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番外編 ①
ルトと初めて喧嘩した。
「行ってらっしゃいませ、ジークルト様」
「あ、ああ、行ってくる…、……あ、いや……」
ルトは週に一回、王宮の騎士団の騎士達に稽古を付け、指導をしている。
王女様を隣国へ送り届け、ルトは近衛隊の騎士を辞め、お父様の元で今は勉強中だ。
王宮の騎士団の騎士達に週一回、稽古を付け指導する様になったのは、王太子様からの頼まれ事だから断る事も出来なかった。
初めは私も仕方がないと思っていたけど、お父様から貰った休みの度に騎士団へ行かれては私と出掛ける事も出来ない。ゆっくり二人で過ごす事も出来ない。
そう、私は寂しい。結婚してもうすぐ1年、新婚といってもまだおかしく無いはずなのに、二人の時間が余りにも少ない。
そんな時、先週、騎士団の稽古から帰って来たルトはプレゼントを持って帰って来た。今迄どの令嬢からも受け取らなかった差し入れというプレゼントを受け取って帰って来た。可愛いリボンに包まれたお菓子を私達の愛の巣に持ち帰ってきた。
私は笑顔で「美味しそう」とは言った。だけど誰が他の女性から貰った物を喜ぶと思うのか、「受け取らないでよ」と心の中で怒った。 その晩から月のものが来て、寝室を別にした。別で良かった、だってもし同じベッドで寝たら嫌な態度を取ったと思うから…。
コンコン
「お嬢様」
「レイ?入って」
「お身体は大丈夫ですか?」
「もう大丈夫よ」
「ジークルト様も心配していましたよ」
「そう」
「お嬢様、どうかなさいましたか?」
「ただのヤキモチよ。ルトはきっと悪くないのよ。令嬢に貰ったお菓子を持って帰ってきてもヤキモチを焼く私の心が狭いだけなのよ」
「あ~、あのお菓子ですね。 お嬢様、ジークルト様に仕返しをしましょう」
「仕返し?」
「はい」
レイは私を可愛く仕上げてくれて、一緒に騎士団の練習場へやって来た。
「ここも久しぶりね」
「はい」
令嬢の黄色い声援がルトを呼んでいる。結婚してもまだ令嬢から人気があるみたい。
「レイ、もう帰るわ」
「今来たばかりですよ?」
「レイは私にヤキモチを焼かせたいの?」
「お嬢様…」
私は馬車に向かって歩き出した。
「リー、待ってくれ」
「………」
「リー、リー」
「………」
「さ、サリーリ」
「………」
「さ、サリーリ嬢…、待ってくれないか」
私は振り返り、笑顔で、
「何でしょう、ジークルト様」
「つっ、」
「ご用が無い様でしたら、ご機嫌よう」
私は馬車に向かって歩き出した。後ろでは「どけ!」と怒気を含んだルトの声がする。
突然後ろから抱きしめられ、
「リー、すまない」
「何が」
「俺にはリーしか居ない」
「だから?」
「愛してる」
「………」
「リー愛してる」
「………」
私を抱きしめる腕に力が入った。
「お願いだ、リー、俺を捨てないでくれ」
「………」
「あの…ジークルト様、お話中みたいですが、少しよろしいでしょうか」
令嬢が声をかけてきた。
「リー、愛してる」
「あの、ジークルト様!」
「煩い、黙れ!」
私は令嬢に感心していた。この状況で良く声をかけてきたと。
「ジークルト様、ご令嬢が呼んでおりますわよ。お話があるのではなくて?」
「リー以外の令嬢なんかと話す事などない」
「お知り合いなのでは?」
「知り合いじゃない。俺にはリーしか見えない、リーしか興味ない」
「そこの貴女、彼に何かご用がおありなのでしょ?」
「あ、はい。先週お渡ししたお菓子の新作を今日はお持ちしましたの」
私を抱きしめるルトの身体がビクっ揺れた。
「まあ、あの美味しそうなお菓子のですの?」
「はい。ぜひともジークルト様に召し上がって頂きたくてお持ちしましたの」
「まあ、それなら受け取って差し上げなくてはいけませんわ、ジークルト様」
「そうですわ。朝一番でしか手に入らない幻のお菓子ですのよ」
「まあ、とても貴重なお菓子ですのね」
「そうですわ。週に一度数個しかお作りになられない幻のお菓子ですのよ」
「まあ、それは受け取って差し上げなくては、ねえ?ジークルト様」
「つっ」
私は私を抱きしめるルトの腕を剥がした。
「リー!」
「お止め下さい、ジークルト様」
「レイ、離せ」
レイはルトの腕を掴んで離さない。
「離すんだ」
「嫌です」
私はレイをその場に置いて馬車まで歩き出した。
「リー! レイ、離せ、お願いだ」
「お嬢様を護るのが私の使命です」
「リー! リー!」
私はルトを無視し、馬車に乗り込んだ。 ルトを引き止めてるレイの為に騎士一人と馬を一頭残し、私は邸に戻った。
