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私は何代と続く由緒正しき伯爵家の一人娘。私の家、フランベル伯爵家は海に面した領地で、この国唯一の港を所有している為、他国との貿易を全て担っている。
この国は女が爵位を継げない為、フランベル伯爵家をお父様から受け継ぐ婿を娶らなければならない。
一度、幼い頃婚約話が持ち上がった。侯爵家の次男で幼馴染みのルーク。私もルークも幼馴染み以上の思いは無く、ルークに至っては私達のもう一人の幼馴染みの侯爵令嬢のリーシャの事が幼い頃から好きなの。リーシャには妹がいて、いずれリーシャが婿を娶り侯爵家を護っていかなければならない。リーシャもルークが好きなのに、お互い両想いと気付いてないから一向に関係が進まない。 私が何度ルークに言っても「次男の俺がリーシャに思いを伝えたら婿に入りたいからだと思われる」って…。いっその事婿に入りたいって言えばいいのに。
一応建前上、婿に入って貰うには女性側から婚約を打診しなければならない。男性側から婚約を打診すると家を乗っ取るつもりと思われるからだけど、リーシャに思いを伝えるだけで全て丸く収まるのに。 リーシャのご両親もルークのご両親もお互いの子供達が想い合ってる事は知っている。だからお互いの気持ちを伝えあったら直ぐにでも婚約が出来る様に準備までしてるのに…。 ルークがヘタレだからまだまだ当分かかりそう。
一人娘の私にも釣書は届く。伯爵家は国で3本の指に入る財力を持っている。婿に入りたい者は多い。だけど、婿になれる条件はただ1つ。私が心から慕う人。それだけ。
私には5歳頃までの記憶がない。私も詳しくは教えて貰えないのだけど、どうやらその頃私は誘拐されたらしい。覚えてないから誘拐されたと言われても他人事のよう。そしてその頃から人を好きになると言う感情を無くした。 お父様やお母様、リーシャやルーク、親愛や友愛の感情はあるのだけど、恋愛、男性を見て胸が高鳴るとかときめくとか、そういった感情が持てないの。
見目美しい男性を見て格好いいとは思うけど、好きになると言うよりは眺めて終わり。異性の男性と言うよりは宝石を眺めてうっとりする感じと似てる。美しい物は美しい。何度見ても美しい。綺麗な宝石を眺めて、綺麗な景色を見て癒やされるのと同じで美しい殿方を見て眺めて癒やされるけど、旦那様になられるのはちょっと違う。
お父様も初めは頭が賢い奴じゃないと困るとか人付き合いが上手な奴じゃないと困るとか私を護れる強い奴じゃないと困るとか…言い出したらきりがない程条件を付けてたけど、今では私や執事が代わりにやれば良いし、腕のたつ護衛を雇えば良い。だから私が好きになれる男性なら平民でも構わないって言い出した。
16歳で成人を迎えた私も17歳になった。17にもなって婚約者が居ないのがそんなに変かしら。リーシャも居ないけどルーク待ちなだけで婚約者が居る様なものだし、高位貴族の令息、令嬢は殆ど婚約者が居てちらほら婚姻もし始めた。次男三男で婚約者が居ない人達は文官や騎士になるから、確かに変よね。
今日もお父様に連れられ王宮の夜会に出席した。お父様と早々に離れ、バルコニー近くの壁の華に徹し、ぼんやりと外を眺める。花壇に咲く花が夜風に揺られるのを見つめ、
「……令嬢、……リ令嬢、サリーリ令嬢」
「は、はい」
「どうかされましたか?」
「いえ」
突然声をかけられ、
「ダンスを踊って頂けますか?」
「すみません。ダンスは誰とも踊らない事にしてますの。お声掛け頂きありがとうございます」
令息からダンスに誘われる事はあるけど、1人踊ればその人が婚約者かと噂されても困るし、何人かと踊る程ダンスは得意じゃない。それなら誰の誘いも受けないのが一番良い。
断られると分かってるのに声をかけるのには理由がある。 ある者達は賭けをしているから。 ある者は噂を本当にする為。 ある者は親に言われて。 皆フランベル伯爵家の婿になりたいだけ。純粋に私を慕う者なんて居ない。私だってどうせ誰かと婚約するのなら純粋に私を慕ってくれる人が良い。慕う気持ちにいつか絆されるかも知れないのに。
