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しおりを挟む私は一人、婚約者との待ち合わせの喫茶店で待っている。
もうケーキは2個頼んだ。紅茶ももう5杯目…。流石にお腹がいっぱいだ。
窓の外を見ても来る気配はない。
カランカラン
出入り口の開く音に目を向けても現れてほしい人は来ない。
もう帰ろうかと思っていた時、
カランカラン
待ちあわせの婚約者が入って来た。
「エリザ、すまない」
「ううん、大丈夫よ」
「すまない、もう帰ってくれるか」
「分かったわ、また今度出掛けよ?ね?」
「ああ」
慌てて出ていく婚約者を私は見送った。
私、伯爵家の長女でエリザ。
婚約者の彼、伯爵家の次男でレオ。
私達は婚約した。レオにはお兄様がいた。レオが婚約者になれたのも次男だったから。いずれ私の家に婿養子に入りお父様から爵位を継ぐ為に同じ伯爵家のレオに白羽の矢が立った。
私も席を立ち喫茶店を後にした。
今日みたいな事は今に始まった事じゃない。もう何度も待ち合わせに遅れて来て、帰るように言われ、直ぐに帰って行く。
また今度
そのまた今度もどうせ私は待ちぼうけ…。
私は初恋だけどレオの初恋は私じゃない。この婚約だってお父様が無理矢理話しを通したんだもの…。私が悲しむのは違うわよね。
学園を入学してから婚約して、卒業しこれから結婚へ向けて準備を進めようと…していた時だった。
私もレオも18歳、レオは男性だからまだ良いけど、私はもう最後の選択に来ている。
このまま婚約を続けるか、
婚約を白紙に戻し違う人を見つけるか、
護衛は少し後ろを歩いて付いてきてくれている。
懐かしい公園、ここで私はレオに恋をした。
本当にありがちな話、
8歳の時、この公園の近くの伯爵家のお友達の家でお茶会をしていた時、子供達だけで邸を抜け出しこの公園へ来たの。風に吹かれて私の帽子が飛んで落ちた所に寝ていたのがレオだった。
私は寝ている男の子を起こさないようにそっと帽子を取った。その時、目を開いた男の子と目が合い、目が離せなかった。
キラキラと太陽のひかりに反射したブルーの瞳、宝石のようなその瞳を近くで見たくて近づいた時に顔が近づきすぎて私の頬に男の子の唇が当たった。恥ずかしくて私は咄嗟に逃げちゃったけど、それからもあの男の子を思うと胸が高鳴ったわ。
学園に入学した時、同じクラスにいたレオを見た時、あの男の子だって直ぐに分かった。それから少しした時、お父様に婚約者と紹介されたのがレオだった。私は飛び跳ねて喜んだわ。
だけど、
婚約者として隣に居たら直ぐに分かった。レオには好きな人がいるって。
それでも私は気付かないふりをした。
婚約者になりレオの優しさ、口数は少ないけど、その少ない口数の中に愛しさを感じたから。
私に風が当たらないように自分が壁になったり、私のつまらない話しを聞いてくれたり、苦手なトマトを知らない間に食べてくれてたり、私が作った固いクッキーを食べてくれたり、上手くもない刺繍入りのハンカチをずっと使ってくれてたり、馬車が横を通るとそっと立ち位置を反対にしたり、雨が急に降り出した時はレオのジャケットを頭に被せてくれたわ。
レオの優しさに私はまた恋をしたの。
気にするな、美味しい、嬉しい、
口数は少ないけどそこにレオの気持ちがこもってた。
レオは口数こそ少ないけど一緒にいる時は私の頭を撫でるの。その優しい手の温もり、私を見つめる優しい瞳、
「好きだ」
って言われた時は本当に嬉しかった。
好きだって言われたのも、クッキーを食べたのも、手を初めて繋いだのも、学生の頃のデートはいつもこの公園だった。
この公園にも最近は来ていない。
私は頬を伝う涙を拭い、懐かしい公園を通り過ぎた。
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