「行ってらっしゃいませ、ジークルト様」
「あ、ああ、行ってくる…、……あ、いや……」
ルトは週に一回、王宮の騎士団の騎士達に稽古を付け、指導をしている。
王女様を隣国へ送り届け、ルトは近衛隊の騎士を辞め、お父様の元で今は勉強中だ。
王宮の騎士団の騎士達に週一回、稽古を付け指導する様になったのは、王太子様からの頼まれ事だから断る事も出来なかった。
初めは私も仕方がないと思っていたけど、お父様から貰った休みの度に騎士団へ行かれては私と出掛ける事も出来ない。ゆっくり二人で過ごす事も出来ない。
そう、私は寂しい。結婚してもうすぐ1年、新婚といってもまだおかしく無いはずなのに、二人の時間が余りにも少ない。
そんな時、先週、騎士団の稽古から帰って来たルトはプレゼントを持って帰って来た。今迄どの令嬢からも受け取らなかった差し入れというプレゼントを受け取って帰って来た。可愛いリボンに包まれたお菓子を私達の愛の巣に持ち帰ってきた。
私は笑顔で「美味しそう」とは言った。だけど誰が他の女性から貰った物を喜ぶと思うのか、「受け取らないでよ」と心の中で怒った。 その晩から月のものが来て、寝室を別にした。別で良かった、だってもし同じベッドで寝たら嫌な態度を取ったと思うから…。
コンコン
「お嬢様」
「レイ?入って」
「お身体は大丈夫ですか?」
「もう大丈夫よ」
「ジークルト様も心配していましたよ」
「そう」
「お嬢様、どうかなさいましたか?」
「ただのヤキモチよ。ルトはきっと悪くないのよ。令嬢に貰ったお菓子を持って帰ってきてもヤキモチを焼く私の心が狭いだけなのよ」
「あ~、あのお菓子ですね。 お嬢様、ジークルト様に仕返しをしましょう」
「仕返し?」
「はい」
レイは私を可愛く仕上げてくれて、一緒に騎士団の練習場へやって来た。
「ここも久しぶりね」
「はい」
令嬢の黄色い声援がルトを呼んでいる。結婚してもまだ令嬢から人気があるみたい。
「レイ、もう帰るわ」
「今来たばかりですよ?」
「レイは私にヤキモチを焼かせたいの?」
「お嬢様…」
私は馬車に向かって歩き出した。
「リー、待ってくれ」
「………」
「リー、リー」
「………」
「さ、サリーリ」
「………」
「さ、サリーリ嬢…、待ってくれないか」
私は振り返り、笑顔で、
「何でしょう、ジークルト様」
「つっ、」
「ご用が無い様でしたら、ご機嫌よう」
私は馬車に向かって歩き出した。後ろでは「どけ!」と怒気を含んだルトの声がする。
突然後ろから抱きしめられ、
「リー、すまない」
「何が」
「俺にはリーしか居ない」
「だから?」
「愛してる」
「………」
「リー愛してる」
「………」
私を抱きしめる腕に力が入った。
「お願いだ、リー、俺を捨てないでくれ」
「………」
「あの…ジークルト様、お話中みたいですが、少しよろしいでしょうか」
令嬢が声をかけてきた。
「リー、愛してる」
「あの、ジークルト様!」
「煩い、黙れ!」
私は令嬢に感心していた。この状況で良く声をかけてきたと。
「ジークルト様、ご令嬢が呼んでおりますわよ。お話があるのではなくて?」
「リー以外の令嬢なんかと話す事などない」
「お知り合いなのでは?」
「知り合いじゃない。俺にはリーしか見えない、リーしか興味ない」
「そこの貴女、彼に何かご用がおありなのでしょ?」
「あ、はい。先週お渡ししたお菓子の新作を今日はお持ちしましたの」
私を抱きしめるルトの身体がビクっ揺れた。
「まあ、あの美味しそうなお菓子のですの?」
「はい。ぜひともジークルト様に召し上がって頂きたくてお持ちしましたの」
「まあ、それなら受け取って差し上げなくてはいけませんわ、ジークルト様」
「そうですわ。朝一番でしか手に入らない幻のお菓子ですのよ」
「まあ、とても貴重なお菓子ですのね」
「そうですわ。週に一度数個しかお作りになられない幻のお菓子ですのよ」
「まあ、それは受け取って差し上げなくては、ねえ?ジークルト様」
「つっ」
私は私を抱きしめるルトの腕を剥がした。
「リー!」
「お止め下さい、ジークルト様」
「レイ、離せ」
レイはルトの腕を掴んで離さない。
「離すんだ」
「嫌です」
私はレイをその場に置いて馬車まで歩き出した。
「リー! レイ、離せ、お願いだ」
「お嬢様を護るのが私の使命です」
「リー! リー!」
私はルトを無視し、馬車に乗り込んだ。 ルトを引き止めてるレイの為に騎士一人と馬を一頭残し、私は邸に戻った。
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