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「どうしてだ、どうして何も聞かない、何も言わない」
ヒュース様は辛そうな顔をしながら私に話しかける。
「どうして?それは貴方になら殺されても仕方がないと思っているからです。
私も半信半疑でした。でも今こうして貴方に剣を向けられ、改めて確信しました」
「何を確信したんだ」
「神のギフト、神の使い、妖精、その言葉を使う少女を思い出しました。子供の頃に初めて出来た友達だと、私は喜び絶望しました。自分を憎みお父様を憎みお金を憎んだ。
それでも私はお父様の唯一の娘でありこの子爵家の跡取りです。だから平気なふりをしてきました。
お父様が買った少女の命を引き換えに私は子爵家を守る為だけに生かされ、何人もの命の代償に得た人生をその子達の分まで生きないといけなかった…。
そして貴方はアニーのお兄様、そうですね」
「ああ、そうだ。アニーは俺の妹だ。ただお前と年が一緒、髪の色が一緒、それだけでお前の父親に命を買われ両親は娘を売った。
でもどうして俺がアニーの兄だと分かった」
「アニーはいつも私に話してくれました。お兄様の貴方の話をそれも嬉しそうに幸せそうに…。
『お兄ちゃんは神のギフトを持って産まれた神の使いなの。お兄ちゃんは空の妖精なのよ。空って毎日違う色でしょ?青色なのは変わらなくても少しずつ違うと思うの。お兄ちゃんの目も青色なんだけど毎日違う色になるのよ。それも右目だけ。左目は毎日同じ青色なのに、右目は変わってるけどとても綺麗なの。とても綺麗な目をしているの。エリーゼにも見せたいな』
貴方の右目はアニーが言っていたように陽の加減で色が変わります。神のギフト、その言葉がよく似合います。まるで宝石のように綺麗…。
私とアニーは友達のように毎日過ごしました。お父様が寂しい私の相手に選んで連れて来てくれた、子供の私は本当にそう思っていました。ようやく出来た私の友達だと。
あの日私はどうしても街へ行きたかった。アニーの誕生日に贈るブローチを取りに行きたかった。あのブローチは私がコツコツと貯めたお金で買った物でアニーの大好きな色、青色の石をはめ込んでもらいようやく出来上がったと、アニーの誕生日に間に合って良かったと私は喜びました。
だから私が受け取りに行き渡したかった。でもお父様はそれを許さなかった。アニーは私の代わりに受け取りに行き……、私の身代わりになり、死にました……」
「ああ、お前の身代わりになる為に買われ身代わりとして死んだ」
「アニーだけじゃない、私の身代わりになって死んだ子達がいます。だから私はその日から外には出掛けないと決めました。
もう私の身代わりになって殺される子達を増やさない為に…」
そう、私は幼い頃から何度も襲われた。お父様と一緒なら、お母様と一緒なら、そう思っても子供の私を連れ去るのは簡単だった。それに幼い頃は貴族令嬢として同じ年頃の令嬢達の家に遊びに行っていた。歩いても行ける家でも馬車に乗り騎士達が護衛した。そんな数分の距離でも馬車が狙われ何人の騎士が死に何度危険な目にあったか分からない。
だからお父様は私の身代わりを用意した。子爵家の馬車に乗るのはその子達で、私は遊びに行った家の馬車で帰ったり騎士の馬に乗せられマントで隠され家まで帰って来た事もあった。
何度もお父様に行きたくないと訴えたか分からない。それでも貴族令嬢としての義務、そう言われれば従うしかない。
お誘いのカードが届けば招待を受ける。子爵家と繋がりたいと思う家は多い。何十通も届く中、お父様が選んだ家に私は向かう。
勿論何も起こらない日もある。そんな日は私も嬉しかった。
私が攫われればお父様はお金を支払った。
目隠しをされ何人もの男性の声が私の周りから聞こえた。一夜明けると私は邸の前に置かれる。
私を攫った男性達は今度は自分の娘をお父様に売った。『お嬢さんの身代わりになる代わりに高く買ってくれ』と。
一人娘の為なら子爵はお金を出す
その噂が広がりまた私は襲われる。そして子の命を売る親が増えた。
その中でもアニーだけは違った。私の遊び相手になり話し相手になった。だから私は友達が出来たと喜んだ。
でも、あの日、いつも邸に来る宝石商を待てず出来上がったブローチをお店まで取りに行くと言わなければ、アニーは死ななくて良かった…。
アニーを見殺しにしたのは私…
大事な友達を、殺したのは、私…
だからアニーのお兄様である貴方には私を殺す権利がある。
だから苦しまないで…
貴方は妹の仇をとればいいの…
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