならないよう脇にどいた。

 耳をつんざくほどの、怒涛の攻撃だった。鉄扉に次々とへこみができては穴が開き、やがてシャッターそのものが剥がれ落ちてきた。

 よし、入口はなんなく破れた。

 僕は真っ先に特攻し、舗装された洞窟をずかずか進んだ。洞窟とはいっても、道がかなり分岐しているし、電球が天井のあちこちに付けられていた。これは迷宮だ──ジェームズと初めて知り合った、犯罪者の城を思い出す。

 今となってはずいぶん前のことのように思えるが、実際は二か月も経っていない。こんな短期間で、ここまで環境が変わるとは──それはともかくだ、弟を見つけなければ!

 ここまであてずっぽうで侵略してきたが、ふと後ろを見ると、部隊の人数は最初の3割程度になっていた。まずいかも──迷宮のような作りのせいで、どんどん分断されている。おそらく、ここにいる隊員たちはリーパーが個人的に寄せ集めた者たち。指揮しているリーパーは軍の知識など一切ない──つまりこのチームはまるで統制が取れていないということだ。

 三つの分かれ道に来たところで急な動悸に襲われた。隊員のうち数人が気遣ってくれたが、先に行くよう指示する。十五人いた仲間は、それぞれ五人になって暗い道に消えていった。うち二人が、戻って護衛になろうかと声をかけてくれた。だが僕は集中したかった。落ち着くことに集中するのだ。

 よろめきながらも、その二人を先に行かせた。僕はその場にとどまり、背を丸めて音を聞いた。弟のものではないが、人間の笑い声が壁の奥からかすかに聞こえる。

 三つの道のうち壁に近いものに入り、駆けだした。すぐに新しい分かれ道が出てきたが、迷わず声のする側を選んだ。その動作を延々と繰り返していくうち、土づくりの広い空間に出た。さすがに進みすぎたようで、隊員は誰も追いついていない。今更だが、僕一人だ。

 しかし、先へ続く通路の先から謎の野太い声が聞こえてきた。すぐ近くだ。

 銃を取り出し、胸の前に構えてその方向へ向かう。

 そしてつきあたりを右に曲がると、一つのドアがあった。その向こうでは、子供がわめいていた──

 〈弟の、マイクの声だ!〉

 僕は勢いよくドアを蹴飛ばし、その部屋に転がり込んだ。まず目に入ったのは、見知らぬ漢。それに衰弱しきった我が弟が横たわっていた──

「貴様! この子に何をしたんだ!」

「なんだよお前!」

 その漢はでっぷり肥っていて、訳が分からないといった表情を浮かべていた。

 有無も言わさず漢に飛び掛かり、押し倒す。それから打楽器のようにそいつの顔を殴打しまくった。

「殺してやる!」

 本当にそうしてやりたかった。この漢はブラッドの一手駒。子守など知らないのに、無理やり扱いを任されたのかもしれない──悪気はなかったかもしれない──それでも、絶対に許すものか!

 僕は一歩後ずさり、床の銃を拾った。起き上がる漢に迫り、その額に経口をぶつけた。奴は膝をついており、醜い涙目で手を上げていた。僕は冷ややかに漢を見つめ、引き金に手をかけ──

「グアアァッ!!」

 次の瞬間には、僕は絶叫し、地面に突っ伏していた。銃は吹き飛び、それを握っていた右手には穴が開き、ひたひたと血が流れ出ていた。

 気を失いそうになりながらも、僕を撃った犯人を見た。

「ジェームズ……?」

「チャック、悪く思うな」

 その見下すような目つき、漆黒のコート、こいつは間違いなくジェームズ・トンプソンだ。

「こ、この野郎──!」

 ジェームズは怯えている漢を殴って気絶させ、ロープで縛ろうとしていた。その最中、彼は僕にちらりと目を向け、吐き捨てるようにこう言った。

「今は心底恨むかもしれないが、将来はきっと感謝するさ。君が殺人を犯すのを防いでやったんだ」

 憎悪を募らせ、彼を呪うようにわめいた。

「こっちへ来い! 殺してやる!」

 無視されるかと思ったが、彼は幽霊のようにスッとこちらに近づいてきた。反撃する間もなく、湿った布を顔に押し付けられた。出会った時と同じ、クロロホルムに浸したやつだ──


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...