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私は視線に気づいた。
私を見つめる視線の先…
貴方と目が合う。
貴方を見つめるつもりはないの。
それなのに、
貴方に向かう一本の道が見える。
周りの人は靄がかかったように霞んで見える。
貴方と私の間には人がいるはずなのに、
まるで貴方と私、
二人だけしかいないみたいに。
私は貴方を見る。
貴方も私を見ている。
どうして?
どうしてそんな顔をするの?
目は口ほどにものを言う。
睨むその目に、
何かを感じる。
睨むなら、
憎しみがあるはずよ?
なのに貴方は私を睨みながら、
貴方の瞳の奥深くには、
愛しい
と貴方の瞳は言ってるわ。
そんなはずはないわ。
貴方の目は私を睨んでる。
私は顔を俯向けた。
目線が合わないように、
貴方を見つめてしまう自分を隠す為に…。
「アメリア?」
「デイジー」
「どうしたの?」
「別に」
「泣きそう?辛そう?ねぇアメリア、どうしたの?」
「別に普通よ?」
「そう?」
「ええ」
「なら良いんだけど」
「それより何を買ってきたの?」
「プリンよ!食堂イチオシって書いてあったの!」
「美味しかったら私も食べようかな?」
「イチオシだもの。美味しいわよ」
「そうよね。私も買って来よ」
私はプリンを買いに席を立った。
貴方の視線から逃れる為に…。
食事を終え、デザートを買う人の列に並んだ。
「何を買うんだ」
突然話しかけられ、
「え?」
「何を買うんだ」
「あ、はい。プリンを。友達がイチオシって書いてあったから美味しいはずだって言っていたので」
「イチオシでは無いぞ」
「え?」
「売れないからイチオシって書いてあるだけだ」
「そうなのですか?」
「ああ。そこまで美味しくない」
「ふふっ」
「なんだ」
「不味かったって顔が言ってますよ?」
「不味いとは言ってない。ただ美味しいプリンなら他にある」
「そうなのですか?」
「ああ。で、それでも買うのか?」
「はい。一度食べてみたいです」
「そうか」
私はプリンを注文し、お金を払おうと、
チャリン
プリン代がカルトンに置かれた。
「あの…」
「なんだ」
「自分で出しますので…」
「美味しくないと言った詫びだ」
「ですが…」
貴方はそのまま去って行った。
私はプリンを受け取り席に戻る。
「アメリア、さっきランフェル様と話してなかった?」
「プリンの事をね。それでプリン代を置いていったんだけど…」
「そんなの気にしないの。奢って貰った、良かった、でいいのよ」
「そうかな?」
「そうよ。さあ食べましょ」
「そうね」
私達はプリンを食べ、
「イチオシって書いてあったけど、何ていうか、」
「普通?」
「アメリアもやっぱりそう思うわよね?」
「ええ」
「ふふっ」
「ふふっ」
私達は美味しいとは言えないプリンを食べ食堂を後にした。
もう貴方は居なかった。
お礼を言いたかったのに…。
「ねぇアメリア、また食堂に来ない?」
「良いけど…」
「だってまだ食べたい物がたくさんあるんだもの」
「そうね。たまには食堂も良いわね」
「でしょ!」
私達は教室へ向かった。
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