私はまたぼんやりと外の花壇の花を眺める。
この国は女が爵位を継げない為、フランベル伯爵家をお父様から受け継ぐ婿を娶らなければならない。
一度、幼い頃婚約話が持ち上がった。侯爵家の次男で幼馴染みのルーク。私もルークも幼馴染み以上の思いは無く、ルークに至っては私達のもう一人の幼馴染みの侯爵令嬢のリーシャの事が幼い頃から好きなの。リーシャには妹がいて、いずれリーシャが婿を娶り侯爵家を護っていかなければならない。リーシャもルークが好きなのに、お互い両想いと気付いてないから一向に関係が進まない。 私が何度ルークに言っても「次男の俺がリーシャに思いを伝えたら婿に入りたいからだと思われる」って…。いっその事婿に入りたいって言えばいいのに。
一応建前上、婿に入って貰うには女性側から婚約を打診しなければならない。男性側から婚約を打診すると家を乗っ取るつもりと思われるからだけど、リーシャに思いを伝えるだけで全て丸く収まるのに。 リーシャのご両親もルークのご両親もお互いの子供達が想い合ってる事は知っている。だからお互いの気持ちを伝えあったら直ぐにでも婚約が出来る様に準備までしてるのに…。 ルークがヘタレだからまだまだ当分かかりそう。
一人娘の私にも釣書は届く。伯爵家は国で3本の指に入る財力を持っている。婿に入りたい者は多い。だけど、婿になれる条件はただ1つ。私が心から慕う人。それだけ。
私には5歳頃までの記憶がない。私も詳しくは教えて貰えないのだけど、どうやらその頃私は誘拐されたらしい。覚えてないから誘拐されたと言われても他人事のよう。そしてその頃から人を好きになると言う感情を無くした。 お父様やお母様、リーシャやルーク、親愛や友愛の感情はあるのだけど、恋愛、男性を見て胸が高鳴るとかときめくとか、そういった感情が持てないの。
見目美しい男性を見て格好いいとは思うけど、好きになると言うよりは眺めて終わり。異性の男性と言うよりは宝石を眺めてうっとりする感じと似てる。美しい物は美しい。何度見ても美しい。綺麗な宝石を眺めて、綺麗な景色を見て癒やされるのと同じで美しい殿方を見て眺めて癒やされるけど、旦那様になられるのはちょっと違う。
お父様も初めは頭が賢い奴じゃないと困るとか人付き合いが上手な奴じゃないと困るとか私を護れる強い奴じゃないと困るとか…言い出したらきりがない程条件を付けてたけど、今では私や執事が代わりにやれば良いし、腕のたつ護衛を雇えば良い。だから私が好きになれる男性なら平民でも構わないって言い出した。
16歳で成人を迎えた私も17歳になった。17にもなって婚約者が居ないのがそんなに変かしら。リーシャも居ないけどルーク待ちなだけで婚約者が居る様なものだし、高位貴族の令息、令嬢は殆ど婚約者が居てちらほら婚姻もし始めた。次男三男で婚約者が居ない人達は文官や騎士になるから、確かに変よね。
今日もお父様に連れられ王宮の夜会に出席した。お父様と早々に離れ、バルコニー近くの壁の華に徹し、ぼんやりと外を眺める。花壇に咲く花が夜風に揺られるのを見つめ、
「……令嬢、……リ令嬢、サリーリ令嬢」
「は、はい」
「どうかされましたか?」
「いえ」
突然声をかけられ、
「ダンスを踊って頂けますか?」
「すみません。ダンスは誰とも踊らない事にしてますの。お声掛け頂きありがとうございます」
令息からダンスに誘われる事はあるけど、1人踊ればその人が婚約者かと噂されても困るし、何人かと踊る程ダンスは得意じゃない。それなら誰の誘いも受けないのが一番良い。
断られると分かってるのに声をかけるのには理由がある。 ある者達は賭けをしているから。 ある者は噂を本当にする為。 ある者は親に言われて。 皆フランベル伯爵家の婿になりたいだけ。純粋に私を慕う者なんて居ない。私だってどうせ誰かと婚約するのなら純粋に私を慕ってくれる人が良い。慕う気持ちにいつか絆されるかも知れないのに。
私はまたぼんやりと外の花壇の花を眺める。
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