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お兄様とエティーシアの歯車が狂い始めたのは今から8年前…
マーメイル国へ昼餐会へ行った日…
あの日、お父様は私に言ったわ、
「キャル、お前に姉上が出来るぞ!」
お父様はお兄様とエティーシアを婚約させようとしていた。
マーメイル国の銀細工の腕をこの国にも欲しかったお父様は、まだ婚約者がいないお兄様の婚約者にとマーメイル国の国王に、エティーシア王女に打診する為に昼餐会に家族で来た。
昼餐会が始まる前、お兄様が何処かから帰って来た時、今迄見た事のない顔をしていたわ。表情があまり豊かでないお兄様の顔が少し笑っていた。
昼餐会が始まり直ぐにそれが分かった。
お兄様の見つめる目線の先にいるのはエティーシア王女だった。
エティーシア王女を見つめるお兄様の目は愛しい人を見つめる目をしていた。
それが、
エティーシア王女が笑うたびお兄様の顔がどんどん険しくなった。エティーシア王女を睨むお兄様の顔は今でも忘れられない。あのお兄様が辛く悲しそうな顔をしていた。
お兄様が好意を示せば、本当ならエティーシア王女と婚約し婚姻出来ていたのに…。
憎むべき相手として出会うのではなく、愛し合える相手として出会えていたのに…。
お兄様にも婚約者が出来た。お兄様は婚約者を愛していたと思う。それでもエティーシア王女を見つめていたあの瞳、瞳の奥はお兄様よりも正直だった。
お兄様、お兄様が婚約者を見つめる瞳は「愛する人」ではないわ。それはね「親愛」よ?
確かにお兄様が婚約者に向ける瞳には愛しさがあったわ。それでも私はお兄様が本当に愛しい人を見つめる瞳を知ってるの。
どこか嫉妬じみた、それでいて愛しいと、独占欲丸出しで「私のだ」と見つめていたじゃない。彼女の仕草一つで表情を変え、目が合うと反らす。そしてまた見つめるの。愛しいと、お兄様の瞳は「愛する人」を見つめる目だったわ。
婚約者もそれを分かっていたのじゃないの?私を見つめる目と自分を見つめる目が同じという事を…。
婚約者を奪われたお兄様は戦をし、エティーシア王女を連れて帰って来た。そして自分の部屋に閉じ込めた。誰の目にも触れさせないように、自分の隠し部屋に閉じ込めた。
「テシー」
「分かりました」
テシーは元々私のメイド。
私はテシーをお兄様にと言うよりもエティーシア様の為にお兄様の部屋に行ってもらった。
お兄様は不器用だから私とテシーで協力してお兄様の初恋を、お兄様の思いを、
何とかしようとした。
でも、
テシーが亡くなり
エティーシアが亡くなり
お兄様も亡くなった
お父様はお兄様の事を「女の後を追って死んだ恥さらし」と言う。
でもね、違うのよお父様、お兄様は女を追って死んだんじゃないわ。お兄様はエティーシアとただ離れたくなかっただけなの。エティーシアのいないこの世界に興味もないの。生きてる価値も見い出せないの。
お父様はお兄様を王族から抹消した。
私はお兄様とエティーシアを包んだ。そして二人の亡骸をお兄様のお気に入りの場所に埋葬した。
小高い丘、そこからお兄様はマーメイル国の方をいつも見つめていた。
この国の言い伝えで、同じ場所に亡骸を埋葬すると来世で出会えると言われている。
お兄様、エティーシア、
来世では必ず
必ず
愛しあって
私は祈りを捧げた。
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