47 / 63
46
しおりを挟むあの女を囲い一年が過ぎた頃、
「殿下、いつまでそうするおつもりですか」
「テシー」
「殿下が婚約者様を愛してらしたのは知っています。それでももう一年です」
「まだ一年だ」
「ならあと何年エティーシア様を乱暴にしたら気が済むのです」
「あれは俺のだ」
「その気持ちは何ですか」
「気持ちだと」
「はい。殿下の気持ちは、婚約者様を奪われた腹いせですか?」
「当たり前だ」
「なら、一年で十分ですね」
「なに、」
「そうでしょう。隣国の王太子と婚約者様の恋は貴方様が王太子の首を落とした時に終わりました。お二人が恋仲になったのはせいぜい半年。なら腹いせでエティーシア様に乱暴が許されるのも長くて一年です。それに貴方様はご両親も国も民も彼女から奪いました。それなのにまだ復讐をなさるおつもりですか」
「当たり前だ」
「彼女にまだ復讐をしたいと言うのなら、陛下がおっしゃるように騎士達の慰み者になされば済む事です」
「あれは俺のだ。誰にも触れさせない」
「だからその思いは?」
「あれは、俺のだ、他の者には、渡さない、あれは、俺のだ」
「なら、言い方を変えます。エティーシア様にごめんなさい、ごめんなさいと謝り続けてほしいのですか?」
「違う!俺はただ、俺は、ただ、」
「ただ、なんです」
「ただ、俺にも、笑って、ほしい、だけだ…」
「今の貴方様のやり方で彼女の笑った顔が見れると思いますか?」
「それは、」
「良いですか!先ずは貴方様の気持ちを心にある本当の気持ちを見つめて下さい。全てはそこからです。分かりましたね!」
「ああ」
テシーに言われ私は己の心にある気持ちを考えた。
愛する婚約者を奪われ子まで作った憎き王太子。
だが、
王太子の首は落とした。
戦になり国を奪った。
王太子の責任、戦の責任として国王、王妃には毒杯を飲ませた。
お兄様と呼ばれる護衛騎士も死んだ。
王女のあの女をどうして殺さなかった?
王族としてどうして毒杯を飲ませなかった?
父上にも殺せと言われた。
それでも、
それでも、
あの女だけは、
エティーシアだけは、
殺せなかった…。
何故だ!
憎き王太子の妹だろ?
だが、
だが、
何年も前に一度だけ見た笑顔、
私にもその笑顔を向けてほしい
私もその笑顔が見たい
心の奥底にある気持ち、
怯えた目が見たい訳ではない
私もお前の笑顔が見たい
私にも笑ってほしい
一度でいい
私にも笑いかけてくれ
エティーシアを殺せなかったのは、
あの笑顔を見たかったからだ。
ようやく
ようやく
私だけの
私だけのものになった
ようやく
手に入れた
私だけの………
「テシー、すまないが、これを」
「はい。お部屋に飾りますね。殺風景の部屋が明るくなります」
「そう、思うか?」
「ええ。花があるだけで部屋の雰囲気は変わります」
「そうか」
「ようやく心が決まったようですね」
「ああ、すまなかった」
それから毎日部屋に飾る花を贈った。
15
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
『外見しか見なかったあなたへ。私はもう、選ぶ側です』
鷹 綾
恋愛
「お前のようなガキは嫌いだ」
幼く見える容姿を理由に、婚約者ライオネルから一方的に婚約を破棄された
公爵令嬢シルフィーネ・エルフィンベルク。
その夜、嫉妬に狂った伯爵令嬢に突き落とされ、
彼女は一年もの間、意識不明の重体に陥る――。
目を覚ました彼女は、大人びた美貌を手に入れていた。
だが、中身は何ひとつ変わっていない。
にもかかわらず、
かつて彼女を「幼すぎる」と切り捨てた元婚約者は態度を一変させ、
「やり直したい」とすり寄ってくる。
「見かけが変わっても、中身は同じです。
それでもあなたは、私の外見しか見ていなかったのですね?」
静かにそう告げ、シルフィーネは過去を見限る。
やがて彼女に興味を示したのは、
隣国ノルディアの王太子エドワルド。
彼が見ていたのは、美貌ではなく――
対話し、考え、異論を述べる彼女の“在り方”だった。
これは、
外見で価値を決められた令嬢が、
「選ばれる人生」をやめ、
自分の意思で未来を選び直す物語。
静かなざまぁと、
対等な関係から始まる大人の恋。
そして――
自分の人生を、自分の言葉で生きるための物語。
---
王子、おひとり様で残りの人生をお楽しみください!
ちゃっぴー
恋愛
「ラーニャ、貴様との婚約を破棄する!」
卒業パーティーの真っ最中、ナルシストな第一王子ウィルフレッドに身に覚えのない罪で断罪された公爵令嬢ラーニャ。しかし、彼女はショックを受けるどころか、優雅に微笑んで拍手を送った。
なぜなら、ラーニャはとっくに王子の無能さに愛想を尽かし、この日のために完璧な「撤退準備」を進めていたからだ。
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
結婚十年目の夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。彼は「送り間違えた」というけれど、それはそれで問題なのでは?
ぽんた
恋愛
レミ・マカリスター侯爵夫人は、夫と政略結婚をして十年目。侯爵夫人として、義父母の介護や領地経営その他もろもろを完ぺきにこなしている。そんなある日、王都に住む夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。義弟を通じ、夫を追求するも夫は「送り間違えた。ほんとうは金を送れというメモを送りたかった」という。レミは、心から思った。「それはそれで問題なのでは?」、と。そして、彼女の夫にたいするざまぁがはじまる。
※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる