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私は光が示す方へ歩いて行った。ここがどこだか分からない。それでも光に導かれ勝手に体が動く。
「お兄様」
その声に足を止める。
「今からジンガリオ王国の国王家族と昼餐会だろ?」
「うん」
「楽しんでこいよ」
「うん」
青年が少女の頭を撫でている。少女は少し甘えたような顔で「大好きなお兄様」に笑顔を見せた。
仲の良い兄妹、お兄様と呼ばれる青年は少女が可愛いくて仕方がないみたい。
ふふっ、お兄様と一緒ね。目が、見つめる目が優しいの。私を見つめるお兄様と一緒。少女の方も「大好き」って瞳が言ってるわ。でもその瞳は「愛する人」と言うよりは「親愛」の方ね。
「エティー」
「兄上様」
「ここに居たのか、探したぞ」
「ごめんなさい」
「昼餐会に遅れるぞ」
「それはいけないわ。兄上様早く行きましょ」
「俺はエティーを探していたんだがな」
少女は兄上様と呼ぶ青年の手を繋ぎ歩いて行った。
「ルーベン殿下こちらでしたか。マーメイル国との昼餐会の時間です」
「すまない」
3人の光景を隠れて見ていた青年。
どうして睨んでるの?それに貴方の視線は少女しか映っていないのね。瞳の奥は正直だわ「可愛い」一目惚れをしたように熱い視線を向けてる。睨んでいたら貴方の気持ちは気付いて貰えないわよ?
ふふっ、まるでラフェ様とそっくりね。
昼餐会、少女を見た青年が悲しそうな顔をしていた。その顔がなぜだか私の心を苦しめる。
どうして?
どこかで見た気がするの。
どこで?
思い出せない…
それでも、
ううっ!
突然頭が割れそうに痛くなり私は蹲った。
「兄上様!どうしたのです」
少女の声で顔をあげる。
「エティー」
「帰りはまだ先では」
「ああ、ちょっとな」
兄上様と呼ばれる青年は隣に女性を連れていた。その顔は必死迫る顔つきだった。
「父上は」
「部屋に」
「そうか」
「兄上様!」
青年は女性と急ぎ足で歩いて行った。
私は二人の姿を見つめた。
「兄上様!止めて!嫌ーーーーー!」
少女の悲痛な叫びに少女の方を見る。
処刑………
兄上様が今まさに首を落とされる瞬間…
私は目を固く閉じた。
「キャー!」
少女の叫び声に目を開ける。
お兄様と呼ばれていた青年が一人の青年と剣を交えている。二人の顔から稽古ではないのが分かる。相対する二人の顔は互いを睨み付け、まるで「敵」を見ている目。
それに、血の臭いが辺りを充満していたから…。
「エティー!」
少女は他の騎士に追い詰められていた。
お兄様と呼ばれた青年は少女の元へ駆け寄り、少女を追い詰めていた騎士に剣を下ろした。騎士は倒れ、お兄様は少女を背に隠した。
少女を背に隠しながらまた青年と剣を交える。
一瞬、本当にほんの一瞬、お兄様は少女に視線を動かした。
その一瞬、
相対する青年の剣がお兄様の体を刺した。
お兄様は背に隠した少女を庇いながら何度も青年の剣を弾く。それでもさっき刺された傷のせいで全ての剣を弾く事は出来ず、斬られ、
「エティー、エティーは必ず俺が護る」
「お兄様止めて!もう止めて!」
「エティーは俺の大事な妹だ。妹を護るのが兄の役目だ」
お兄様は深い傷を負いながら青年の剣を弾く。
「エティー、俺はずっとお前の側にいる。お前を護る。お前はずっと笑っていろ」
「お兄様ーーー!」
お兄様は青年に向けて剣を振り下ろす
私の目の前を通る矢…
「駄目ーーー!」
私は思わず叫んだ。
矢は剣を振り下ろそうとしているお兄様の背に刺さった。
青年の前に崩れ落ちるお兄様…
お兄様に近寄る少女…
二人を見つめる青年…
「お兄様、お兄様、しっかりして!お兄様!」
「エ、エ…ティー……」
「お兄様!しっかりして!」
「お…ま…え……は………わ…ら……って…い………ろ…………………………」
「お兄様!お兄様!ねぇ!お兄様!お兄様!嫌ーーーーー!」
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